穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

リクエスト③

【いつだって臆病な片思い】

リクエストでバンディットとイェーガーの話。少し切ない感じ。


夜、お互いの程よく散らかった部屋に酒を持ってくだらない世間話に花を咲かせるのがここ最近のマイブームだった。

俺は同僚で歳下のマリウスの部屋にお気に入りの酒を持っていって今日あった愉快な出来事を話し始めた。

「最近、エリアスとモニカが良い感じなの知ってるか?さっさとくっ付けば良いのになぁ。マリウスもそう思わないか?」

「人には人のペースがあるだろう?ドミニク、お前の悪戯好きの思考を駆使して二人の仲を邪魔したら俺はお前と絶交する」

「つまんないぜマリウス、お堅いのは頭だけじゃなくて思考もか?仕方ないよな、大好きだったモニカ嬢を親友であるエリアスに取られたんだもんな」

「…俺の勝手な片思いだし、あの二人は両思いだった。たったそれだけのことだ。ドミニク、お前は一体全体何だっていうんだよ。俺の邪魔をして楽しいのかよ?!糞ったれな奴だぜ本当に」

このマリウスさんは激昂すると中々宥めるのが面倒なんだよなぁ。だけど俺はこいつを弄って遊ぶのがやめられない。

怒らせて、忘れさせるのが一番お前のためになるんだから。マリウス、お前は俺にだけ構えばいいんだよ。

「糞ったれで構わないさ、俺はお前が心配なんだよ。同僚として好きだった女を忘れられなくて無理して笑うお前が心配なの。分かるか相棒、俺にとってお前は唯一隣を任せられる奴なんだから元気じゃねぇと困るんだ。悪態ばかりじゃモテないぜ」

「お前が何をしたいかまったくわからねぇんだ。俺を茶化したように見せかけて心配したり、真剣な表情浮かべて見せたり。ドミニク、お前の狙いは何なんだ?」

マリウスは俺が持ってきたウィスキーを一口含み、訝しむような表情で俺を見つめてくる。

「俺の狙い?狙いなんて、考えたことなんかないなぁ。強いて言うなら不幸になりかけてる奴の隙に入り込んで構ってもらうことかな。俺の趣味だよ、楽しい楽しい趣味だ」

「…随分と楽しそうな悪趣味だぜ本当に。ドミニク、俺は別に不幸だなんて思っちゃいねぇ。俺は俺の意思でモニカから手を引いたしエリアスとも変わらない関係を築いてるんだ。これ以上搔きまわすな、お前の悪戯に構ってるほど俺は暇じゃないんだ」

じゃあ、どうして?

じゃあどうしてお前は俺を部屋に入れる事を許した?

誰よりもプライドが高いお前がお前自身の領域に俺が侵入することを許したんだよ。

…随分と矛盾してるじゃないかマリウス。

「…寂しいから俺を部屋に入れて話相手にしてるんだろう?俺をモニカの代わりにして話して楽しいんだろう?そうやってお前自身の隙間を埋めるために俺を利用したくせに説教垂れるんだな、本当にお前は酷い奴だ。マリウス、俺は絶対にお前から離れてやらない。お前がどんなに嫌だと言っても、お前がどれだけ拒否しても辞めてなんかやらないよ。お前を弄ってからかうことをな、ずっとずっと。ずっとずっと辞めてなんかやらない」

「俺に執着するな、お前はただの同僚でそれ以上でもそれ以下でもねぇ…!もういい、二度と俺の前に姿を見せるんじゃねぇ。部屋にも来んなよ、来たらその時はお前を許さない」

「…ははっ、お前は本当に馬鹿な男だぜ。お前を思っている奴の気持ちにも気がつかないなんて駄目だな。また来るよ、今度はもっと度数の高い酒を選んでやるよ。もっと吠えて、俺の前だけで怒ればいい。じゃあな、マリウス」

「二度と来んな」

俺は酒ビンを手に持ってマリウスの部屋を後にする。本当にお前は面白くて弄りがいがあるよ。

退屈凌ぎには丁度いい。

マリウス、俺はまだお前に言ってやらないよ。

俺がお前に執着する本当の理由をな。

今はまだ、その時じゃないのだから