穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

今宵、月明かりの下で

【今宵、月明かりの下で】

*ジャッカルがバックに惚れる話。

 

ふと基地の外を散歩していれば、カナダからこのレインボー部隊にやってきたというセバスティアン・コテ…、通称・バックがベンチにもたれながら月を見上げていた。

ジャッカルはバックの近くまで足を進めてベンチに座るバックに声をかけた。

「…こんな遅くに月をツマミに晩酌か?」

「あんたは確か…」

「ジャッカルだ、バック」

「あぁ、この間来たばかりの。俺に何か用か?生憎、俺は相棒にフラれたばかりでな。一人にして欲しいんだ。こんな真夜中に散歩とはいい趣味だ」

バックは手に持っていた缶ビールを飲みながら月を見上げた。端正で男らしい横顔、彫りの深い顔のパーツたちが月明かりに照らされてより男らしさを引き立てた。

ジャッカルはそんなバックの横顔に見惚れるかのように真っ直ぐと彼を凝視してしまう。バックはそんな視線に気がついたのが、ジャッカルの顔を見つめて口許を緩めた。

「俺の顔を見つめても何も出ないぞ」

「別に何も求めてはいないさ。ただバック、あんたの顔は彫刻のように彫りが深くて美術品のようだな。綺麗だと思って見惚れていたよ」

「…そりゃ男に言う台詞じゃないぞ」

「綺麗と思うことに女も男も関係無いんじゃないのか?俺はスペインの男だ、思ったことは包み隠さず言わせてもらう。あれ、あんたの顔赤いが大丈夫か?」

ジャッカルはスペインの生まれだ。思ったこと、感じたこと。全ては包み隠さず言ってしまう。情熱の血が騒いで仕方ない。

バックはジャッカルの瞳を見つめて可笑しげだと言わんばかりに大笑いし始めた。

「はっ…、酒の所為だぜまったく。俺はずっと好きだった相棒に想いを伝えたらこっ酷くフラれたよ。『貴方をそういう目では見れない』ってな。俺は彼女の背中を守る為にずっとずっと側に居てやりたかったのにっ…!いい歳してヤケ酒とは馬鹿みたいだな、ジャッカル、あんたも無理して俺の隣にいることなんて…」

「…バック、泣きたいなら胸を貸してやる」

「俺は別に…!」

「良いから黙って泣け。顔は見ないで居てやるから」

ジャッカルはバックの腕を掴んで己の腕の中に引き寄せた。ハッと耳元で息を飲む音が聞こえたがそんなのは丸無視で力強く抱き締めた。

 

 

「あんたは何か見返りが欲しくて俺を慰めたのか?」

落ち着いたバックはジャッカルの腕からそっと離れようとする。しかしジャッカルはジャッカルでバックを離そうとはしなかった。

「泣いている奴を放って置くほど冷たくはない。それに俺は情熱の国の出身だ。惚れかけた奴を手に入れる為なら何だってやるさ。言っている意味、お前に分かるか?」

ジャッカルの瞳には何処か優しげな色が浮かんでおり、バックに向けられる声は穏やかだった。

バックは胸に顔を押し当てて、小さな声で呟いた。

「…俺はフラれたばかりだ」

「あぁ、知ってるよ」

「…あんたも男で俺も男だ」

「惚れることに性別なんて関係無いだろう?俺はお前自身に惚れ込んだ。だからバック、失恋して恋した相手を忘れられなくてもいい。俺を見ろ」

「…その情熱を冷ますことは出来るのか?」

「無理なお願いだ」

「…もう負けたよ、俺の負けだよ。ジャッカル、あんたに任せるよ。あんたを信じてやる」

「そりゃ光栄だ。月明かりがまだ綺麗だよ、口直しに飲み直しと行こうか。バック、旨い酒は好きか?」

「…あぁ、好きだぜ」

「なら良いさ、バック、もう月は俺とお前しか照らしていない。いい月明かりだな」

「そうだな」


月明かりの下で穏やかに笑う男の瞳には薄っすらと涙の跡が見え隠れしていた。