穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

love*medicine…恋の特効薬


この想いに名前をつけるなら、なんて付けようか?

簡単に思い浮かぶなら苦労なんてしないし、苦しくなんてならないさ。私は少なくともこの想いを知っている。

なんせこれに効く薬なんて、何処にも売っては居ないのだから。


【love*medicine…恋の特効薬】


私が相棒であるジュリアンに対して自覚した気持ちを抱え込んでから何年経ったのだろうか。

人は私を『優しい人間』だと評価をするし、チーム内でも私を慕ってくれる人は大勢いる。

だけれども本当の『私』は臆病なただの弱虫で、意気地なしなのだ。好きになった相手に対して満足に想いを伝えることすら出来ないのだから。

「ギュスターヴ、そんな暗い顔をしてどうした」

「…ジル、お疲れ様。少し悩み事が有ってな」

「お前にしては珍しいじゃないか、一本吸うか?軍医だからと禁煙は身体に悪いんじゃないのか。かつてヘビースモーカーだったお前が吸わなくなったと聞いた時は驚いた」

休憩室で私が休んでいればチームメイトのジルが入ってきて隣に腰を下ろしながら一本の煙草を差し出してきた。

かつてヘビースモーカーだった私は好きになった相棒の為に煙草を一切吸わなくなった。理由は簡単で、彼がその匂いを嫌いと言ったからだ。

「…そうだな、一本貰うよ」

「ほら、ライターも貸してやる」

ジルから受け取った煙草にライターで火を灯せば、じわりと煙草の先端に火が灯る。

か細くて、すぐに落ちてしまいそうな繊細な炎は私の心と同じくらいに脆くて儚い。

口から吐き出した煙は輪を作り、休憩室の換気扇に静かに消えていった。ジルは私を見て呟いた。

「ギュスターヴ、お前は何を悩んでいる?いつも穏やかで笑顔ばかりのお前が暗い顔をしているとジュリアンが心配するぞ」

『ジュリアン』

私が一番聞きたくのなかった名前だった。自覚した想いを伝えられず、ずっと抱え込んでいる気持ちを向けている相棒の名前を聞いてしまえば、私は深くため息を吐くしかなかった。

「…ジル、私が恋について悩んでいるとしたら可笑しいか?」

「っ…くく、そうだな。意外だとは思うが」

やはり笑うか。

ジルは吸っていた煙草の吸殻を灰皿に捨てて私の人を見つめて瞳を細める。弧を描いた瞳には涙が浮かんでいた。

「ギュスターヴ、俺の役目はチームの中で苦しんでいる奴がいるならアドバイスをして支えてやるのも一つだと思ってる。普段からお前は自分一人で抱え込む悪い癖があるからな。悩みが有るのなら…」

「私はジュリアンが好きなんだ。それはもうずっと前から、彼がGIGNに入って来たからずっと。もう五年以上彼を想って来た。だけど私が臆病なせいで彼に想いを伝えられずに来たんだ」

ジルとは長年の付き合いで気の置ける友人だからこそ、心に溜まった蟠りを吐き出してしまおう。そう思えた。

私の言葉を聞いたジルは何故か満面の笑みを浮かべて私の肩を叩く。それはもう、実に楽しそうに。

「本当にお前ら二人は似た者同士というか、何というか。同じように暗い顔して切羽詰まった顔をして。口を開けば『片思いを拗らせてます』だと。ギュスターヴ、お前の相棒もきっと今頃覚悟を決めてるさ」

意味が分からない。

ジュリアンが私の知らない相手に長年片思いをしているのか。私の方がずっとずっと君を長い期間想い続けて来たのに?

…嫌だ、私の前から居なくならないで。想いを伝えて居ないのに、他の誰かの所になんて行かないでー・・・。

「嫌だ…、私は彼が大好きなのに」

「相棒を想っているのなら、早く想いをぶつけてやれよ。じゃないとジュリアンはきっと他人に持って行かれちゃうぜ。ギュスターヴ、今日はアイツ非番だから部屋に居るさ。さ、俺にできるお膳立てはここまでだ。後はお前次第だ。…頑張れよ」

ジル、私はきっと君に感謝しか出来ないんだろうな。吸っていた煙草を捨てて私は彼がいる自室に向かうことにした。

「…ジル、私がもし失恋したら飲みに行こう。勿論、私がご馳走するよ。その時は君の惚気を是非酒の肴にさせてくれ」

「…結果がなんて、一つしかないのに。おっと、俺はそろそろ戻るよ。頑張れよ、ギュスターヴ」

「ありがとう」

ジルの意味深な言葉は妙に心に絡んで来たが私は今までに無いくらいの覚悟を持って歩を進めっていった。

 

 

 

「ジュリアン、私だが今大丈夫か?」

「ギュスターヴ?…あなたが部屋に来てくれるなんて珍しい。上がって?」

「…いきなり済まない」

断りもなく、いきなり訪れた私を拒否することもなくジュリアンは私を部屋に上げてくれた。戸惑った表情を見るたびに、私の胸はきつく締め付けられていく。

「そんなに切羽詰まった顔をして、どうしたの?何か悩みが有るのなら話して見てほしい。優しい貴方はいつも本性を晒け出してはくれないから」

「…ジュリアン、君に伝えたいことがあって部屋に来た。これから伝えることは君を酷く失望させてしまうかもしれない。それでも…」

「ギュスターヴ、話をして。俺はどんなことを言われても大事は相棒である貴方を突き放したりはしない。暗い顔は貴方に似合わない」

…あぁ、君は優しいから。

そんな君を数年間、ずっとずっと…。

さぁ、覚悟を決めて。

「…ジュリアン、私は君を一人の人間としてずっと想って来た。それはもう君がGIGNに入隊してからずっと好きだった。私が臆病なせいでこんな想いをずっと一人で抱え込んで来た。相棒で、しかも男である私に想われていたなんて、気持ち悪…」

「…ギュスターヴ…、貴方って人は本当に馬鹿だよ。一人で抱え込む必要なんてなかったのに。どうして貴方が俺の腕の中に居るか理解できる?」

気がつけばジュリアンは私をきつく抱き締めていて。望んでいた彼の温もりに抱かれていて…。

「…分からないよ、どうして…」

「俺だって貴方をずっと見ていた。一人の人間として好きだったんだ、想い続けて来たんだよ?ギュスターヴ、貴方が俺を想い続けてくれたように。一目惚れだったんだ…」

「だって、君には他に好きな人がいると、ジルが…」

「…俺、あの人に相談したんだ。だからジルはきっと俺たちが両想いだって分かっていたから貴方にワザと冗談を言ったんだと思う。…そんなことしなくても、俺は貴方にしか気持ちを向けるつもりなんてさらさら無いんだが。…ってギュスターヴ?!なんで泣いてるの」

この状況で泣くなと言う方が難しいんだ、分かってくれよ。私は君より年上で臆病で弱いんだから…。

「ずっと拗らせてきた初恋が実ったんだ、泣かない訳ないだろう?ジュリアン、君が好き、大好きだっ…!良かった、本当に。君と両想いで、ずっと好きで居て良かった…」

止めどなく流れるこの涙の意味を、そして本質を、そして答えを。私は分かっているんだ。

「ギュスターヴ、俺もずっと貴方を好きでいて良かった。本当に幸せだよ、今が一番幸せだ…」

涙で汚れてしまった私の顔を澄んだ青い瞳で君は優しく見つめてくれる。もう、この想いを、そして気持ちを治してくれる特効薬を手に入れたのだから。

「…私を想ってくれてありがとう」

「愛してるよ、ギュスターヴ」

そっと近づいてくる唇、そして大好きな君の匂いと温もりに包まれて私は君を抱き締め返す。

長い時間抱え込んで来た気持ちをようなく大好きな君に伝えることが出来て本当に良かった。

心から君を好きでいて良かった。

愛してる、世界で一人だけの大好きな君を。

ずっとずっと、永遠に。