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もう一度君に逢いに行く①

【もう一度君に逢いに行く】

レインボー部隊が解散してそれぞれの国に戻ることが決まった日。グラズとエコーは空港でお互いの顔を静かに見つめ合っていた。

飛行機の搭乗時刻が刻々と近づいている中で、グラズ以外のスペツナズメンバーは気を利かせて先に搭乗して行った。

グラズは目の前に立つ歳上の恋人を愛しげに、そして少しだけ寂しそうな表情を浮かべて見つめながら呟いた。

「…今まで、一緒に居てくれてありがとう。優くん、俺も君も祖国に帰らなきゃ行けないけれど…、その…遠距離だけど頑張れるかな?」

「さぁ、それはお前次第じゃないのか?」

「…もう、本当に優くんは意地悪」

「それが俺だから」

「ふふ、そうだよね。俺、優くんに渡したい物があるんだけど受け取ってくれるかな」

グラズは鞄から一枚の絵を取り出してエコーに手渡した。エコーはその絵を見つめて驚きで目を見開いた。

「…これって…」

「うん、優くんと俺が初めて歩いた公園だよ。俺が唯一出来ることは、遠く離れた祖国から優くんに連絡することと、優くんの心の中にいつまでも俺が居続けられるように願うこと、そして思い出を一つ、優くんに残すことだよ…」

グラズはたどたどしくエコーの手を握り締めながら絵を手渡した。透き通る青の瞳からはじわりと涙が溢れ落ちていく。

そんな様子を見たエコーはグラズから絵を受け取りグラズの顔に手を伸ばして静かに微笑んだ。

「泣くくらいなら、こんなことするな。お前を手離したくなくなるだろう?」

エコーの言葉を聞いたグラズは涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら頷いて一生懸命エコーの言葉を聞いていた。健気なグラズの様子にエコーは胸を締め付けられる思いでいっぱいになる。

「っ…、本当は、本当はずっと優くんの側に居たい、だけど俺には祖国を守らないと行けない義務がある。優くん、俺は本当に君を…」

「…それ以上、言わなくて良い。俺に言わせて」

グラズの腕を引き寄せて、力一杯エコーはグラズを抱きしめた。洋服越しに伝わる温もりも耳元で息を飲む音も。

全ては今日が最後になるかもしれない。

エコーは後悔しないようにグラズの耳元で不器用な愛の言葉を囁いた。

「…俺だってお前を愛してる」

グラズはただただ黙ってエコーの身体をしっかりと抱きしめ返した。

言葉も行動も想いを確認し合うのには充分過ぎて。お互いの思いが、そして気持ちが溶けて消えてしまえばいいのに。

一瞬よりも切ない時が二人を包み込んで行く。

 

グラズはエコーから身体を離して空港の時計台を見て小さく溜息をついた。

「…もう、行かなくちゃ」

瞳は涙で濡れていて、だけど何処か少しだけグラズの表情は晴れ晴れとしていて…。

エコーはグラズからそっと離れて頭を優しく撫でて見つめた。二人の間に言葉など必要ないのだから。

グラズは搭乗口に身体を向けて歩き始める。エコーはそんなグラズの姿を小さくなるまで見つめ続けていた。

手には一枚の絵。

不器用過ぎる愛の言葉を口にしたことが自分の中でおかしかったのか、エコーは口元に小さな笑みを浮かべて呟いた。

「….俺からいつか、逢いに行ってやる。それまではどうか頑張れよ、ティムール」

エコーは空港から帰るために搭乗口を後にする。グラズが祖国に帰国するための飛行機は飛びだった。

 


一枚の絵には小さな言葉。


『遠く離れていても、俺は君を愛してる。いつかまた、逢える日まで』

小さな愛の言葉は遠く離れた場所に帰って行く恋人の、自分なりにグラズがエコーに宛てたラブレターだった。

何よりも大切そうにグラズから受け取った絵を持ってエコーは空を見上げた。

いつかまた、逢える。

いいや、逢いに行く。

そんな決意がエコーの瞳には浮かんでいた。

…つづく…