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リクエスト④


【黒は白につけ込む】

リクエストでバンディットとジャッカル。弱みに入り込むバンディット。


「おいあんた、自殺願望でもあるのか?」

「…お前はGSG9の、ドミニク・ブルンスマイヤーか。夜分に不躾だな、人の居住スペースになんの用だよ」

「酷いぜ、あんたの為にとっておきの薬を昔の仲間から買い付けて渡しに来たのにな。ジャッカル、あんたは薬に依存してるよ。これが無いと眠れないと言ったのはあんただ。悪いが部屋にあげてもらうぜ、あんたの大事なお仲間や俺の仲間にこんなやりとり聞かれたくはないだろう?」

「…上がれ、手短に済ませろ」

俺は突然の来訪者を無下にすることが出来ず、たった一人で居るのには充分すぎる領域にこの食えない男を招き入れてしまった。

…こいつは俺を掌握しているのだ、この盗賊の異名を持つこの男の手の上で俺の命は踊らせれているのだ。

 

「ほら、強力な睡眠薬だ。あんたはこれがないと眠れないんだってな。ドク先生も簡単にはくれないわけだ。摂取量を間違えればすぐあんたは大好きなお兄さんの所に逝けるってわけ?は、随分と綺麗な兄弟愛だ。陳腐すぎて反吐が出る」

「…お前に俺と兄さんの何が分かるんだ、唯一俺の家族と言える兄さんを殺された俺の気持ちなんてお前には分からないだろう?俺をここまで突き動かして来たのは全て復讐の為だ。いつも金は払ってるだろう?これ以上の模索はやめてくれ、俺とお前は家族でも無ければ親友でもない。ただの同僚だ、薬を売ってくれる『良い』同僚だ。俺の前から居なくなれ、夜は俺にとって…」

『夜は俺にとって、唯一自分らしくいられる時』

こう言いたかったのに。

気がつけば目の前の男に唇ごと奪われて俺の思考まで見事に停止してしまう。

「んっ…、離せ、離れろっ…!!」

「へぇ、おっさんのくせに可愛い反応だ。これはやっぱりあんたの隙に入り込んでやりたくなる。ジャッカル、俺はあんたの兄さんの代わりになってやれるぜ。抱くのは俺だけど、抱かれるのはあんただ。薬代はあんたの身体でいい、金だって馬鹿にならないだろう」

「…これ以上、俺を侮辱するつもりなら殺してやる。絶対に許さないぞドミニク・ブルンスマイヤー」

「威勢がいいのは夜だけなんだな、はは、まあいい。また来るよ。あんたはどうせ薬を手離せない。永遠にな。今度はもっと身体が気持よくなる薬も一緒に買い付けて来てやる。次会う時はその時だよ、じゃあな」

糞ったれ、今すぐ殺してやりたい。

そんな衝動をぐっと抑え込んで部屋から出て行くドミニク・ブルンスマイヤーの背中を目で追った。

奪われた唇を指でなぞり、背筋に走るぞわぞわっとする感覚に俺は身震いを覚える。

「…眠るか」

買い付けた薬を一錠、ぬるま湯と共に口の中に放り込んで布団の中へ入り込む。

気がつけばあの男は俺の前にいた。

気がつけばあの男は俺の心をぐちゃぐちゃに塗りつぶしていった。

気がつけば支配されていたのは俺の方だったのか。

「…糞ったれ」

微睡んで行く意識の中、悪名高い盗賊の顔を思い浮かべながら瞳を閉じて行く。

あぁ、絶対に俺はお前を許さない。

この俺の心を黒く塗りつぶしていくお前を絶対にな。