穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

贈り物と約束を


【贈り物と約束を】

*『もう一度君に逢いに行く』④の続編。日本で同棲を始めたエコーとグラズの話。

 

古い蔵の掃除をしていれば、昔懐かしい一個の時計が出て来た。あぁ、これは爺さんが婆さんに贈った奴だったよなーと小さい頃の記憶を思い出す。

「ティムール、そっちはどうだ?」

「だいぶ片付いたよ、優くんは?」

「俺は随分懐かしい物を見つけた。東京が誇る芸術の都・杉並の芸術大学で講師をしてるティムール先生なら価値が分かるんじゃないのか?」

「どれどれ…」

ティムールに懐中時計を渡せば真剣な眼差しでそれを見つめて吟味していく。あ、俺こいつの横顔も好きだな。

「古いけど状態は良いね、磨けばまだ使える。優くんのお爺様はまだお元気なのか?」

「ん?あぁ、爺さんならまだ元気だよ。婆さんと一緒に箱根っていう温泉が有名な所でのびのび隠居してる」

「そうか、ならこれはお爺様に渡さなくていいの?」

「良いんだよ、その懐中時計はな…」

そう、この懐中時計は俺が小さな頃に爺さんからある約束と共に託されていた。

『これをお前にあげよう、優、お前に大切な人…。そうだな、人生を最期まで歩みたい人が出来た時にこの懐中時計を渡しなさい。これは俺が婆さんに贈った最初で最期の贈り物だよ。指輪なんかよりも価値がある。ただまあ、今は物よりも大切な物を手に入れたからお前にあげよう。優、お前になら出来るさ。自分よりも大切な存在がな』

そうだ、ティムール。

俺にとってお前は何よりもかけがえのない存在で、最期まで共に歩むと決めた大切な奴なんだ。

だからこれをお前に。

俺の『約束』と共に。

「優くん?」

「ティムール、この懐中時計は爺さんが婆さんにプロポーズした時に渡したもので俺はそれを託された。そして俺もお前にこれを託したい。お前と最期まで一緒に居る。俺、本当に捻くれてるし嫉妬深いけどなんだ。お前を愛してるんだ、不器用なりにな。だからお前は一生俺の側にいろ!分かったか?」

「Я также люблю тебя. "Нестле" только ты, только ты любишь больше, чем все остальное. Спасибо за воспитывать меня здесь, спасибо.(俺も君を愛してる。寄り添うのは君だけ、何よりも愛しい君だけ。俺をここまで連れて来てくれてありがとう)」

「…あまり流暢なロシア語話さないでよ、ゆっくりとじゃないとまだ聞き取れないんだからな。ただ、返事は『はい』ってことは分かった。くく、ティムールったら顔赤いんだもん」

「優くんがプロポーズしてくるから悪いんだよ、明日からまた何だか新たな関係が始まりそうだね。俺、君に出逢えて本当に幸せだよ。これからもよろしくお願いします」

「あぁ、宜しくな?俺だけの可愛い嫁さん」

何だかこそばゆい。

だが俺はお前に出逢えて幸せだよ。

ありがとう、大好きなティムール。

…そうだ、新婚旅行は箱根に決まりだな。