穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

昼休みの出来事

【昼休みの出来事】


江夏×田波


***


「田波さん」

「ん…??」

「いくら昼休みだからって屋上で寝るなんて風邪ひきますよ」

先輩である田波さんに用があった俺は田波さんが居るであろう屋上に足を運んだ。

案の定、彼はワイシャツにネクタイというラフな格好で気持ち良さそうに屋上で昼寝をしていた。

「江夏か?…どうした」

「田波さんに頼まれていた資料が出来たから提出したくて探していたんですよ。署内を探しても居ないから屋上に来たらあんた寝てるし」

「ここ最近捜査で徹夜が続いて居たからな。悪いな江夏、貴重な昼休みを使わせちゃったな…」

「…別に構いません」

俺は田波さんの隣に腰を下ろす。寝起きで寝癖のついた田波さんの頭に無意識に手を伸ばした俺は彼の頭をくしゃりと撫でる。

「ちょっ、いきなりなんだ…!」

「あんたの頭に寝癖がついて居たから直そうと思って。あんた一応警部なんだから身なりくらいしっかりした方がいいですよ」

「う、うるせー…、馬鹿江夏」

田波さんは起き上がると空を見上げながらネクタイをきゅっと締めて身なりを整える。

「格好いいですね」

「それ本音か?」

「…俺は嘘を言わないですよ、特に好きな人や落としたい人に対しては。一途だから、俺」

「っ…!何、お前は俺が好きなのか?こんなおじさんを?」

「分からせて欲しいなら、分からせてあげますよ。田波さん、あんたが好きだ…」

屋上で俺は田波さんを押し倒す。寝癖を整えて服装までキチンと整えてたあんたを俺は押し倒す。

「な、何すんだっ…」

「田波さん、好きです…」

「耳許で、耳許で言うな馬鹿っ…」

「首が赤いですよ、可愛いですね」

「うるさっ…んっ…?!」

口答えする田波さんの唇を塞いで黙らせてしまえばこちらの物だ。あぁ、あんたの体温がこんなにも心地良いなんてな。

田波さんの舌に俺の舌が絡まり、そして互いの体温を感じながら堪能していく。

…まるで求めていたかのような、そんな感覚を俺は覚えてしまう。気が済むまで田波さんの唇を堪能した後、ゆっくりと唇を離せば田波さんの顔は真っ赤になっていた。

「ばっかじゃねぇの?!」

「…そんなに怒らなくても…」

「仕事に集中出来なかったら責任取れよ、バカ江夏!」

「もう、本当に田波さん、あんたって人は…」

ゆっくりと立ち上がるあんたの姿を見て俺はぼそりと呟いた。この声を、この想いを聞いてもらうのは今夜でいい。

 

 

 

 

 

 

 


「本当にあんたって人は可愛い、大好きだ、愛してる」

狂気の雨

【狂気の雨】


曇天の空の下、バンディットは敵の額に向けて躊躇いもなく引き金を引いた。目の前で倒れこむ男の鳩尾に蹴りを入れればバンディットは冷たく吐き捨てる。

「お前みたいなゴミはな、生きている価値なんて無いんだよ」

地面に流れ出る血を見ながらバンディットは懐から煙草を取り出した。丁度最後の一本だったようで、ライターを取り出して火を灯す。

雨なのに傘も持たず、薄暗い空の下で人を殺める彼を見つけたイェーガーは傘を差し出しながらポツリと死んだ男に目線を落とす。

「…何人目だよ」

「ん?何の話?」

「だから、今月何人目だよ?人を殺したの…」

「まだ今月が始まって一週間しか経って居ないが七人目だ。イェーガー、お前がこんな薄汚い路地裏に居るなんて珍しいな」

バンディットは煙草を吸いながらイェーガーの顔を見つめた。イェーガーはバンディットの肩が濡れないように傘を差しながらポツリと漏らす。

「…上からの指示でお前が街に潜む害虫駆除をしてるって聞いたから。昔からお前は躊躇なく人を殺めるから心配で」

「心配?…どうして心配するんだ?」

「お前の心がいつか壊れちゃうんじゃないかって。バンディット、お前は優しい反面、一人で抱え込むだろう?だから俺は…」

イェーガーの言葉にバンディットは溜息を吐きながら煙草の吸殻を地面に落としてくしゃりと足で踏み潰す。

バンディットとイェーガーの近くにはバンディットが殺めた男の死体が転がっている。バンディットは無感情な色を浮かべた瞳で地面と死体を交互に見つめた。

「…イェーガー、俺の心は数年前からずっと壊れているよ。スパイをやっていた数年前からずっとな。…今だって上は俺が壊れているのを分かってこき使ってんだ。ブリッツやIQ、そしてイェーガー、お前には向いていない汚れ仕事をするのは俺だけで充分なんだ」

スニーカーは血で汚れていた。イェーガーは死体に布を掛ければ、バンディットの服をキュッと掴んで呟いた。

「…お前も…止めようとは思って居ないんだろう」

「…どうしてそう思う?」

「…人を殺める事が本当に嫌ならお前は泣いているはずだ。本当に『嫌』ならな。だけどバンディット、いつからかお前にとって人を殺めることは…娯楽と同じになっていた。違うか?」

イェーガーの言葉にバンディットは瞳を細めながらポツリと言葉を漏らす。

「お前がそう思うのならそうなんじゃないか?」

「っ…!」

「イェーガー、もう俺の心は壊れたままさ。戻りたいとも思わない、戻したいとも思わない。心の隙間には狂気の雨だけがポツリポツリと落ちてくる。ただそうだな…隙間を埋めて欲しいとは思うけど。イェーガー、お前が埋めてくれるのか?」

バンディットの言葉にイェーガーは手にしていた傘を地面に落としてしまった。曇天の空の下でバンディットとイェーガーの視線は静かに絡み合う。

「…俺がお前の隙間を埋めてやれるなら、埋めてやるよ…」

「じゃあ、瞳を閉じろ」

イェーガーはバンディットに言われた通りに瞳を閉じる。バンディットの手袋に覆われた手はイェーガーの顔を撫でて行き、やがてイェーガーの唇に自身の唇を重ねていった。

驚くことも、
騒ぐことも、
拒否することも。

全部許されないこの雰囲気の中でイェーガーはバンディットの唇の体温を受け入れることしか出来なかったのだ。

雨が強くなり始めた頃、ようやく離された唇を名残惜しそうに指で撫でるイェーガーをバンディットは瞳を細めて見つめる。

「…イェーガー」

「何だよ…」

「…俺はもう少しだけこの狂気の中に身を沈めたいんだ。心が壊れようがそんな事どうでも良いんだって改めて分かった。お前の体温は俺には心地良すぎたんだ」

「手をこれ以上汚すのかよ…?!」

「…所詮俺はそういう男だよ、イェーガー、お前は俺の近くに居ない方がいい。死体の処理は俺がしておく。だから傘を持って早く帰れ…」

バンディットの言葉にイェーガーは唇を噛み締めながら彼に背を向けて歩き出す。華奢なイェーガーの身体が微かに震えていたのをバンディットが見落とす筈もなく、ただ黙って彼の背中を見送った。

泣きそうだった。

今までに見た事のない彼の顔を見てしまったようでバンディットの心には僅かな罪悪感が流れ込む。

「イェーガー、お前には俺の汚い姿を見て欲しくは無いんだ。俺のせいでお前が辛い思いをする所を見たくは無い、だから俺はお前を突き放す」

雨で濡れた手を真っ直ぐとバンディットは見つめる。先ほどまでイェーガーに触れていた手はもう振り続ける雨のせいで冷え切っていた。

俺はお前が大切で
俺はお前を汚したくなくて
俺はお前が愛しくて堪らない。

「…だからこそ、俺は狂気の中で生きることを望むんだ。イェーガー、出来ることならお前と同じ道を歩いて笑って生きて行きたかった。だけどそれは叶わないだろうな。俺自身がその道を絶ったのだから…」

懐からバンディットはP12を取り出して弾倉を込める。弾が込められた愛銃の引き金に指をかけてバンディットは口元に笑みを浮かべた。

凶悪なまでに冷酷なその笑みと共に彼は引き金を引く。パァンっと響き渡る音と共に弾薬は地面に転がって落ちて行った。


「本当の狂気はこれからだ、終わることを知らないこの雨のようにずっと続いて行くんだ。イェーガー、お前に暗闇は似合わない。どうか幸せになれよ。…唇の体温は絶対に忘れないからな」

バンディットは死体を鞄に詰めて歩き出す。もう振り返ることはしない。もう二度とイェーガーの隣に立つことも、彼と歩む幸せも。望まないと弾丸に誓ったのだから。

地面に転がる弾丸は血に濡れて汚れて行く。曇天の空の下、バンディットは雨に濡れながらゆっくりと歩き出した。

…口元に冷え切った笑みを浮かべながら彼は狂気の雨に身を沈めていった。

 

私が君を想う理由

【私が君を想う理由】


「馬鹿なのか?!」

怒りの色がありありとドクの声に含まれていた。任務の際にルークはドクを守る為に敵の銃弾から彼を庇った。

ルークの瞳の真横はぱっくりと傷が出来てしまい、場所が悪ければ今頃ルークの瞳は失明していただろう。

基地に戻ったドクはすぐさまルークに手当を施した。敵地でも最低限の止血はしていたが早めに傷が良くなるように迅速にドクは対応したのだ。

「…貴方が死ぬよりかは、俺の命一つで貴方が助かった方が良いだろう?だからそんなに怒らないで欲しいんだが…」

二人きりの医務室でルークは困ったように呟いた。彼の青い双璧はドクを真っ直ぐに捉えていた。

「ルーク、君は私の気持ちを何一つ分かっていないじゃないか…」

「貴方の気持ち…?」

「死んでいい人間なんていない、況してや君は…ルーク、君は私にとって大切な相棒で恋人じゃないか!君が隣にいない人生なんて…まるで空虚だ」

「確かにそうだが…戦場で私情は…」

「っ…!君は本当に分からず屋だなっ…!」

ドクはルークの頬をぺちんと叩いた。ルークがドクを見れば彼のダークブラウンの瞳からは大粒の涙がぼろぼろと頰を伝って落ちていく。

「ルーク、私がどれだけ君を想っているか、私がどれだけ君をっ…、大切に想っているか、君は分かっているのか?!」

「…分かってる、俺だってそうだ」

「だけど君は後先も考えず私を庇って死のうとした、私がどれだけあの時絶望の淵に立たされたか…、君には分からないだろう?!」

ルークの瞳と涙で濡れたドクの視線は静かに交わった。ルークは小さくため息を漏らしながらドクをそっと抱き寄せた。

「…ごめん、軽卒だった」

「…私は、私は君を失いたくはないんだ、だからもう、あんな軽はずみなことをしないと今ここで私に誓って…」

「…ギュスターヴ」

「…ジュリアン…、もう二度と死のうとするな。君に守られるだけじゃなく、私は君と対等でありたい、だから二度と死のうとなんかしないで…!」

「…分かった、貴方に誓うよ」

ルークはドクの涙をそっと拭いながらその唇に優しくキスを施していく。ドクもまた、ルークの唇を受け入れながら瞳を閉じていった。

ドクはルークを自分自身よりも大切に想い、そしてまた、ルークもドクを想うが故に自己犠牲を厭わない。

…だからこそ。

だからこそ二人には二人だけの誓いが必要だったのだ。医務室の中を照らす夕焼けが重なる二人を淡く照らしていた。

少し

二次創作について様々な見解があるようで、少し落ちつくまで更新をストップします。

誘惑

【誘惑】


「…ジル、どうかな…?」

「え…?ってギュスターヴ!風邪を引いちまうぞ?!」

風呂上り、ベッドに腰掛けながらギュスターヴを待っていたジルは彼の姿を見て驚いた。

真っ白なレースがあしらわれたフワフワのベビードールを纏ったギュスターヴが浴室から出て来たのだ。

お風呂上りの為なのか、真っ赤な顔に食い込み気味の下着が目について仕方がない。ジルはギュスターヴの方にブランケットをかけながら呟いた。

「…寒いだろう…」

「さ、寒くはない…!」

「どうしてそんな薄着なんだ?ギュスターヴ、風邪を引くからせめて温かい格好をだな…!」

「君の為なんだけど…!」

ギュスターヴは声を震わせながら傍に座るジルの服の袖を掴む。ダークブラウンの瞳は羞恥の色を浮かべていた。

ジルはギュスターヴから目線を逸らしながらボソリと声を小さく漏らす。

「…俺の為…なのか?」

「君が最近私を抱いてくれないから…、だからこういう色っぽい下着でも身に付けたら抱いてくれるかなぁって…。どうして私の方を見てくれないんだ?」

ギュスターヴは声を震わせながらダークブラウンの瞳から涙をぽろりと零す。ベビードールのレースの上に涙の跡が出来ていく。

「そんな、そんな可愛い格好をされて理性が保てるほど俺は大人じゃない。ギュスターヴ、俺がお前を抱かなかったのは仕事で疲弊しているお前を気遣ってだよ。…ギュスターヴ、これが俺の反応だ。な?…俺がどれだけ興奮しているか分かるだろう?」

ジルはギュスターヴの手を取り、己の下半身に触れさせた。パジャマのズボン越しでも分かるほど膨れ上がったそれにギュスターヴは顔を真っ赤にした。

「…嫌じゃないんだ」

「お前を朝まで寝かせる余裕が無いんだよ。食っちまうぞ…?」

「ジル、君に抱かれたい…。お願い、君が欲しいんだ…」

ギュスターヴの誘惑に掛かったジルはそっと彼の唇にキスをしながらベッドに優しく押し倒して行ったのだった。

 

***

 

「凄い可愛いよ、ギュスターヴ…」

熱い吐息を漏らしながら恋人の名前を愛しげにジルは呟いた。己の上に跨がって腰を揺らす彼は目の前のジルに夢中だった。

「んっ、久しぶりだからっ…、あっ、腰が、腰が止まらないんだっ…、ジル、ジルっ…!」

「久しぶりなのにすんなりと俺のを飲み込んでるお前の尻は変態だな。可愛い、生でなんてまた珍しいなっ…」

ギュスターヴが腰を沈めるたびにぐちゅりと濡れた音が部屋に響き渡る。ギュスターヴのベビードールは脱がされないまま、ずっと着ている状態でジルに抱かれていたのだ。

「一番生が気持ち良いからっ…」

「軍医の癖にお前は全く…」

「あっ、そう言う君だって…んぅっ、あっ…!」

「乳首好きか?…この可愛い下着越しから摘みながら下から突いてやるよ…」

「…っ!?!?!?ひっ、や、あっ!んんっ…、ジルっ、駄目だっ…、乳首は好きっ、気持ち良いっん、あっ…!!」

ジルはギュスターヴのピンク色の時を指で摘みながら下から突き上げる。乳首を愛撫される刺激と中の良いところに与えられる快楽にギュスターヴが耐えられる筈もなく、ジルの性器をぎゅうっと締め付けた。

「こ、こらっ…!」

「君が、君が悪いんだっ…、私、乳首弱いのにっ…!上も下も君のせいでぐちゃぐちゃだっ…、はぁ…、んぅ、ジ、ル、もう駄目だ、むりっ…」

「あぁ、望み通りにしてやるさ…、ギュスターヴ、可愛い、愛してるよ…」

「んぁぁっ、駄目っ、出ちゃう、出ちゃうからっ…ひゃ!はっ、はぁ…、あぁ…っっ…ん!」

綺麗なギュスターヴの下着は吐き出されていく己の精で濡れていき、そしてまた、ギュスターヴの中はジルの熱をたっぷりと受け入れて行ったのだった。


***


「…ギュスターヴ、白以外も着てみてくれないか?」

「へっ…?き、君は何を…!!」

何回もお互いに求め合って気が済んだのは明け方のことだった。ベッドの中でギュスターヴはジルに抱きしめられながら顔を赤らめて困ったような表情を浮かべた。

「お前が悪い、あんなに可愛い格好をしたギュスターヴ、お前が悪い。久しぶりだよ、こんなにお前を求めてどろどろになるまで抱いたのは…」

「…最初は嫌がられたのかと思ったよ。君のリアクションが微妙だったから…」

「ギュスターヴが可愛すぎて理性が保てるか心配だったんだよ、おかげでお前を抱き潰すかと思った」

ジルはギュスターヴの唇にちゅっと軽いキスを施した。赤い唇を味わうように優しく穏やかに。

唇を離したジルはギュスターヴの頭をくしゃりと撫でて微笑んだ。

「なぁギュスターヴ」

「…な、何…?」

「これからは遠慮なくお前を抱いていいんだよな。可愛いお前を遠慮なく抱いてやるから覚悟しろよ?」

「…程々に頼む」

ギュスターヴはジルの腕の中で耳まで真っ赤にしながら彼の甘い言葉に耳を傾けていた。

可愛い恋人の誘惑に負けたのは他ならぬジル自身だったのだ。

 

 

酌み交わす

【酌み交わす】

寂れたバーのカウンターに座る大柄の男の背中を見つけたカプカンは声をかけて隣に座る。

「…相変わらずあんたはこのバーが好きなんだな」

「マクシムか、遅いぞ」

アレクサンドルはマクシムの顔を見つめて呟いた。今宵、アレクサンドルはマクシムを呼び出して酒を酌み交わす約束をしていた。

マクシムは少しだけアレクサンドルを睨みながら声を漏らす。

「俺だって暇じゃない。まあ遅れたのは悪かったが。しかし何でここにした?宿舎じゃダメなのか?」

アレクサンドルに尋ねれば、彼はマクシムを見つめて口を開く。

「…今日が何の日か分かるか?」

「…何かあったか?」

「マクシム」

「何だ?」

「…お前と初めて会った日だよ、今日は5月14日。お前の誕生日だ」

「すっかり忘れていたよ、この数年間、生きるか死ぬかの瀬戸際だったからな」

5月14日、それはマクシムの生まれた日であり、アレクサンドルとマクシムが出会ってから10年の節目を迎える大切な日だった。

「もう出会って10年か。…初めてお前に会ったとき、お前は全てを拒絶していたな。何もかも、全てを嫌っていた。まるで何も信じたくはないかのように」

「あの時は仕方なかったんだよ、一番酷い状態だったからな」

アレクサンドルはマクシムにウォッカの水割りが入ったグラスを差し出した。マクシムは酒にあまり強くはない。受け取ったグラスを手に持ちマクシムは瞳を細める。

「アレクサンドル、あんたには感謝しかないな。暗い底に居た俺に手を差し伸べてくれた。俺を此処まで導いてくれてありがとう」

「…っ、ば、馬鹿じゃねぇの…」

「…照れてるのか?」

「柄にもなくお前が可愛いことを言うから反応に困っちまった。大切な日だな、俺にとってもお前にとっても」

「あぁ、そうだな…」

酒の入ったグラスを酌み交わせば穏やかな視線だけが二人の間でゆっくりと絡み合って行く。

酒を酌み交わす大切な時間を、今日という日を、二人は大切に過ごしていったのだった。

恋と君と思いの三角形

【恋と君と思いの三角形】


2.意識する思い


挑発的なミラの言葉にドクは手を強く握りしめながらミラを睨みつける。マンションのエントランスの中でドクはミラとルークを見た。

「…ルーク、君も簡単に隙を見せるな」

惚けているルークにドクは声音を冷たくしながら呟いた。ルークはドクを見つめながら顔を暗くして目線を落とす。

ミラはくすりと笑いながらルークの腕に自分自身の腕を絡ませて挑発的な笑みをドクに呟いた。

「いつまでここに居るつもりかしら?早く帰りなさいな、坊やは私のものなんだから。明日の実技演習は確か坊やとあなたと一緒だったかしら。ふふ、仲良くしている所、見せつけようね、坊や?」

「…っ、ミラさん、それ以上ドクに挑発的な言葉を…!」

「ルーク、私は帰るよ。お邪魔みたいだからな。ゆっくり休みなさい、それからミラ」

ダークブラウンの瞳は酷く冷たい色をしており、ミラをただただ見つめながら感情を抑えた声で言葉を漏らす。

「ルークはものではない、一人の人間だぞ。出会って間もない君は実に不愉快だよ。出来ればもう顔すら見たくはないんだけどね。…また明日訓練で。ルーク、また明日」

「ごめんなさい、…きちんと明日話を…」

「ドク、あなたは馬鹿な男ね」

二人の声を背中越しに聞いたドクはマンションのエントランスを後にして歩き出す。

 

 

自宅のドアを開けてドクはスーツのジャケットを脱ぎ捨てながらソファにどかっと腰を下ろす。

「はぁ…何なんだ…」

仕事より疲れた一瞬の出来事にドクは深いため息をついてしまう。瞳を瞑ればミラに唇を奪われたルークの顔が頭に過ぎる。

『ミラ』

エレナ・マリア・アルバレスは厄介な存在だとドクは改めて思う。ルークを一番に思うのは自分だけで十分だ。

「…君を好きなのは私だけで十分だろう?ルーク、君が好きなんだ…、誰よりも何よりも」

青く輝く双璧の持ち主に思いを馳せるドクはどれだけ自分自身がルークを思っているのか再確認したのだった。