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ゲリラ投稿②

【自覚する】

ドクは目の前でお昼ご飯を食べる歳下の同僚のルークに穏やかな視線を向ける。

自身はホットコーヒーを口に含み、次の任務の時に必要な書類に目を通す。ちらちらとご飯を美味しそうに頬張るルークを見て、ドクの口元には自然と笑みが零れ落ちる。

「君は本当に美味しそうに食事をするね、見ていて気持ちが良いよ。食事は三食摂ってるのか?」

ふと疑問に思ったドクはルークの顔を見つめた。ルークは食事の手を止めてブルーの瞳を細めて弧を描いた。

「俺ですか?俺は今独り身で一人暮らしをしているんですが三食自炊はしてないですね。外で済ませたりとか、そんなんばっかりです」

「…独り身なのか?意外だ」

「意外ってなんですか!ははっ、そういうドク先生は奥様居ましたよね?毎日美味しい食事を作って貰えて羨ましいです」

「…いや、私は離婚したばかりで独り身なんだよ。しかも食事は私が三食作っていたからね、こんな性格だ。妻が離婚したがるのも無理はない」

…ドクには妻がいた。

しかし完璧主義を匂わせるドクと相性が合わなかったのだろう、すぐに離婚をしたという。

「それはすいません、嫌なことを思い出させてしまいましたよね。あなたが作る料理を食べれていた奥様が羨ましいと少し思っちゃいました!俺にとってドク先生、あなたは憧れだから」

ルークは少し照れ気味にドクの瞳を見てトレイに残った食事を口に含み始める。

….だから、それは不意打ちって言うんだ。

君は何も分かってないんだね。

「…ルーク、たまに私が料理を作ってあげよう。独り身になってしまったから食べてくれそうなのは君くらいだ。どうだ?今夜のディナー、私が腕を振るって作るけど」

「良いんですか?!そしたら仕事終わったら待ち合わせを!」

「あぁ、エントランスで」

「なんで俺の為に?」

「…気になる相手を落とすなら、胃袋を掴んだ方が早いだろう?覚悟しろよ」

「…そういうことですか」

「あぁ、つまりはそういうことさ」

ドクは冷めたホットコーヒーを口に含んでニッとルークに笑みを向けて食堂を後にする。

一人残されたルークはしばらく経ったのち、顔を真っ赤にさせながら食事をかき込んで水を一気飲みする。

「…わざとだろ、絶対に」

離婚したのも、
毎日行動を共にするのも、
食事に誘ったのも。

全てはそういう意味。

(自覚させる為か?!…まったく、今日の夕飯は楽しみだけど何だか怖いな…)

ルークはトレイを手に持ちながら数分前にこの場を後にした軍医の顔をぼんやりと思い浮かべて顔を赤く熟れさせていった。