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ゲリラ投稿③

【お弁当を忘れたフューズ君の話】


「あ、忘れた」

食堂で鞄を広げて居れば大切な人が作ってくれた昼食のお弁当を家に置いてきたことを思い出す。

朝方まで妻を抱き潰し、朝に弱いフューズは眠気まなこを擦りながら家を出てきた。

(…マクシム、起きてるかな)

スマホを鞄から取り出して、愛しい妻の電話番号をタップして電話をかける。

きっとまだ寝ているに違いない、そう思って電話を切ろうとしたその時だった。

『シュフラットか…?お前、俺が作った弁当忘れてるだろう?今丁度オフィスに顔出しに来たから来れるか?』

「あぁ、済まないな。今そっちに向かう」

『まったくドジな旦那様だ。とりあえず待ってるよ、じゃあな』

「あぁ」

フューズは電話を切り、にやける顔を隠しながらマクシムが待っているオフィスへと向かって行った。

***


「ほら、昼飯!」

「マクシム、ありがとう」

「ったく疲れてる身体に鞭打って作ったんだから忘れるなよ、ドジな旦那様?」

「お前に言われちゃうと何も言い返せないな、あ、マクシム。良かったら昼飯外で食べないか?今日は暖かいから」

「シュフラット!お前昼休み無くなるぞ、タチャンカがまた説教垂れに来るのだけは勘弁…」

「良いんだ良いんだ、俺はある程度自由が許されてるから。マクシム、ほら行くぞ」

「…はぁ、まったく自由すぎるなうちの旦那様は」

フューズはマクシムに手を差し出して繋ぐように促した。マクシムは黙ってフューズの手を取り、彼の後ろについて行く。

 

「美味しそうだ」

「大したもんじゃない。簡単な物だがお前なら喜ぶと思ってな」

暖かな日差しが丁度よく入り込むベンチを見つけて二人は腰を下ろした。

マクシムが届けてくれた弁当箱を開ければ、フューズの表情はきらきらした表情へと変わって行く。

「…オムライス、好きなんだ」

「くくっ、シュフラットは見た目の割に味覚がお子様だもんな。まあ喜んでくれるお前の笑顔は俺も好き」

「外じゃなかったら襲うぞ?」

「いいから黙って食べろ!ほら、口の周りにケチャップ付いてる。きちんと噛めよ、お茶ならある」

「よく出来た妻で俺は嬉しい、幸せ者だ。お茶、貰っていいか?」

「…どうぞ」

マクシムは顔をほんのり赤らめながらフューズにお茶を手渡した。そんなマクシムの顔を見たフューズはマクシムの頭をくしゃりと優しく撫でた。

「幸せっていうのは、美味しいご飯を食べられたり大好きな人が側に居てくれるってこと、改めてわかったよ。マクシム、忙しいのにありがとうな」

「…お前が今朝、弁当忘れて出勤したのはチャンスだと思った。仕事してるお前を見たくて来てよかった。なんだ、1分1秒、お前の隣に居られるならそんな幸せなことはないんだろうな」

「…マクシム、俺の妻になってくれてありがとう。これからもどうか、美味しいご飯を宜しく頼む」

「任せておけ、俺だけにしか出来ないことだろう?シュフラット、夕飯、楽しみにしてろよ」

「任せたよ、ははっ、すごい幸せだ…」

「良かったな」

フューズは大切なマクシムの隣で美味しそうにお昼ご飯を噛み締めていった。

幸せを感じることの出来たフューズが夜、マクシムを泣かせるくらいに抱き潰したのはまた別のお話。