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もう一度君に逢いに行く②

【もう一度君に逢いに行く】②


side.ECHO


俺がお前を見送ってからどのくらい経っているだろうか。もう半年以上は経っているよな。

日本に帰ってくるなり、上司からこき使われるし任務を遂行するうえでティムールからの連絡にまともに返事をしてやることも出来なかった。

『優くん、今日は寒い?こっちは寒い』
『おはよう、風邪引いてない?』
『おやすみ、優くん』


『優くんに会いたいよ』

メッセージアプリを見返せば、ティムールからの最後のメッセージは二ヶ月前を最後に受信をしていなかった。

俺だってお前に逢いに行ってやりたいよ、そしてお前の身体を力強く抱き締めてやりたい。

「はぁ…、何であいつをこっちに連れて来なかったんだろ。馬鹿だな、俺…」

「ま・さ・る!折角の酒が不味くなるじゃない?!あんたが珍しく私を飲みに誘うからついて来たけど。まったく暗い顔するなら電話くらいしなさいよ!」

「…由美子、俺から電話なんて出来るわけないだろ?今すぐにでも抱き締めたくなる」

「相変わらず日本に帰って来ても優は『彼』だけには勝てないんだから。私も二人の友達として純粋に心配なんだよ?!」

由美子はSAT、そしてレインボー部隊を通して親友になった唯一の女性だ。俺が一番相談しやすい由美子を久しぶりに飲みに誘ったのだ。

「そうだな、俺はあいつに勝てない。引き止めなかったことも後悔してる。連絡もまともにとれてない、ティムールは優しい奴だ。きっと俺のことを忘れないように…」

いつまでも俺に囚われているんじゃないのか?

今までに感じたことのない不安が頭を過る。俺とティムール、国は離れているし遠距離なんてやはり俺には…。

「ねぇ、あんたは何の為に戦って来たの?レインボー部隊は解散してホワイトマスクは壊滅した。あんたがレインボー部隊で守って来たものは人々の命だけ?…ティムールくんの背中も必死に守って来たんじゃないの?待ってるだけじゃ駄目。優、好きなら自分から逢いに行きなさい」

「…だけど、だけど休みが…」

「何の為の親友なのよ。私が上に掛け合ってあんたのために有給取ってあげたわ?一週間、あんたはロシアに出向よ。優、ティムールくんもきっと寂しいって思ってる。運が良いことに私はスペツナズみんなの連絡先知ってるからティムールくんの所在もタチャンカから聞いてるわ。知りたい?」

由美子はすっと一枚の封筒を俺の前に差し出して来た。本当に女って怖いんだな…。

「…幾らだ?」

「今日の食事代を出してくれればそれでチャラよ。この中にはティムールくんの住所と航空券が入ってる。私に出来ることはこれだけ。あとはあんたたち次第よ」

「…安いもんだ、好きなだけ飲んで食べれば?本当に由美子っていい奴だよな」

「そ?困ってる人を放って置けないのよ。優、失ってから気づくことは幾らでもあるけれど、失いたくないのなら行動あるのみよ。さ、今日は優のおごりだからたらふく食べてやるわ!」

由美子は細い身体に入るのか分からないくらいの酒と食事を頬張っていた。

 

 

相変わらず俺は誰かに頼らないと行けない性格で、だけれどティムールに会うためには頼らないといけなかった。

俺に度胸がなかったから。

ティムール、早くお前に逢いに行くよ。一週間の猶予が俺には与えらたのだから。

由美子から受け取った封筒を握り締めながら俺は真冬の空を見上げた。濃紺の空はレインボー部隊に居た頃、あいつと見たことのある風景だった。

「ティムール」

ぽつりと漏らした声は白い息と共にすぅっと消えていく。もう少し、もう少しだけ待っていて。

愛してるお前に逢いに行くから。

ティムール、もう少しだけ俺を…。

好きで居てくれないか?

小さく祈りながら俺は歩き始めた。