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悪戯に微笑む彼女

【悪戯に微笑む彼女】


「ミラさん!!」

「何よ」

「肩を出し過ぎです!風邪を引いたらどうするんですか?!」

海岸近くのハイウェイ、赤いスポーツカーを止めて二人は海を眺めていた。恋人同士になってからルークは趣味であるドライブに彼女と良く行くようになった。

ミラは黒いドレスにピンヒールと言う出で立ちで薄着だった。ルークは来ていたスーツのジャケットを彼女の肩にかけてやる。

「全く嫌ね、戦争なんて無くなればいいのに」

「…そうですね、争いのない世界が一番です。今日の会議のプレゼンテーションでそれはしっかり伝えたつもりです。後は各国のトップがどうするか…」

「君の発言、中々良かったよ」

「それは嬉しい言葉ですけど…」

二人は軍事会議にレインボー部隊を代表して出席した帰りだった。争いのない世界を求めて日々過ごし来た二人にとっては躍進の一日だった。

海岸近く、夕焼けが沈み静かな潮風が二人の頬を優しく掠める。ミラの肩をルークは抱き寄せながら呟いた。

「あなたが側に居てくれたから今日は言いたい事をしっかりと言えたんです。ミラさん、俺にとってあなたは大切な人だし失いたくない人なんです。少しでもあなたの近くに居たい、少しでも…って何で笑うんですか?!」

ミラはルークの顔を見つめながらニコニコと笑いながら呟いた。

「ルーク、私も君を失いたくはないしずっと側に居たい。こんなにも世界は広くて、こんなにも海は穏やかなんだ。あぁ、そうだな…。まるで君みたいだ」

空いている手でミラはルークの手を取りしっかりと重ねて握りしめた。ルークはミラのそれに答えるように大きな手を重ね合わせた。

「…俺からしたらあなたの方が懐が広くて優しくて綺麗だと思います、ミラさん、これからも俺の隣で穏やかに微笑んでくれますか?」

ルークの青く輝く双璧は暗い中でも分かるくらいに綺麗に透き通る。ミラはゆっくりとルークの唇に自身の唇を近付けながら重ねて行く。

「…ミ、ラさん…」

愛しげに名を呼ぶ彼の声は波音と同化してゆっくりと消えて行く。ミラはルークの背中に腕を回してキスを口付けを堪能して行った。

 

 

 

「…これが私の答えよ、ジュリアン?」

唇が離れた頃、ミラはルークの真っ赤になった顔を見つめながら悪戯っぽく微笑んだ。

遠く手を伸ばした先に…

【遠く手を伸ばした先に…】


フューズは己の手を見つめながら黙り込んでしまう。自分の手は人を殺める為の道具を作る為にある手だと、上官から言われた事が傷となり、フューズの表情を翳らせる。

「フューズ…?」

無邪気な狙撃手がドラグノフを片手にフューズに声をかけてくる。フューズはそんな彼、グラズの顔を黙って見上げる。

「…グラズか?」

「あんたらしくない、暗い顔をして黙り込んでるから。機械の調子でも悪いのか?」

ドサッとグラズはフューズの隣に腰を下ろす。歳が割と近いフューズとグラズは兄弟のような関係だった。グラズの顔を見たフューズは小さく溜息をついて呟いた。

「俺の手は、誰かを殺める為の物だと言われた事を思い出していた。軍人になった頃、俺は誰かを殺めるのではなく、守る為にこの手を使いたかった。だけど俺は…」

「フューズ、確かにあんたの作る機械は誰かを殺める為の物だ。テロリストや国に仇なす者たちを殺める為のな。ただフューズ、あんた自身は違う…」

グラズはフューズの手袋に覆われた手を取りながらゆっくりと触れて呟いた。

「あんたは不器用で辛い事があっても黙ってるけど、あんたの手は俺が辛い時に頭を優しく撫でてくれる。そう、優しくて広くて大きい。俺はそんなあんたの手が何よりも好きだ」

真っ直ぐに向けられるその言葉にフューズは軍用ゴーグル越しに瞳を嬉しげに細めながらグラズの手を握り返した。

「…ありがとう」

「良いんだ、俺は本当の事を伝えたまでで…」

「グラズ」

「フューズ…?んっ…」

グラズの顔に手を伸ばしてフューズはそっと彼の唇に口付けた。ヘルメットも軍用ゴーグルも取り外された彼の素顔は端正で。寄り添う唇の温もりも、握られた手の体温も。

全てが手を伸ばした先にあったものだー・・・。

唇を離したフューズはグラズの頭をくしゃりと撫でて優しく微笑んだ。

「お前は可愛い」

「…だ、誰かに見られたら…」

「グラズ、誰かに見られた所でお前は俺の大切な奴だよ。この俺の手をしっかりと掴んでくれたお前を俺は…」

 

 

 

 

 

 

 


やがてフューズの口から洩れた言葉にグラズは透き通る瞳をゆっくりと細めて幸せそうに微笑んだのだった。

もしも貴方の隣に居られるなら

【もしも貴方の隣に居られるなら】


俺が貴方の隣に居た時間は一瞬に等しいくらい切なくて、儚くて、そして心地良かった。

「田波…さん…」

病室で息を引き取った貴方の顔は色が白くて綺麗で穏やかだった。手は冷たく、顔に刻まれた皺は俺よりも長く生き抜いた証であろう。

俺よりも十は歳上の田波さんは人生を全うしたのであろう。まるで悔いがないようにこの世を去る前の数秒間、俺を見つめて微笑んだ。

『またお前と出逢えると信じてるよ』

柔らかく微笑んだ貴方の笑顔は何よりも綺麗で、何よりも美しくて、何よりも儚かった。

『俺も同じ気持ちですよ、田波さん…』

握り締めた手が震えるのを俺は黙って見ることしか出来なかった。本当は居なくなって欲しくない、ずっとずっと側にいて欲しい。

俺の手を離す事なんて無ければいい、そんなことばかり思ってしまったのだ。

貴方はもう戻らない、逝ってしまった貴方はもう二度と俺の前で微笑んでくれることはない。

「田波…さん…」

貴方と寄り添って過ごした数十年間を忘れない為に冷えていく貴方の手を取り俺は小さく口付けた。死人に対して無礼な行為だと頭では充分分かっていた。

だけどこれが最期だから。

貴方に対して最期の俺の気持ちを伝えるにはこの方法しかなかったんだ。ねぇ、田波さん、俺ねー・・・。

「貴方に出会えて幸せだった、貴方に愛されて本当の幸せってのをようやく手に入れたんだ。もう一度貴方に逢えるなら心の底から笑ってこう言うよ…」

頬を一筋の涙が伝って落ちて行く。

 

 

「『愛してくれてありがとう』って、面と向かって貴方に伝えたいよ、なぁ、田波さん、目を開けてくれ、もう一度俺の名前を呼んで下さいっ…!大好きな貴方が居ない未来なんて考えたく無いのに…」

無駄な事だって分かってはいる、だけど俺は貴方が大好きで愛しくて何よりも大切な存在だった。だからこそ俺は貴方の隣に居られる事が出来るのならー・・・。

 

 

 

 

 

「俺もすぐにそちらに逝きますね、田波さん、貴方が居ない未来なんて考えたくはない。俺は貴方の隣だけが居場所何です…、愛してます、田波さん…」

安らかに眠る田波さんの手を離し、俺はピルケースを懐から取り出して口に錠剤を含む。

睡眠薬だ。

何錠も口に含めば安らかな睡魔が俺を迎えに来てくれる。そう、田波さんがいる『あっち側』へと連れて逝ってくれる。

「…もう少しで貴方に会えますよ、だからもう少しだけ待っていてください…」

この世に未練はない、俺は貴方に出会えて幸せでした。田波さん、貴方に愛して貰った時間は二度と忘れない。

だから貴方も俺を忘れないで…。

涙が乾く頃、俺の意識は真っ白な世界に覆われて行く。あぁ、もう少しだ。だから待っていて下さい。

愛した貴方の手を握りながら手離す意識の中、見えたのは愛した貴方の若き日の笑顔だけだった。

 

機械音痴なドク


ルークとドクのお話。


【機械音痴なドク】

 

「なぁルーク」

「どうしましたか?」

オフィスではアサルトスーツを脱ぎ、ワイシャツにスラックス姿のルークは休憩室で軍医・ドクに声をかけられた。

コーヒーブレイクに洒落込もうとした昼時に相棒である歳上のドクに声をかけられてしまえばルークが逆らえる訳もなく、煙草臭い喫煙ルームに足を運ぶ。

ドクは白衣にワイシャツ、そして首元を少しだけ緩めたネクタイ姿だった。煙草を吸いながらドクはルークに困った表情を向けながら呟いた。

「…君は若いから機械とか得意か?」

「…機械と言いますと…?」

「最近、スマートフォンに携帯を変えたんだがすっかり使い方が分からなくてね。モンターニュやトゥイッチに聞けばいいんだろうが、さすがに恥ずかしくてね。ルーク、確か君と同じ機種の筈なんだが…」

口から漏れ出る煙は換気扇に吸い込まれて消えて行く。ドクは煙草の吸殻を捨ててドサっと腰を下ろした。

ルークもつられるようにドクの隣に腰を下ろす。ドクの手には真新しいスマートフォン。ルークが使っているスマートフォンと同色、同一機種だ。

「あ、あの…。何で俺と同じ機種なんですか?!」

「んー?あぁ、分からなければ君に気軽に聞けるだろう?私が君と話したい口実にするには充分だ。それに職場だとあまり仲良く出来ないだろう?…私たちにプライベートは皆無だ。だからせめて、な?」

ブラウンの瞳は弧を描いてルークを見つめてくる。ドクの瞳に吸い込まれるようにルークは彼を真っ直ぐと見つめた。

「あなたって人は本当に可愛い人ですね、ドク。俺の休憩時間を割いてまでお話したかったんですよね。良いですよ、お望み通りあなたの為に時間を使いましょう。何が分からないんですか?」

ルークが尋ねると、ドクはスマートフォンをルークに手渡して恥ずかしそうに呟いた。

「写真の撮り方が…分からないんだ…」

「写真ですか?…初歩的な事が分からないなんて、あなたらしくない」

「し、仕方ないだろう?!私は機械が苦手なんだからな!それに写真撮れるようになったらルーク、君の寝顔や笑顔をこっそり撮れる。良いじゃないか…」

少しだけ拗ねた口調で話すドクをルークは愛しげに見つめて彼の手を握る。スマートフォンを一緒に手に取りながら画面の電源を付けた。

「…俺が待ち受けだ…」

「ま、前の携帯の写真だけは何とか自力で移したぞ!?…まぁ、トゥイッチに少しだけ助けてもらったけど…」

「しかもかなり前の、あなたの家に初めてお泊まりした時の奴じゃないですか?俺とあなたが『相棒』以上の関係になって初めて身体を重ねて時の…寝顔…」

「君が…私を激しく求めて来て、何度も行為に身を沈めた夜だったな。ルークの寝顔を初めて見た記念に撮った写真だ…。ってまだ勤務時間中なのに、私の馬鹿!」

「慌てふためかなくても、今は俺とあなたしか居ないですから。折角だ、一緒に写真を撮りましょう?写真の撮り方を教えて上げますから」

「あ、あぁ…って、ちょっ…!んっ…?!」

ルークはドクの肩を抱き寄せてスマートフォンのカメラアプリを起動してパシャりと撮影をする。一瞬の出来事だった。ドクの唇を奪うのも、二人きりの撮影も一瞬だった。

離された唇を指でなぞりながらドクはルークを少しだけ怪訝そうな表情で見つめて呟いた。

「もう、いきなり過ぎるっ…」

「そうですか?…ほら、良い写真が撮れましたよ」

ルークは手に持っていたドクのスマートフォンを彼に返して撮影したツーショットを見せながら囁いた。

ばっちりと唇を奪われたドクと、満足げにキスを堪能しているルークがそこには写っていた。

「待ち受けにして下さい」

「恥ずかしいから嫌だ…」

「…俺の貴重な昼休みを潰した罰です、というより俺たち恋人同士で同棲もしてるんだから良いんじゃないですか?」

「それもそうだが…しかしだな…!」

「何をそこまで嫌がるんですか?」

「…画面を見るたびに君を、大好きな君を思い出す。仕事に私情を挟むのは私の理に反するんだ!…もう、続きは家で教えてくれ」

顔を赤らめながら言葉を漏らすドクにルークはふっと笑みをこぼしながら彼の隣から立ち上がり、喫煙ルームのドアに手をかける。

「機械音痴なあなたも堪らなく可愛いですよ、俺にも後でその写真、メッセージで送って下さい。あと、煙草の本数は減らして下さいよ?」

「….メッセージの送り方が分かったら送るさ。煙草は善処しよう…」

「宜しくお願いしますね、俺はこの後訓練何でもう戻らないと。夜は覚悟してください」

ルークはそう言うとヒラリと手を振って喫煙ルームを後にする。ドクは懐から煙草の箱を取り出して一本口にして火を灯す。

「…まったく、私の身体が持つかな。色んな意味で心臓に悪いよ、まったく君って人は…」

一人で煙草を吸いながらドクは頭をくしゃりと撫で回す。ほんのりと頬が熱いのが分かるくらいには顔が赤かった。

スマートフォンを覚束ない指先で操作しながらドクは待ち受けを変えていく。

先ほど撮影したルークがドクの唇を奪いキスをしている写真だ。やっぱり恥ずかしさが勝ってしまうが少しでも大好きな人の顔を見ていたいドクはそっと待ち受けを変えてスマートフォンの電源を落とす。

「…今日くらいは素直に君の言うことを聞いてあげるよ、ジュリアン」

煙草の火を消してドクは医務室に戻る為に立ち上がる。終業まで後数時間、恋人同士に戻れるまでの数時間は待ち受けを見て頑張ろう、ドクはそんな風に思いながら喫煙ルームを後にした。

 

エコグラ・グラエコ 過去作


【嫌いだよ、お前なんて】

 

 

「ふっ、んっ…、あっ…」

「ほら、お前の大好きな僕のペニスだ。しっかり咥え込め。奥までしっかり挿れろ、この役立たず」

「んぐっ、ふっ…、ん、あ」

ティムール・グラズコフの趣味、それは一度仲良くなった人を大切にして自己犠牲すら厭わないほどに奉仕すること。

日本のSATから来た江夏優はそんなティムールの優しさにつけこんで毎晩、彼に口淫をさせている。

「気持ち良いんだろう?僕は決してお前の尻の穴になんか挿れてやらない。ティムール、僕に口内を犯されて幸せだろう?…ふん、この変態」

こくりとティムールは色素の薄い瞳から涙を流しながら頷いた。

だらしなく垂れる唾液と、
ほんのり赤く染まる頬、
そして生理的に浮かぶ涙。

これほど江夏の身体を刺激するものがあっただろうか。

「あー、お前の澄まし顔を汚したいなぁ。ティムール、お前はどうされたいの?」

口から一度ペニスを引き抜かれたティムールは残念そうな顔で江夏を見上げる。

「き、君がしたいようにしていいよ、俺は何だって…」

「本当にお前ってウザいよ、僕がお前を相手していること自体がそもそもおかしいんだ。…汚してやる、ほら、咥えろ、変態」

問答無用で江夏はティムールの頭を掴み、一度引き抜いた自身のペニスを喉奥まで突っ込んだ。

「ぐっ…、ふっ、んっ…!」

「もっとしっかり咥え込め、この役立たず。お前の口は何のために付いてるんだ?話すため?食べるため?…ふん、僕のこれを咥えるためだろ?自分の立場を理解しろ」

「んっ、ふぁ、くっ、んぐぅっ…!!」

この泣きそうな表情、かなり堪らない。

やばい、やばいよ…。

「ほーら、もう出そうだから僕の精液受け止められるよな?ぶっかけてやるよ…っ!うっ、ぐっ…、んっ…」

「あっ、優くんのっ…、あったかい…、んっ…」

限界を迎えた江夏のペニスからは白濁の液が大量に溢れてくる。もちろん、口の中では吐き出さずティムールの顔にすべてかけたのだ。

吐き出した後の熱の余韻を感じながら美味しそうに舐めるティムールを、江夏は罵るような瞳で見つめた。

「もうお前は用無しだ、さっさと出て行け。…目障りだ」

「何で…そんな意地悪を言うの…?」

精液に汚れた顔を綺麗にしながらティムールは瞳に涙を浮かべて江夏を見つめた。

「お前が嫌いだからに決まってるからだろう?馬鹿だな、お前」

「俺は君をっ…、優くんがっ…」

「…いいから出て行け。お前にはもう用なんて無いから」

脱いでいた洋服を投げてティムールに出て行くように促した江夏を、ティムールは涙を拭いながら見つめて一言だけ呟いた。

「俺は君を愛してる。…また、来るから」

静かに呟いて、ティムールは江夏の部屋を後にする。

江夏は独りになった部屋の中、ベッドにぼすんと身体を沈めて小さく囁いた。

 

 

 

「これ以上、僕の心に入ってくるんじゃない。…もう、後には引けないんだ」

小さな囁きは誰にも聞こえることはなく、虚空の中に消えていった。

 

 

【好きなんだよ、君のことが】

 

 

「ティムール、こんなことして許されると思うのか?!離せよ、役立たずっ…!」

「俺は君に何を言われても動じないよ、今から優くん、君は俺に抱かれるんだから」

ベッドに縛られる手首はきつく、決して簡単には解けないようになっていた。

「優くんって鈍感だよね。夕食の時にみんなの前でヘラヘラしてるから飲み物にこっそり入れた睡眠薬に気がつかないんだから。可愛いね」

ニコニコと微笑む目の前の男の瞳は獲物を狩るような、まるで『狙撃手』の鋭いものだった。

「俺にさんざん屈辱的なことしてくれた罰だよ。俺は優しいから簡単には君を手放しはしない。もちろん、俺が受けた屈辱を君にもあげるから」

抵抗の出来ない江夏は自身よりも歳下のティムールを強く睨みつける。

しかしそんな彼の抵抗は意味を成さない。

「お前何食わぬ顔してるんじゃねぇ、許さないぞ」

「…減らず口叩く余裕なんて、無いよね?」

「んぐっ、ふっ…!」

ティムールは江夏の唇に強引に唇を重ねていく。唇の熱さと、割り込んで来る舌の感覚に脳が溶けてしまいそうだ。

「んっ、はっ…、お前っ…化けの皮剥いでやるっ…!」

「やれるものならやってみて?…優くんには無理だよ。本当の君は優し過ぎるから。ほら、キスだけで勃起してる。散々俺のこと『淫乱』だの、『変態』だの言いやがって」

ティムールは江夏の下腹部に手を伸ばし、彼の性器に直接触れていく。

「…キスだけで勃たせて。優くんの方が淫乱じゃないか?ふふ、こーんなに先走り垂らして。もしかして、触られるのは初めて?童貞だよね?でもそれも今日で終わりだから」

「やめろっ…!離せよ、このクソ野郎っ…!んっ、あぁっ…」

「やめてなんかやらないよ?俺は君を愛してるから、悪いけど犯したい気持ちをもう抑えるのが限界なんだ。優くん、愛してる、好き…大好きっ…!」

ティムールは江夏の性器を手で扱きながら口に含んでいくではないか。

…ティムール自ら彼の性器を美味しそうに咥えこんでいく。

「いやっ、やだっ、こんなっ…」

ぐちゅり、ぐちゅりと搾り取るように吸ってくるティムールを涙目で江夏は睨みつける。

「はぁ、んっ、出ちゃ、やめてっ…」

「出していいよ?…仕方ないから飲んであげるよ」

「んっ、あぁぁっ…!」

ティムールの口の中で精をたっぷりと吐き出した江夏は、はぁっ…と吐息を漏らして顔をぐちゃぐちゃに濡らす。

「ご馳走さま、優くん」

「うっ、うぅっ…、嫌だ、こんな屈辱、嫌だっ…」

遂には泣き始めた江夏をティムールは見下しながらニコリと微笑んだ。

「まだまだこれから。…優くんって、マゾっぽいよね?俺、実は好きで好きで堪らない人にはね、とっても意地悪したくなる性格なんだー…。だから、尻出して?」

「はっ…?」

「…良いから尻を出せよ、江夏」

一気に普段よりもティムールの口調はキツくなる。手首を縛られて抵抗の出来ない江夏は涙をただただ流す。

「あ、謝るからこんなことっ…」

「え、やめないよ??…ふふ、可愛いなぁ。俺ね、優くんに好かれたいから優しいフリしてたけどもうやめる。さ、尻を解すね」

ティムールは尻を突き出した江夏の入り口に舌を這わせて舐めていく。

粟立つ感覚は江夏の身体を震わせていくのだ。

「き、気持ち悪いっ、やだ、んっ…」

「ヒクつかせてるよ?可愛いアナルだね、誰も受け入れたことがない。うん、綺麗なピンク色だ…」

舌を入れ込んで中を犯される江夏は乞うように叫んだ。

「ご、めんなさいっ、ごめんなさいっ…、んっ、やだっ…、許してっ…」

「嫌だ」

「っ…?!あっ…」

「ごめんね、泣いちゃう優くんがすっごく可愛いから俺もう我慢できない。…さ、挿れるよ」

「痛っ…、痛いっ…、やだ、やだっ…!!」

ティムールは少しだけ解された江夏の入り口に自身の性器を押し込んでいく。

「優…くん、優くんっ…、中、あっつい…、あ、気持ち良い…」

「んっ、痛い、抜いてよっ…、ティムールっ…!」

「ごめん、ごめんねっ…、気持ち良いから無理だ。俺が初めてなんだよね?嬉しい。…あ、手首が真っ赤になってる。解いてあげる」

縛られていた手首をティムールは解いてやり、代わりに江夏を強く抱き寄せた。

「中ぎゅうぎゅうだ、無意識に俺を飲み込んでくれてる。すごい気持ち良いっ…、優くん…っ」

「はっ、うぁっ、やだっ…」

「泣いちゃうくらい俺が好きなの?」

「知らなっ…」

「優、俺を見て…?」

「あっ、やだっ…、こんな、こんな顔見られたくないっ…!」

ティムールは江夏の腰を揺らしながら彼の泣き顔を真っ直ぐ見つめる。

色素の薄いブルーの瞳はどこか、求めるかのような色を浮かべていた。

「…素直に、素直に俺が好きって言ってよ…!!俺だって優くん好きで好きで堪らない。酷いことされても、酷いことをしても、俺は君を愛してるっ…、お願い、これ以上辛い思いをしたくないんだよっ…!」

「んっ、ティムールっ…、うぅ、も、もう意地悪しない、お前に優しくするからぁっ…」

「うん、もっと俺を見て?俺を求めていいんだよ?…優くん、優くん、愛してる…」

「あっ、んっ…!!」

江夏の中の痛みはやがて甘い痛みへと変わっていく。

締め付けていく江夏の中、ティムールは限界を感じていた。

 

 

「っ、ごめんっ…、俺、本当に好きになった人を抱くのは優くんが初めて。っ、気持ちいい、ごめんっ、出していいかな…」

「も、知らなっ…、勝手にしろっ、ぐすっ…」

「うん、勝手にするね。っ…、可愛いなぁ、愛してる、誰よりも君を愛してるからっ…!!」

「んっ、や、だめっ…!」

江夏の唇に口付けを施しながら、ティムールは江夏の中へ自身の熱を放っていった。

 

 

 

 

 

「…酷い抱き方してごめん」

「絶対に許さない」

「優くん、こっち向いて?」

「やだ」

「好きだよ?」

「っ…!ずるいだろ、そんなのっ…!」

「ふふ、やっとこっち向いてくれた」

ベッドの中、先ほどまで行われていた情事の熱を感じながら二人はベッドに身を寄せ合っていた。

江夏は少しティムールを睨みつけて小さな声で囁いた。

「…お前、俺の気持ちにいつから気がついていた?」

「何のこと?」

「だからっ…!!」

「俺のこと好きって気持ちかな?…最初から気がついていたよ。他の誰にも関心を見せない優くんが俺だけ部屋に呼んでくれたし。酷いことしたのは、君は今まで人を好きになったことが無いからだよね?…違う?」

江夏はティムールの言葉に観念したかのように、深いため息をついた。

「初めてお前を見た時、綺麗な奴だと思った。俺は酷く歪な人間だから想いの伝え方が分からなかった。だからティムール、お前に酷いことばかりしたんだ」

ティムールの顔を見ながら江夏は瞳にに大粒の涙を浮かべていた。

「だけど今、優くんはちゃんと言えるよね?…ちゃんと君の言葉で教えて欲しい。…受け止めるから」

どんなに酷い言葉をかけても、
どんなに酷いことをしたとしても。

ティムールは優しい男だ。

「俺はお前が好きだよっ…、ティムール、ごめんっ…、ずっとずっと、お前が好きだった…、酷いことばかりしてきたし、酷いことばかり言ってきた。お前に好きになって貰える資格なんてないのにっ…」

「もう、充分だ。…優くん、君は俺の恋人。俺が歪な君を受け止めてあげる。人を好きになるのは良いことだよ。…今度はちゃんと、君の瞳を見てキスがしたい」

「…いいよ、しろよ。お前になら何をされても構わないから…」

「ふふ、ありがとう。優くん、大好き」

「…馬鹿」

二人は唇を交わして互いに手を絡めていく。

一人は想いの伝え方が分からず、
もう一人は相手を想い過ぎてしまっていた。

不器用な二人が辿り着いた、答えのその先は…。

 

 

 

 

 

 


「愛してる、ティムール」

「俺も、優くんだけを愛してるよ…」

誰にも愛し合う二人を邪魔することなど、出来はしないのだ。

…終わり…

 

 

 

 

更新停止のお知らせ

いつも読んでいただいてありがとうございます。

 

小説の更新を一週間ほどお休みします。

 

手が回らずすいません。

彼シャツ

【彼シャツ】

モンターニュとドクのお話。

 

「ギュスターヴ、早く入れっ!」

「済まないなジル…」

天候の変化が多いこの季節、ギュスターヴはジルの自宅で宅飲みをするべく二人で仕事帰りにスーパーに寄ってジルの自宅に向かっていた。

するといきなり豪雨になり、激しい雨が二人を襲う。ずぶ濡れになりながらジルの住むマンションまで走った二人は息絶え絶えになりながら部屋に入る。

「風邪を引くから先にシャワーでも浴びろ、タオルと着替えは洗面所に置いといてやるから」

ジルはギュスターヴにシャワーを貸してやればリビングに向かう。ギュスターヴは小さな声で「ありがとう」と呟いた。

 

ギュスターヴとジルは親友同士で付き合いも長い。年齢はジルの方が歳上だが、お互い独り身で話題も何かと合う。

今日だって珍しく次の日の休みが重なったからジルがギュスターヴを宅飲みに誘ったのだ。

「はぁ、まったく災難だぜ…」

ジルはリビングのソファーに座りながら悶々としていた。理由は簡単で、ジルはギュスターヴを親友以上に思っていたのだ。そんなギュスターヴの雨に濡れた姿が思った以上にジルに衝撃を与えた。

部屋を暖め、先にワインを開けて理性を保つために口に含む。ギュスターヴが選ぶワインはいつだって最高に美味しいし、彼が作るツマミも良く酒に合うのだ。

「…これしか着替え無いけど、大丈夫だよな…」

ジルはクローゼットから一枚のワイシャツと新品の下着、そしてバスタオルを持って洗面所に向かった。

 


ギュスターヴはシャワーを浴びながらどんなツマミを作ろうか考えていた。一週間に一回のペースで行われるジルとの宅飲みはギュスターヴにとっても癒しであり、楽しみだった。

「ふぅ、ジルにお礼を言わなければ…」

ギュスターヴはシャワーを浴び、洗面所に用意されていたタオルで身体を拭く。ふわりと香るジルの匂いにギュスターヴは自然と顔を赤らめながら頭、身体、と上から拭いていく。

ギュスターヴもジルを親友以上に大切に思っていた。いっそ二人きりになるのなら思いを吐き出してしまおうと考えていたのだ。

新品の下着とブカブカのワイシャツを着ながらギュスターヴは彼が居るリビングに向かった。


「ジル、ありがとう…」

「…おう、って…!!え、えぇ?!」

「ジル?!どうした?」

「いや、シャツデカすぎたよな…」

「構わないさ、ありがとう」

「礼には及ばんさ、す、座るか?!」

「あぁ、失礼するよ」

ギュスターヴがシャワーを済ませてリビングに来た瞬間、ジルは彼を直視出来なくなってしまう。理由は至極簡単で、ギュスターヴの格好があまりにも艶やかだったからだ。

濡れた髪の毛に、ほんのりと赤い頰、そして下着が隠れるくらいのだぼっとしたワイシャツ姿だ。

…こんなにも三〇代が可愛いなんて。

様子のおかしいジルを心配したギュスターヴは彼の瞳を覗き込む。

「ジル?大丈夫か?」

「あ、あぁ…」

「なら私の目を見てくれ、いつもの君らしくない。私が何かしたなら謝るから…」

ギュスターヴは潤んだブラウンの瞳で上目気味にジルを見つめる。ギュスターヴの胸元がちらりと見え隠れし、自分と同じ匂いを纏う彼をジルは我慢出来ずに抱き竦めた。

「お、お前は何も悪くない!」

「なら何で私を見てくれないんだ…」

ギュスターヴは声を震わせる。ジルはそっとギュスターヴの手を取り、それを下腹部まで持っていく。

「…お前のシャワー後のそんな姿見て反応してる俺に見られたら気持ち悪いだろっ…、俺はギュスターヴ、お前が好きなんだ、こう言う意味でも、恋愛的な意味でも」

ジルは長年溜め込んだ思いを吐き出した。するとギュスターヴは彼の反応している下腹部をズボン越しにすっと触れながら呟いた。

「…ジル、私も同じ意味で君が好きなんだ」

「だからって、今触る奴が居るか?!」

「なら私のにも…」

「お前な…」

「ジル…、君が好きだよ…」

ギュスターヴは彼のズボンのファスナーを下げて反応している性器を取り出して触れていく。

そしてジルもギュスターヴの下着から性器を取り出してお互いに愛撫し合う。ぬるぬるっと濡れた先端を擦り合えば一人で慰めるよりも倍の快楽が二人を襲う。

「あっ、ジルっ…、ずっと君が好きだったよっ…、これからも、好きで居てもいいっ…?」

「あぁっ、構わんっ…、うっ、くっ…!」

「んっ、も、もう出るっ…」

「俺もだっ…、あっ、う、くっ…!」

違いの手に熱を吐き出した二人は瞳を見つめ合い唇を重ね合う。熱い吐息を漏らさぬように優しくゆっくりと唇を重ねて行った。

 


「…まさか、両思いだったとは…」

「そ、そうだな…」

しばらく経ってから酒とツマミを並べて二人は酌み交わす。数時間前の行為に関しては合えて口に出さず互いに見つめ合えば笑顔が溢れた。

「ジル」

「ん?何だ?」

「…私は君になら何をされても構わないとずっと思っていたよ。だからその、反応してくれて良かった。…恥ずかしかったけどね」

ジルは飲んでいたワインを吹き出しそうになるのを堪えながらギュスターヴの頭をぐしゃりと撫でた。

「俺はお前に出会った頃から一目惚れだったけどな。ギュスターヴ、これからも側に居ろよ、側を離れるな…」

「あぁ、喜んで」

溢れる笑みは何よりも幸せな今を象徴する輝きを秘めていたのだった。