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フュカプまとめ。(過去作)

 

1.『青の街、情欲に揺れて』

自分が生まれ育った青の都、サマルカンド。その街が夜になれば青のモスクや建物たちは神秘な一面を見せる反面、背徳的な一面を見せたりすることもある。

観光名所であるこの街の路地裏、或いはその近くは『逢引』の場所にうってつけなのだ。

例えば。
飼い慣らしたいと思うほど生意気な奴を屈服させるのには何が一番かって?

簡単さ。

「口を開けろ、カプカン」
「んっ、嫌だっ、うぁっ…」
「声が漏れる、俺の指を咥えてろ」
「んぐっ、ふぅ…っ、」

俺の生まれ育った故郷の風景をカプカンが見たがっていたから俺はこいつを連れて旅立った。

明るいうちは一緒に街並みを歩き、綺麗な青を見つめては「自分が育ったところは何もなかった」と呟くカプカンを俺は喜ばせたくて仕方なかった。

しかし夜になれば話は変わってくる。欲に飢えた一匹の『狂犬』は形振り構わず外で情欲に瞳を濡らしてきた。

だから俺は今、この生意気な『狂犬』を抱いていた。

「気持ち良いから喘いでいるんだろう?淫乱な身体しやがって」

腰を揺らせば咥えさせている指からは唾液がつーっとしたたり落ちていく。その淫靡な光景を見てしまえば、カプカンの中に押し込めている熱が爆ぜない訳が無いのだ。

「一回出しても良いか?」
「か、勝手にしろっ…、ん、ふ、あっ…」
「歳下の俺に抱き潰されて中に出されるのは屈辱か?お前が可愛いのが悪いんだ。っく、出すぞっ…」
「あ、フュ、フューズのっ、熱っ…」

中に熱を吐き出せば、昂りは治ることを知らずにもっともっとと生意気なこの『狂犬』の中を暴れ回る。

「抜かないぞ、溢れたら勿体無いもんな。…おい、次は何処を弄られたい?お前の口で強請ってみろ」
「っ…、そんなこと…」
「言えるわけないよな?『こんな身体』にしたのは他ならぬ俺だもんな」

俺はこの男を征服して、屈服させたい。

カプカンの弱い所に手を伸ばしながら再び俺は腰を揺らして熱を押し込んでいく。

吐き出された精液と、中の体液が混じり合いながら夜のサマルカンドに濡れた音が響き渡る。

「どこがいいんだ?お口付いてるから言えるよな?」
「あっ、揉まれるの、好きっ…、強くしろ、んっ」
「こんなにいやらしい身体に育てたのは誰だ?…名前を言ってみろ」
「いや、いやだっ…」
「…他ならぬ、俺だろう?『シュフラット』だ。マクシム」

女のような膨らみは無いが、程よく付いた筋肉質の胸を弄りながら攻められるのがこの男は好みのようだ。

「女扱いされて胸を揉まれて、中に出され後も犯される気分はどうだマクシムっ…」
「や、無理だっ、抜いてっ…」
「『抜いて』か。だったら何でこんなに締め付けるんだ…っ、お前は女扱いされて喜んでる淫乱な奴なんだよっ、く、出すぞ、マクシムっ…」
「は、孕んじゃうからっ、シュフラット、駄目だっ…、あぁっ…」
「…本当に孕んでしまえばいいのになっ…」

嫌がるカプカンを押さえつけて、黙らせる為に唇を強引に奪えば2度目の熱を中で吐き出した。

 

「…ごめん」
「許さんぞ、フューズ」
「だから、悪かった」
「…っ、悪いと思うなら…中で出すな」
「お前から誘ったんだろう?」
「五月蝿い、黙れっ…!」

夜の街で身体を重ねあった後、ぐったりとしてしまったカプカンを宿泊していたモーテルまで運んでいった。

「久しぶりに火がついたんだ、お前を見ていたら情欲の炎がな…」
「だからって街の、あんな路地裏でっ…!!」
「女扱いされて喜んでいただろう、違うのか?」

少しの間が空いてしまう。

そしてカプカンは顔を赤くしながら俯いていた。

「俺を女扱いしていいのはお前だけだ、フューズ」
「当たり前だ、俺以外の前でいやらしい顔してみろ。嫌だと乞うまでお前を抱き潰す」
「っ…」
「真っ赤になるな、俺だって恥ずかしいんだ。それだけお前が好きなんだよ」
「あ、あんなに俺を酷く抱いておきながら優しくするのはズルすぎる」
「こんな俺は嫌いか?お前を支配したいと思いつつ、優しくもしたいんだ。カプカン、俺はお前を独り占めしたい。誰にも晒したくない。…だから嫌いになんかなるなっ…!」

酷く抱いたくせに、結局はこの男が好きで好きで仕方ない。手を伸ばし、抱き締めてしまえばシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。

「…嫌いだったらお前を受け入れはしない。女扱いされようが手酷く犯されようがお前は俺が好きなんだろう、シュフラット」
「…あ、あぁ」
「だったらそれだけで十分だ」

カプカンは俺の肩に顔を埋めてため息をついてくる。

「俺だって、お前を思っているから抱かれているんだからな。忘れるなよ、ばーか」
「…キス、したい…」
「甘え下手」
「お互いさまだろ、マクシム」

苦しいくらいに好きだから。
切ないくらいに愛してる。

だから今日も明日も。
お前を独占したいんだ…。

柔らかな口付けの片隅、モーテルの外に広がるのは青の街の夜景だった。

 

2.【餓えた愛、優しさと】


夜は長い。
それも冬の寒い夜はもっともっと長い。

空調の壊れてしまったシュフラット・ケシバイエフの部屋には僅かなルームライトだけがベッドに沈む二人を淡く照らしていた。


「んっ…、気持ちいいよ、マクシム…」

ベッドに腰を落としているシュフラットの昂りを必死に咥え込むのは同僚であるマクシム・バスーダだ。

鋭い眼光も、
威圧的な雰囲気も、全てシュフラットの前では意味を成さない。

「何処でこんな舌遣いを覚えたのか?…子どものとき、売春を重ねていた夜に覚えさせられたのか?」

ふるふると首を縦に振るマクシムを見たシュフラットはより一層、自身の熱をマクシムの喉奥に突っ込んでいく。

「こうして喉奥を犯される気分はどうだ?…俺が好きなのだろう、マクシム…」

頭を撫でながらマクシムの頭を掴んで何度も何度も喉奥に熱を押し込んでいく。

舌が這う感覚、
そして生理的に、精神的に涙を浮かべるマクシムにシュフラットは興奮を覚える。

「一回出してもいい?…それとも、飲んでくれる?」

その言葉に頷きながらマクシムはシュフラットの昂りを締め付けるように口の中で舐め上げていく。

「気持ち良いよ、マクシム」

優しい声音で囁いてやれば、ぴくりと身体を震わせて涙目を浮かべた状態で上目遣い。

…これは腰にクるな…


「っ…ちゃんと飲めたら良いことしてあげるから。マクシム、出すよっ…!んっ、くっ…!」

こく、こくっと喉が動かして吐き出された精液を飲み干していくマクシムは昂りから口を離せば、口を拭いながらシュフラットを睨みつける。

「…子どもの時の話はやめろ」

「どうして?」

「シュフラット、お前が一番分かるだろう?嫌な夜を思い出せば、それは俺にとって苦痛になると。何度もお前には話しているだろう…」

「…優しさを知らないんだろう、飲み干してくれたご褒美に抱いてやる。尻を突き出せ」

「嫌だ、絶対に…」

「マクシム、お前に拒否権はない」

ベッドにマクシムを沈めてしまえば、あとはシュフラットの思うがまま。

抵抗、そして拒否なんて出来るはずが今のマクシムに出来るはずがないのだ。


「悪いけど、このまま挿れる。…慣らさない方が好きだろう?」

「やっ、やだっ…」

「マクシム、俺が教え込んでやるから」

先ほど精を吐き出したばかりのシュフラットの昂りは再び硬度を取り戻しており、マクシムの中に押し込んでいく。

「痛いっ、…やだ、やめてくれっ…」

「生きているから痛いんだ、…あぁ、お前の中ぬるぬるだな。マクシム、売春していた時は後ろも使っていたのか?ん?」

腰を揺らしながらシュフラットはマクシムの耳許で囁いた。

涙を浮かべながらマクシムは苦しそうに呟く。

「…生きて行くためには仕方がなかったんだっ…、痛いっ、やめてくれよ、シュフラットっ…!!」

「お前より先に産まれていて、お前に早く出会えていれば辛い目に遭わなかったのにな。なぁ、マクシム…」

シュフラットはマクシムの涙を指で拭いながら彼の瞳の横に口付けを落とした。

「…幾らで買われた?」

「は…?」

「だから、お前の後ろは幾らで買われたんだ」

マクシムは唖然とした顔でシュフラットを見つめながら唇を噛み締めた。

「…一万円、だ…」

「安いな。なぁ、マクシム…」

シュフラットはマクシムを強く抱き締めながら彼の中で自身の熱をゆっくりと動かして行く。

「お前、俺の恋人になれ。…マクシム、お前が買われた時の額よりも高い金を俺は出してやれる。それくらい俺はお前を愛してるんだ…」

「…愛なんて、信じないっ…」

「何で」

「…犯して、満足すれば捨てるんだろう?!絶対に俺は信じないっ、俺なんかを、『俺自身』を好きじゃないくせにっ…!」

「マクシム」

シュフラットはマクシムの唇に貪るような口付けを施した。まるで荒々しく、そして自身の所有物だと言わんばかりに。


「…お前自身を好きで、そして愛している俺の気持ちを否定する権利なんてお前にはない。…マクシム、お前を愛してる。だから俺はお前が泣いて『いやだ』と乞うたとしても俺はお前を抱くから」

そう言うと、シュフラットはマクシムの膝裏を掴み、グイッと左右に押し広げた。

腰をさらに打ちつけてしまえば、苦しそうな声から甘いくぐもった声へと変わっていく。

「痛っ、、んっ、や、やだっ…、助けてっ…」

「嫌だって言いながら、ちゃんと反応してるじゃないか。一緒に触りながら奥を突いてあげるから」

反応するカプカンの昂りを握りながら腰を打ちつけていくシュフラットはマクシムの顔を見つめながら快感を与えていく。

「んっ、駄目だっ…、おかしくなる、一緒に触られるの無理だから、」

「いいよ、どんどんおかしくなって俺に抱かれる温もりを記憶しろ。今ここで、お前が一番嫌いな『自分自身』を抱いている男を好きになれ」

「んっ、や、あっ…!」

「マクシム、愛してる。…俺は今ここにいるお前が好きだっ…、そんなに締めつけるなって…」

 

「中に、出しちゃうだろう?」

「もうっ、好きにしろっ…、シュフラットっ…、もう、無理っ…だからっ…!」

「あぁ、じゃあ遠慮なく」

シュフラットはマクシムの昂りを扱きながら、締め付ける彼の中に熱を注いでいく。

「あっ、あっ…、中に…っ…」

「お前も限界そうだよな。…良いよ、出せ」

「くっ、う、ぁっ…!!」


シュフラットの手の中にはマクシムの精液がたっぷりと吐き出されていく。

その姿を満足そうに見つめてシュフラットは愛しそうに、そして宝物のようにマクシムの唇にキスをした。

 

 

「金は受け取らんぞ」

「…何で」

「もう売春なんてしてないからな」

「さっきのお前は可愛かった」

「…っ、シュフラット!お前、男相手に可愛いとかありえないだろう」

「本当のことだろう」

「…寒いな、お前の部屋」

マクシムは空調の悪いシュフラットの部屋を見つめながらため息をついた。

「だったら俺の腕の中に来い」

「っ…、最悪だ」

身体が冷えてしまったマクシムの身体を温めるように、シュフラットは彼を抱き寄せた。

 

「寒くないか?」

「大丈夫だ!俺を女扱いするんじゃない!」

「…あんなに可愛い声で啼いていたのに、そんな強がるなって」

「五月蝿い」

「マクシム」

「何だよ」

「愛してる。…これから俺がお前に愛を教えてやるから、お前は一人じゃない」

「っ…、勝手にしろよ」

「あぁ、勝手にする」

愛に餓えた一匹の狂犬は、
優しい一人の男に飼い慣らされていくのだった。

 

3.【永遠の愛、愛しさと】


「おいシュフラット」

「何だ?」

「…起きたら薬指に嵌っていたんだが、これお前だろう?」

マクシムは寝起きのためか、不機嫌そうに瞳を細めていく。

「あぁ、今日はクリスマスだからな」

シュフラットは寝起きのマクシムの頭を撫でながら彼の薬指に嵌っているプラチナのリングを見つめた。

部屋の外、あたり一面が銀世界に包まれている。

クリスマスを祝うのにはうってつけの日だ。

「クリスマスね。…これ、高かったんじゃないのか」

プラチナの指輪は厳かな輝きをマクシムの指から放っていた。

「いや、お前のために使う金はいくらでもあるから気にするな。…嫌だったか?」

「俺はこういう事されるの慣れていないから、『嬉しい』とか『嫌』とかの基準が分からないんだ。でもシュフラット…」

輝くプラチナを見つめたマクシムは傍らに腰を落とすシュフラットの肩に頬を寄せた。

「何だかお前がくれた物だと思うと、金以上に価値があると思える。宝物にしたいな、こんなに綺麗な物は俺に相応しいか分からないけど」

最近、マクシムは良い意味で前向きになって来たとシュフラットは感じていた。

「…なぁ、マクシム」

「何だ?」

「…俺に対しての気持ちがなくなったり、生活が苦しくなったら売っていい。だけど、俺はお前を一生離すつもりはないから」

シュフラットはマクシムの顔を撫でながら優しく微笑んでいた。

その顔を見たマクシムはシュフラットの唇にゆっくりと唇を這わせていった。

 

「…え…」

「俺は小さな頃から愛なんて知らなかった。だけどシュフラット、お前が永遠を賭けて教えてくれるんだろう?…だったら俺もそれに答えてやる」

思いが通じ合って初めてマクシムから唇を重ねて来たのだ。

「…お前からキスしてくれるなんて思わなかった」

「俺の精一杯だ、黙って受け取っておけ」

「最高の贈り物だ、一生大切にするよ。マクシム」


あたり一面の銀世界。

その世界は愛を知らない男と、その男を愛する一人の男を優しく照らしていった。

 

4.【孤高の男、一夜の愛を統べる者】


窓の外、月明かりが二人の男の身体を淡く照らしていた。

一人の男はベッドに沈められ、
もう一人の男はベッドに沈めた男を無表情で見下ろしていた。

「俺より歳上なのに、金で買われた気分はどうですか?…マクシム殿?」

「貴様っ…、俺にこんなことをしてただで済むと思っているのか?!俺にはっ…」

「『俺には?』…あなたは勘違いをされているようだ。マクシム殿、あなたは俺よりもずっと下の立場なのを忘れたのか?残念ながらあなたは俺の『愛玩犬』だ」

唇を噛み締めるマクシム。

悔しそうな目つきを向ける彼を押し倒す男はシュフラット。マクシムより歳下ながら、地位も名誉も財も、彼より格上なのだ。

「シュフラット、貴様は俺を一夜限り、金で買って満足なのだろう?ふん、俺を見くびるんじゃない。この『狂犬・マクシム』が簡単に抱かれると思うなよ」

「っ…は、勘違いも甚だしい。俺はあなたが『助けて欲しい』と乞うたからあなたを金で買ったんだ。没落した軍人崩れの実家を救いたいと懇願して来たのは誰だ?…他ならぬマクシム、貴殿だ」

シュフラットは軍用手袋を身に付けた手でマクシムの顔に指をゆっくりと這わせていく。

粟立つ感覚と、シュフラットの指の体温にマクシムは苛立ちを露わにして声を荒げた。

「簡単に抱かれてたまるか、貴様に抱かれるくらいなら死んだ方がマシだっ…!金だけは貰うぞ、シュフラット殿、貴様の地位も名誉もっ…」

『ここまでだ』、と言いたかったのに。シュフラットはマクシムの唇を無理矢理塞いで強引に舌を押し込んでいく。

「んっ、やめっ…、んぅっ…」

舌を絡める音、
熱い吐息、
そしてシュフラットの手はマクシムの下腹部に伸びて行く。

口を塞がれながら揉まれる性器はほんのりと、軍服のズボンから分かるくらいに大きくなっていく。

(…狂犬のくせに、身体は正直じゃないか。ふん、可愛い奴め)

唇を離せば唾液が唇の横から伝って落ちていく。ほんのりと赤くなるマクシムの頬をシュフラットは満足気に見つめて囁いた。

「やはり口では吠えていても、身体は正直じゃないか。マクシム殿、膨れ上がった性器は自分で慰められるのか?」

「…あんた、頭おかしいんじゃないのか?」

「金を払おう、マクシム殿。あなたのそれを…」

「な、何をするつもりだ?やめろっ…!!」

「この俺が金を払って舐めると言っているんだ。余計なことを言わない方が家族の為、自分の為になるんじゃないのか?」

「このくそったれっ…!!」

「いくらでも吠えろ」

マクシムのズボンに手をかければ一気に下着ごとずり下ろす。現れた性器はゆるりと立ち上がっており、先端からは先走りの蜜が垂れていた。

「…可愛いな」

「貴様っ…、噛み殺すっ…!!」

「悪態ついている暇があるなら、抵抗の一つでもするんだな。淫乱な身体だ」

シュフラットは問答無用でマクシムの性器を口に含めて咥え込む。マクシムは咥えられた快楽に身震いする。

「やめっ…!あ、あぁっ…」

じゅるじゅるっと啜るようにシュフラットが咥えて舐めれば、その音と快楽にマクシムは涙を浮かべてしまう。

先走りと、マクシムの味がいやらしく口の中に広がっていく高揚感をシュフラットは覚えていく。

シュフラットの口の中、大きくなるマクシムの性器を手で扱きながら舐め上げて行けば、マクシムは口から甘い嬌声を漏らしていく。

「無理っ、やめ、出るっ…、出るからっ…!!」

「飲んでやるよ、マクシム殿」

「あぁっ、うっ、あぁっ…んぅ」

身震いを二度、三度としながらシュフラットの口内にマクシムは精を吐き出していく。

こくりと飲み干していくシュフラットは口を拭いながら、ベッドサイドにある潤滑油に手を伸ばす。

「可愛い顔してるな、『狂犬』の異名が台無しだ」

「っ…くそ、くそっ…!!」

「マクシム殿、俺を受け入れてくれるよな?いくらでも良い、あなたを抱きたい。…痛いかも知れないが我慢して」

「はっ…?!」

シュフラットは自身の性器とマクシムの入り口に潤滑油をたっぷりと塗りたくり、ぐっと入り口に押し当てた。

「ひっ……?!な、何っ…」

「俺のを食べて。…マクシム、あなたの中に…」

「無理っ…、痛いっ…!!嫌だぁっっ…!うぁ、んっ…」

解していない状態で、無理矢理シュフラットはマクシムの中に性器を押し込んでいく。

マクシムの瞳からは涙、
そして彼の入り口から血がぽたりと垂れて来てしまう。

「あぁ、血が出ているな。処女だったか。…責任は取ろう、料金は上乗せだ」

瞳に涙を浮かべるマクシムの顔を優しく撫でながらシュフラットは彼を見つめた。

「っ、ぐすっ…、痛い、もう嫌だっ…、金なんて要らない、俺を殺せっ…」

涙を浮かべながら乞うマクシムにシュフラットは顔には出さないが、『興奮』を覚えていく。

「こんなに可愛いマクシム、あなたを殺さないよ。あなたはお金を積めば何でもしてくれる、そんな話が流れていたから俺はあなたを抱いている。…もしかして『本番』は初めてなのか?」

少しずつ腰を揺らせば、潤滑油の音と体内から漏れ出る体液が混じる水音が静かな部屋に響き渡る。

「…っ、俺は誰にも抱かれたことなどない!金を受け取っても、前戯までだっ…、くそ!くそっ…!!」

「マクシム、貴殿は『狂犬』の異名を持つ癖にこんなにも可愛い身体をしているんだな。中が凄いよ。ぎゅうぎゅう締め付けてくる、こんな気持ちの良いセックスは久しぶりだ。…もっと動いていいか」

涙を流す鋭い瞳の瞼の下、シュフラットは口付けを施しながら腰を先ほどよりも早く動かしていく。

打ち付けられるシュフラットの性器は熱と確かな硬度を保っており、マクシムは苦しげな表情を浮かべている。

「んっ!あ、はっ、んっ…、苦しっ…」

「そんな表情を見せるんじゃない、俺を何処まで苦しめるつもりなんだ?もっと虐めたくなる」

シュフラットはマクシムの軍服の上着のファスナーを一気に下ろしていく。

露わになるのは綺麗に割れた腹筋と、二つのピンク色の突起物だ。

「マクシム殿、あなたの身体は本当にこうそそる部位が多いな。乳首立ってるぞ?」

「ひゃっ…、んっ、見るんじゃないっ…」

「中をぐちゃぐちゃにされながら触られるの、あなたは好きそうだよな。可愛い乳首だ」

シュフラットは腰を先ほどよりも強く押し進めながらマクシムの乳首を指で摘んで押し潰す。

「だっ、めっ…!やだっ…、あんっ、乳首、駄目だからっ…!!」

「っ…おいおい、マクシム殿。嫌なら嫌らしく、そんな艶っぽい顔をするんじゃない。すごい締め付けてるぞ」

「もう、身体が言うこと聞いてくれないからぁっ…、うぁっ、んっ、うぅっ…」

「やはりあなたは最高だ。金はいくらでも出す。俺のものになってくれっ…」

「っ…!!ふぁっ、ん、あっ…」

「ずっとマクシム殿、あなたを見ていた。没落した家を助ける為に奔走する貴殿が俺はっ…」

シュフラットは無意識にマクシムに対しての思いを口にしていた。本当にそれは無意識な想いの丈だった。

(…あんたは、あんたは俺をどうしたいんだ?!もう、何もかも、どうでも良い…)

シュフラットの無意識な言葉と、与えられる快楽にマクシムの心と身体はもう溶けてしまいそうだった。

無理矢理犯すように挿れられた熱も、与えられた言葉や快楽も。

全部全部、自分にしか向いていないのだから…。

マクシムはそっとシュフラットの顔を引き寄せて、自ら彼の唇に口付けを施していく。

「っ…、マクシム殿…っ!」

「ん、っ…うぅっ…、ふぁっ…」

「あなたの熱も、俺自身の熱ももう我慢の限界のようだっ…、本当にあなたって人はっ…!!」

お互いの唇を貪るように、激しい口付けを交わしながらシュフラットはマクシムの性器を扱いていく。

そして。

「あなたの中に出させて。…俺はマクシム殿、貴殿を愛してるっ…、金なら出すから俺を…」

『受け止めて』

小さくその声は空に消えていった。

「俺もっ…、も、もうイクからぁぁっ…!!」


そしてまた、シュフラットとマクシムは同時に果てていきマクシムの中にはシュフラットの熱がじわりと広がっていった。

 

 


「マクシム、こちらを見てはくれないのか」

「貴様っ…!俺を何処まで馬鹿にすれば気が済むのだ、こんな屈辱は生まれて初めてだ!」

「あなたが可愛いのが悪い。ほら、約束の金だ。これだけあれば貴殿の家族は生活が出来るだろう?」

あんなに暗かった部屋には太陽の光が照り始めていた。一夜の繋がりが浮き彫りになるかのように部屋を明るく照らし始めていく。

「っ…、こんなには…」

「俺はマクシム殿をずっと見ていた。あなたは俺よりも歳上で、成り上がりのくせに強くて。俺はそんな貴殿を金を出してでも我が物にしたかった」

渡した金を仕舞う様に促したシュフラットは静かに微笑んだ。その笑みは普段軍を統率する者の表情ではなく、一人の『孤独な男』の笑みだった。

限りなく不器用な男に抱かれたマクシムは懐に金を仕舞えば、シュフラットの広い背中に腕を回していく。

「貴様は孤独な男なのか?」

「あぁ、そうだな」

「俺もある意味孤独だよ、愛を知らない」

「…貴殿を無理矢理犯してしまうほど、俺はマクシム、あなたを愛しているよ。…それじゃ駄目なのか」

抱き締め返してくるシュフラットの体温がいつの間にか、マクシムの心にまで侵入を許していた。

「一夜限りの繋がりなど、信じられると思うのか。俺の初めてを奪った責任、どうとってくれるんだ?」

「…金以外?」

「金はもう、充分だ…」

「…貴殿を、マクシム殿を愛することを赦して欲しい。『責任』なんかじゃない。これは本当の俺の想いだ、一夜限りじゃない。永久的にあなたを愛する」

「それが貴様なりの責任の取り方なのか?」

「…そうだな」

「俺は愛を知らない。人を愛することも、愛されることもしてこなかったからな。だけどシュフラット、貴様がそれを教え込んでくれるのなら…」

マクシムはそっとシュフラットの頬に顔を寄せて、囁いた。

「貴様の愛に答えてやる。一夜限りの繋がりじゃない、『本物の愛』って奴を俺に教え込め」

シュフラットはそっとマクシムの唇に、自身の薄い唇を重ねてマクシムの熱を堪能する。

 

唇を離せば満足げに微笑む一人の男がいた。

「ようやく、あなたを俺のものにすることが出来た。マクシム殿、貴殿を永遠に。…愛し続ける」

愛を知らない男は、孤高の男の寵愛を受ける永遠を約束されたのだった。

…完…

 

5.『罪と罰

 

真夜中の静寂、背中越しに伝わるのは一人の男の嗚咽だった。

「ごめん、ごめんなっ…」

普段どんなことにも動じない彼が、泣いて詫びる様子を抱き締められた男は背中越しに感じていた。

「…フューズ、泣くんじゃない」

抱き締められている男、カプカンは背中越しで涙を流す男の手を握りながら囁いた。

とある任務のさい、カプカンは敵地にて性的暴行を長時間に渡って受けていた。

普段のカプカンなら、敵をすぐにでも殺せたはずだった。

彼が長時間に渡って凌辱に耐えたのは他ならぬフューズの為だった。

「俺が黙っていればフューズ、お前の命は助けてやると言われた。だから俺は黙って屈辱に耐えていたんだ。…お前は悪くない」

淡々と話すカプカンの感情は何処か空虚のままだった。

…まるで、心此処に在らず。

「俺は傷ついて戻って来たお前に対して、抱き締めてやることしか出来ない。救ってやれなかった罪は重すぎる」

フューズは強く強くカプカンを抱き締めながら、声を震わせる。

「…だったら、今のお前に俺は重すぎる?知らない男たちに強姦された俺は汚い。汚物みたいな物だ。居なくなるよ、お前の前から」

カプカンはフューズの腕の中から離れようとする。

しかしフューズは離れようとするカプカンを逃さないようにさらに抱きしめる腕に力を込める。

「俺はお前を責めてなどいないんだ、カプカン、俺は俺自身に罪がある。お前を救えなかった罪だ。だから…」

…背中越しにフューズは顔を俯かせながら小さく呟いた。

「カプカン、お願いだから簡単に『居なくなる』とか言わないでくれ。お前が居なくなったら俺は…」

「…俺が居なくなったら?」

カプカンはフューズの腕の中で身動ぎながら涙で汚れた彼の顔を見つめる。

「お前が居なくなったら俺には…、これからの未来が耐えられない。カプカン、いくらお前が汚れてしまったとしても。俺にとってのお前はただ一人なんだっ…、だから、簡単に居なくなるとか言わないでくれっ…」

「ははっ、男前なお前の顔、酷いぞ?」

「だったら、泣いてるカプカン、お前の顔も酷い…」

「俺は泣いてなんか…」

フューズの腕の中でカプカンは無意識に涙を流していた。

 

「泣いてるよ、苦しかったから泣いてるんじゃないのか?…俺の前では泣いていい。…ずっと俺が側にいる、絶対に裏切らない。誓うから…」

涙を流すカプカンを見つめてフューズは優しい声音で呟いた。

カプカンは涙で汚れた顔をフューズの胸に押し付けながら声を震わせた。

「…本当は、本当は怖かった!苦しかった、逃げたかった…、もう、死んでもいいと思うほど辛かった…、だけどフューズ、お前を守れるなら自己犠牲すら厭わなかった。…俺はお前が好きなんだ、だから守りたかった…っ」

「…もう、誰にもお前を触れさない。カプカン、俺はお前を背負って行くよ。決して罪の意識とか、罰とか、そんなんじゃなくて…」

手を握りながらフューズはカプカンに優しく口付けた。

 

「大切な人なんだ、お前が誰よりも…」

もう、強がらなくていい。

お前が抱えた苦しみは俺も背負っていくから。


「フューズ、ありがとう…」

カプカンは儚い笑みを小さく浮かべてフューズの口付けを受け入れていく。

大切な人を救えなかった男はようやく一つの答えを導き出すことが出来たのだ。

 

 

 

(…最期まで、俺はマクシム、お前を愛し抜くから…)

〜完〜

 

 

6.『俺の妻を紹介します』

 

「お、フューズ〜、お前新婚だったよな?奥さん可愛いんだろ、会わせろよ?!」

「タチャンカ、俺の妻はシャイなんだ。まったく夫婦水入らずで過ごしたかったのに何で今日遊びに来たんだよ」

レインボー部隊の共同宿舎には、単身向けの部屋とファミリー向けの部屋があった。

最近、ファミリー向けの部屋に移ったフューズの薬指には結婚指輪が煌めいていた。

周りの女性陣や、同じスペツナズから召集されていた仲間たちですらフューズの妻を見たことが無いのだ。

タチャンカはスペツナズで自身が一番歳上なのをいい事に、結婚したばかりのフューズ夫妻の観察に訪れていた。

「お前と俺の付き合いだろ?なぁ、会わせてくれよ〜、お前の奥さん見たら帰るからさ」

タチャンカは一度決めたことを中々覆すことはせず、しつこく問い続けるのだ。

フューズはやれやれといった顔を浮かべて、席を立つ。

「ちょっとだけ待ってくれ。…妻を呼ぶから」

「おう!ありがとうな〜」

席を立ったフューズはリビングから出ていく。

タチャンカは内心、大そう美人な人が彼の妻なのだろうと期待を込めて待っていた。

(…フューズは無駄に男前だから美人な奥さんに違いない。あー、酒が進むぜー?)

晩酌していたウォッカがもっと美味く感じるに違いないと、タチャンカは考えていた。

「待たせたな、俺の妻を紹介する。…ほら、タチャンカも知ってるだろう?俺の妻だ」

「あ、初めまして…って、えぇっ…?!」

タチャンカはフューズが部屋から連れて来た彼の妻の姿を見て固まってしまう。

…誰よりもその相手を知って居たからだ。

長身にガッシリとした肉付き、
そして鋭い目付きと深い緑色の瞳。

「カ、カプカンだよな…?!」

「…タチャンカ、俺がフューズの妻で何か問題でも有るのか?俺たちは立派な夫婦だ。結婚届けも有るぞ、まったく。新婚なんだ、邪魔をしに来たのなら帰れ」

「こら、マクシム。タチャンカは客人なんだから睨むんじゃない。今、ちょうど洗濯物にアイロンかけていた所に声をかけたから不機嫌なだけだ。タチャンカ、満足か?」

二人の薬指には同じデザインの結婚指輪がはまっていたのを自身の目で確認したタチャンカは、妙に納得したような顔をして席から立ち上がる。

「いやー、ごめん。邪魔をしたな。俺帰るわ、フューズにカプカン、お前ら明日非番だからって盛り上がるなよ?じゃあな」

「あ、あぁ。またな」

部屋から出ていくタチャンカを見送るフューズを、カプカンは少しだけ鋭い視線で見つめていた。

 


「マクシム、ごめんな」

「謝るなよ、シュフラット」

二人きりになった部屋のリビング、ソファーに二人は並んで座る。

「俺たちが夫婦なの、誰も知らないのか?もう、部隊の奴らに言ってもいいと思うんだが…」

フューズはエプロン姿のカプカンの手に自身の手を重ねながら呟いた。

重ねられた手を握り返しながらカプカンは少しだけ小さな声で囁く。

「…嫌だ」

「何でだ、理由があるなら…」

「かっこいいお前を他の奴に紹介する必要なんてないだろう?!…俺の旦那さんだろ、違うのか?!」

…まったく、うちの奥さんって可愛いよね。

顔を真っ赤にするカプカンを、フューズはたまらなく嬉しそうな顔で見つめてしまう。

「マクシム、こっち向いて?」

「嫌だ、見られたくない」

「可愛い顔を見せてくれないと悪戯しちゃうよ、いいのか?」

「っ…、やれるもんならっ…!」

「マクシム、好き、愛してるよ」

振り向いたカプカンにフューズはちゅっと優しくキスをする。

端正な顔と、
穏やかな瞳、
そして優しい視線が宙でぶつかり合う。

「んっ…、あ、ふっ…」

舌を押し込まれたカプカンはフューズの舌に自身の舌を絡めながら夫からの熱烈な口付けを堪能する。


唇を離したフューズはカプカンの身体をぎゅっと抱き締めて耳元で囁いた。

「…あぁ、やっぱり俺の奥さんは可愛い。マクシム、寝室に行かないか?俺さ、お前をすごい抱きたくて仕方ないんだが…」

「ば、馬鹿じゃないのかっ…?!」

「俺たち夫婦だろ?…もしかして、恥ずかしいのか?くくっ、夫婦になる前だっていっぱいお前と身体を重ねていたのにな」

「気持ちが何か違うんだ!」

「恋人から夫婦になったからか?」

「…察しろよ」

「そう言えば新婚初夜じゃないか?…マクシム、寝室に行こう。我慢できないんだ、可愛いお前を見たらさ」

「っ…もう、好きにしろっ…」

「うん、好きにする」

手を取り合った新婚の夫婦である二人は少しだけ恥ずかしそうに顔を見合わせて寝室へと歩いていく。

握り合った互いの手には愛を誓った煌めきがキラキラと輝いていた。

 

 

 

 

*おまけ*
『新婚初夜』


広い背中に腕を回しながら、覆い被さってくる熱をマクシムは必死に受け止めていた。

「あっ…、シュフラットっ…、それ小さくしろよっ…」

「無理なお願いは却下だよ、可愛い奥さん。…締め付けをやめてくれたら考えてやるっ…」

「うっ、うぅ…、んっ、それは無理っ…」

シュフラットの熱を飲み込むマクシムは彼の昂りの大きさに戸惑いを覚えていた。

夫婦になる前、恋人同士だった時よりも大きさや質量が増して受け入れるのが大変なのだ。

「…何を考えていた?」

「夫であるお前のことっ…」

「…ふっ、そうか。それは旦那冥利に尽きるな。マクシム、気持ち良いのか?すごい濡れてるじゃないか」

「やんっ…、うぅっ、言わないでっ…」

「俺のを美味しそうに飲み込んでるのが良く見えるよ。ほら、分かる?」

シュフラットはわざと濡れていることを分からせるように腰を激しく揺らしていく。

突かれる動きに同調するかのように、互いの性器が交わる水音が部屋に響き渡る。

「シュ、シュフラットっ…、そんな激しくしたら、駄目だからっ…」

「何が駄目なのかな、奥さま?」

少しだけ意地悪な笑みを浮かべるシュフラットの表情にマクシムはめっぽう弱いのだ。

「い、言いたくないっ…、うあっ…、んっ…」

「言わないとイかせてあげないよ?マクシム、ほら、可愛いお口で言えるよな?」

「〜〜っ…!そ、そんなに激しくされたら出ちゃうからぁっ…!」

「何が出ちゃうんだ?」

「もう、無理だって…、んっ、あぁっ…!」

「マクシム、キスしてもいい?…キスしながらイかせてやるよ。ほら、おいで?」

「うっ…、んっ…」

シュフラットの言葉攻めと、
愛しいと思う気持ち、
そして与えられる快楽にマクシムは限界を迎えそうだった。

舌と舌が絡めながら、ぎゅうっとマクシムはシュフラットに抱きついて彼を再び締め付ける。

「はっ、すごい気持ちいいよっ…、マクシム、好きだ、俺と結婚してくれてありがとうっ…」

「やっ、そんなこと言われたら、も、イっちゃうからぁっ…、あ、あっ…!」

「お前の中に出すから…、子ども産んでくれっ…、ん、あっ…」

シュフラットがマクシムの中で果てるのと同時に、マクシムも大量に吐き出した。

 

「あっ、あっ…、シュフラットの、あったかい…」

「すごい出したな、マクシム…、これ潮じゃないか…」

「だから、だから言ったじゃないかっ…、激しくされたら出ちゃうって…!」

「今までのセックスで一番気持ち良かったよ、可愛い奥さん見れて満足。…いや、まだ足りないな。マクシム、もう一回しよう。非番だから良いよな?」

「ちょっ…、一回抜けって…、はぁ、んっ…」

「簡単には寝かさない、愛してるよ、俺だけの奥さま?」

「んっ…、俺も…」

『俺も愛してるよ、シュフラット』

言葉は唇を奪われて紡ぐことは出来なかったがきっとシュフラットには伝わっているだろう。

二人の熱い新婚初夜はまだまだ終わりを迎えることはない。

愛し合う二人の寝室には熱い吐息と、甘い声だけが響いていた。

 

7.【俺の可愛い奥さま】


汗ばむ身体を重ねながら、結婚したばかりの新妻をシュフラットは愛しそうに掻き抱いた。

「マクシム、可愛い」

「んっ…?うっ…ん…」

「顔を見せてくれないか?…マクシム、キスしたい」

「…あっ、うっ…ん…」

「好きだよ、マクシム。大好きだ…」

シュフラットはマクシムの顔に手を伸ばしながら優しく微笑んだ。

唇を重ねながらシュフラットはマクシムの頬に触れて行く。

触れてくる指の体温も、
温かな彼の舌も、
柔らかい笑顔も。

全部、結婚してからより一層、愛しく感じるようになったのだ。

「ふっ、んぁっ…」

柔らかな舌を絡めながら、シュフラッとはマクシムの中でゆっくりと腰を動かして行く。

舌の触れ合う感覚と与えられる快楽にマクシムは身体を震わせた。

身体を重ねることは結婚してから何回もあった。しかし、毎回重ねる度にシュフラットはマクシムの見せてくれる表情を愛しく思った。

「あっ、シュ、シュフラット…」

「うん、どうした?」

「お、俺…、お前が好きっ、大好きだっ…」

顔を真っ赤にする新妻を、シュフラットは愛しげに見つめてやがてしっかりと抱き寄せた。

「うん、俺も愛してるよ…、可愛い奥さま」

「んっ、うっ、もうっ…、無理だからっ…」

「…俺もだよ、マクシム…」

二人は互いを愛する気持ちと、快楽に身を任せて行った。

 


身体を清めてベッドに入り込んだ際、マクシムはお気に入りのパーカーのフードを被ってシュフラットに背を向ける。

「マクシム、こっち向いて」

「っ…やだ」

「どうして?さっきはあんなに可愛い顔していたのに」

「知らんっ、さっきの俺は別人だっ…!」

「そんなに俺に顔見せたくないのなら…」

呟いたシュフラットはマクシムの両手首を掴んでベッドに縫いつけた。

良くマクシムの顔を見つめれば、シュフラットの口元は自然に綻んでいく。

「…くくっ、マクシム、顔真っ赤じゃないか。そんなに恥ずかしかったのか?」

「だからお前には見せたくなかったんだ!…柄にもなく、お前に弛んだ表情なんて見られたくなかったんだよ。こっちを見るんじゃないっ…」

「俺たちは夫婦だ、泣き顔も笑顔も甘えた可愛い顔だって。全部俺に見せて欲しい。…マクシム、俺の前だけで色んな表情を見せて?」

縫いつけられた手首は離されて、シュフラットはそっとマクシムの手を握りしめた。

それに答えるかのように、マクシムもおずおずとシュフラットの手を握り締める。

「俺はシュフラット、お前が何もかも初めてだ。好きになったのも、キスをしたのも、…その、身体を重ねたり愛を誓い合ったことも、全部お前が初めてだ」

「…そうだな」

「だから結婚して俺がお前の側にずっと居れる今が幸せな訳で。…だから、なんだ。色々と恥ずかしいんだよ!…察しろよ、鈍感」

顔を真っ赤にしながら呟くマクシムを、シュフラットは強く強く抱き締めた。

「俺はマクシムが奥さんになってくれて幸せだよ。こんなにも可愛くて不器用で一生懸命想いを伝えてくれるお前を愛さないわけがないだろ?…幸せだな」

シュフラットの気持ちを聞いたマクシムもぎゅうっと彼の広い背中に腕を回して囁いた。

「…俺だって、お前の妻になれて幸せだよ。本当に幸せだ…」

お互いの顔を見つめ合って再び唇を重ねれば幸せな夜が訪れる。

愛を誓い合った二人の夜は、二人だけの愛しい時間なのだ…。

 

8.【繋いだ手、自覚した夜】


「じゃあまた明日なー、フューズ、カプカンを宿舎まで送ってけよ?」

「あぁ」

冬の街並み、繁華街が立ち並ぶこの街でスペツナズのフューズとカプカン、タチャンカとグラズは飲みに来ていた。

酒に弱いカプカンは酔いが回ってすぐに眠ってしまい、フューズが彼を宿舎まで送っていく役目を任されたのだ。

フューズは自身の肩をカプカンに貸しながら街並みを歩いていく。

輝くネオンと、口から漏れる白い息は冬の寒さを感じさせるのには丁度いい。

「カプカン、大丈夫か」

「…眠い」

「意識は有るんだな?少し公園で休むか」

「…ん…」

項垂れるカプカンの顔は真っ赤になっていて、相当酒に弱いことが窺える。

フューズは思う。

(…どうして、酒に弱いのに浴びるように飲んだんだ?何か悩みがあるのなら、相談くらいしてくれれば)

ふと、心の中がちりっと傷むのをフューズは感じたのだ。

歩を進めて、フューズとカプカンはひと気のない公園のベンチまで辿り着いた。


***


「大丈夫か」

「…さっきよりかは」

「そうか、ならいい」

自販機で買った水をカプカンに手渡したフューズは、カプカンの隣にどさっと腰を下ろす。

「…カプカン」

「なんだ」

「お前、酒弱いのになんで浴びるように飲んだんだ?」

「…理由なんてない」

「嘘だ」

「なんでそんなに理由を聞きたがる?人に関心なんて持たないお前がなんでそんなことを気にするんだ」

鋭い目つきで見つめてくるカプカンを、フューズは真剣な瞳で彼の瞳を覗き込む。

「…お前が頼ってくれないのがことが酷く辛いと思ったからだ」

今は顔の表情を隠してくれるヘルメットも、フェイスペイントも何もない状態なのだ。

フューズの顔は悲しみの色でいっぱいで少しだけ泣きそうな顔をしていた。

そんな様子を見たカプカンは、そっとフューズの冷えた手を取り、自身の手に重ねて呟いた。

「…俺はな、叶わないと分かっていることはさっさと諦める主義の人間だ」

カプカンはフューズの瞳に静かな視線を送り続ける。

その視線が交わるとき、カプカンの瞳はわずかに細められてく。

 

 

「…フューズ、お前が好きなんだ。仲間以上の思いを気がついたらお前に向けていた。気持ち悪いだろう?」

カプカンの口から放たれた言葉にフューズは驚いた表情共に、重ねられたいた手をより強く握り返した。

「悩んでいたことはそれか?」

「…そうだな。フューズ、手を離してくれ。俺はもう、お前の隣にいる資格なんてない」

「…っ、カプカン!お前はいつもそうやってそうやって全部一人で抱え込もうとするじゃないか。俺はお前の手を離したくなんてない、俺だってお前をっ…」

あぁ、ようやく分かった気がする。

この心にわだかまった一つの『気持ち』に名前を付けるのなら。

それは『恋』だということを。


「俺だって、お前が好きなんだよ!何もなかったことにするな、気持ちを否定しないでくれよ…!好きなんだ、なぁ、頼むから俺の隣から居なくなろうとしないでくれよ…」

フューズは柄にもなく、声を荒げながらカプカンに思いの丈を伝えていく。

その思いを聞いたカプカンはフューズに小さな笑みを向けてくる。

「…嘘じゃないのか?」

「俺は嘘なんてつかない」

「…俺は男で、お前も男だ」

「好きになったら性別なんて、関係ないだろう」

「…同情なんかで思われても、俺は…」

「じゃあどうしたらカプカン、お前は俺の気持ちを信じてくれる?俺だってようやく自覚したばかりなんだ」

フューズの言葉に呆気にとられていたカプカンの酔いなんてとっくに醒めていて。

カプカンはフューズに一言、ねだるように呟いた。

「…キスをしてくれたら、信じてやる」

その言葉を聞いたフューズはふっと微笑んでカプカンの手を取り、彼の甲に恭しく口付けた。

「外だから、手の甲で勘弁な?」

フューズの整った顔立ちがカプカンの瞳を射抜くように見つめてくる。

これはもう、自身の負けだとカプカンはフューズを見つめ返して思ったのだ。

「…後悔しても、嫌いになっても離れてはやらない。それでもお前は俺を選ぶのか?」

「手の甲のキスの意味、お前は知っているか?」

フューズは隣に座るカプカンを軽く引き寄せて、彼の耳元で囁いた。

「『溢れんばかりの愛情』だよ、カプカン。俺だってお前を離してなんかやるつもりは毛頭ないさ。さ、宿舎に戻るぞ?って、カプカン?」

「い、色々頭が追いつかないんだよ。フューズ、その、なんだ…」

「ん?」

「ありがとうな…、俺を好きになってくれて」

「っ…!カプカン、ちょっとだけ…」

フューズは抑えられない気持ちを胸に、カプカンの手を取り自身が来ている上着のポケットに手を突っ込んだ。

「これで寒くないだろう?」

「そうだな…、あったかい」

「帰ろう、カプカン。そして今日は俺の部屋に泊まっていてくれ。一緒に居たいんだ」

「…分かった、まったく…」

カプカンはフューズの手をポケットの中で握り返しながら彼と宿舎までの道を歩き始める。

白い息が分かるくらいに冷え込んだ夜に得たものは、ずっと思っていた相手の温もりと思いだったのだ。

 

 

9.【思い、重なる夜】


ふわふわとした感触がマクシムの身体を優しく包み込んでいく。頭を撫でる手は自身が大好きな『アイツ』の手だ。

「マクシム、起きたか?」

「…ん、ここは…?」

「俺の部屋。今日一日、初めてデートしてくれたんだけどお前眠っちゃって。ここまで連れてきた」

「す、済まない…、ここ最近の任務が過酷で…」

「良いんだ、お前が一日楽しそうだったから。はしゃぎ疲れたんだろう?眠気覚ましに風呂でも入るか?」

「…もう少し、そばに居てくれないか…」

「あぁ、構わないさ」

マクシムは寝起きの為かトロンとした顔で恋人のシュフラットを見つめた。恋人同士になってから、約3ヶ月。

ようやく休みがあった二人は初めての『デート』で一日を満喫して居たのだ。

遊び疲れたマクシムは帰りのバスの中で居眠ってしまい、シュフラットが自身の部屋まで連れて帰って来たわけだ。

(…マクシムは本当に子どもっぽい一面もあって楽しそうにしてくれて良かったな)

自身の顔を眠たげな表情で見てくるマクシムをシュフラットは愛しげに見つめ返す。

マクシムの頭を優しく撫でてシャワーを浴びる為にベッドから腰を上げた時だった。

「い、行かないでくれっ…」

「…マクシム…?」

「もう少し、側に居てくれないか…、その、お前に抱き締められたいというか…、ごめん…」

「…謝ることじゃないだろう?マクシム、ぎゅーして欲しいのか?」

「…うん…」

「ほら、おいで?」

マクシムはベッドに潜り込んで来たシュフラットの体温を求めるかのように彼の首筋に顔を埋める。

甘えたがりなマクシムはシュフラットだけしか知らないのだ。ほんの僅かに感じる優越感にシュフラットは小さな幸せを感じていた。

「…シュフラット、良い匂いする」

「くすぐったい」

「香水の匂い?」

「…いや、洗剤の匂いじゃないか?」

「ともかく、お前の匂いは俺を安心させてくれるな。シュフラット、好きだ…」

「俺もだよ、マクシム」

ベッドの中で柔らかに交わる視線は、やがて近づいていき、互いの唇が重なっていく。

「んっ、んぅ…」

シュフラットはマクシムの唇を割って入り込んで自身の舌を絡めていく。

ぐちゅ、くちゅ、ちゅるっと舌と舌が絡み合う感覚にマクシムは我慢が出来なくなったのか、唇を離して乞うようにシュフラットを見つめた。

「…マ、マクシムっ、ごめ、俺我慢出来ない…」

「…どうして欲しい?」

「シュフラットに、その…」

「分かるように教えてくれないか?」

「…俺、お前に『初めて』をもらって欲しいんだ…!その、格好悪いけどずっとずっとお前にして欲しいって…」

マクシムの熱で潤んだ瞳を見たシュフラットは軽く唇にキスをして囁いた。

「…キスだけで済むわけないだろう?こんなに可愛いお前の『初めて』、俺が貰っていいのか?」

「…シュフラットじゃないと駄目だ、お前以外俺は見てないからー・・・」

「….ありがとう、マクシム…」

深く深く沈んでいくベッドのスプリングは二人分の体重を受け止めて静かに軋んでいった。

***


「痛いか…?」

「っ、少し変、くっ、うぅ…」

「マクシム、辛かったら…」

「や、やめないでっ…」

シュフラットはマクシムの中に少しずつ、ゆっくりと自身の熱を進めていく。

時間をかけて、しっかりと解されたマクシムの入り口は途中までシュフラットの熱を咥えこんでいた。

「…やっ、やっと繋がれるのに、やめたら許さないからっ…」

「…やめてやる気なんてさらさらない。もう少し、力抜けるか?」

「う、んっ…、お前のが大き過ぎるんだ、ばかっ…!」

「好きな奴抱いてんだから当たり前だろう、あ、マクシム…全部飲み込んだ。ゆっくり動くから、しっかり背中に腕回して」

「あ、あっ…!シュフラットっ…」

「どうした、マクシム」

「おっきいの、辛いからっ…、もっと小さく…」

「マクシムが可愛いから無理」

「…苦しっ、中、熱くて痒くてぇぇっ…、ぐちゃぐちゃってもっと掻き回せよぉぉっ…!!」

「とんだ殺し文句だ。…好きなだけ突いてあげるよ、マクシム、中トロトロだ…」

シュフラットはマクシムの中が良い感じに蕩けて締まってきたのをいいことに腰を思い切り深く出し入れする。

「しゅ、シュフラットの、熱い、大きいよっ…」

「気持ちいいのか?…俺はすごく気持ちいい。お前の『初めて』を貰えたのも、愛しげに名前を呼んでくれたのも…全部幸せだ。マクシム、愛してる」

「お、俺もシュフラットが一番だっ…、気持ちいいよっ…、お前の全部、俺にっ…」

「…受け止めてくれるのか?」

「愛してるからっ…、全部頂戴っ…?」

「じゃあ遠慮なく…、くっ、んっ、マクシムっ、マクシムっ…!!」

熱い声で名前を呼びながらシュフラットはマクシムの中に惜しみなく熱を注ぎ込んでいく。それと同時にマクシムも己の昂りから熱を放っていく。

マクシムの割れた腹筋には自身の精が溜まって今にも滴り落ちて行きそうなのであった。

***


「さっぱりしたか?」

「ん…」

互いに何度も求め合い、気がつけば時刻は深夜になっていた。同じ宿舎で暮らしてはいるものの、シュフラットはキスマークだらけのマクシムを晒したくはなかったので部屋に泊まってもらうことにした。

シャワーを浴び、ベッドと身体を清めた二人は再びベッドに身体を沈めていく。

「マクシム、ありがとう」

「…別に…」

「何か怒ってる?」

「…怒ってない」

「じゃあどうして俺を見てくれないんだ?」

「…っ、お前の顔を見ると抱かれた時のこと思い出すから恥ずかしいんだよ!!察しろよ、馬鹿シュフラット…」

同じベッドに身体を沈めているのに、ほんの僅かに不機嫌なマクシムを見たシュフラットは彼を後ろから抱きしめた。

「可愛いな、本当に…」

「それ以上言うな…!」

「じゃあ、大好きだよ」

「シュフラットが笑った…」

ニコリと微笑んだシュフラットの笑顔はマクシムの顔を真っ赤に染めるのには十分過ぎたようで。

「大好きな奴が可愛いことを言って幸せだから笑った。…俺だって人間だからな、マクシム、愛してるよ」

気がつけば正面から抱き締められて、互いの鼓動も体温もより伝わりやすくなっていた。

「…俺の思いも、俺の初めても。全部全部シュフラットが気がついて受け止めてくれて貰ってくれた。大好き、俺だけのシュフラット」

ぎゅうっと抱き締めてくれる身体、そして愛しい人の体温はより二人の気持ちを加速させていく。

「…俺も同じ気持ちだよ、マクシム…」

シュフラットは再びマクシムの唇に優しいキスを落として柔らかく微笑んだのだった。

 

 

 

10.【君と初めてのデート】


宿舎の前で両思いになったばかりの相手と待ち合わせをしていただいてマクシムはそわそわとした雰囲気を醸し出していた。

いつもより気合いの入った私服は故郷の兄弟が選んでくれた勝負服。大好きな人に褒めて貰いたくて頑張ったのだ。

「遅い…」

黒いパーカーのフードを被りながら宿舎の出入り口でマクシムは大好きな彼を待つ。

シュフラットは昨夜から離れた街の方に出掛けており、顔を合わせていなかった。恋人同士になってから約3ヶ月。

今日は初めてのデートなのに遅刻かよ、馬鹿シュフラット…!

マクシムは少し苛立ちを隠せず、ピリピリとした空気を醸し出しながら壁にもたれて彼を待つ。

今日はいい天気だ、初めてのデートにはうってつけのデート日和だななんてマクシムは思ったりして。

 

しばらくすると、大型バイクに乗ったフルフェイスヘルメットの人物が一人、マクシムの前に現れた。

「…遅くなった、街の方でバイク直していたらこんな時間に」

「シュ、シュフラット?!」

大型バイクに乗って現れたのは、昨夜から会うことが出来なかったマクシムの恋人、シュフラットだ。

フルフェイスヘルメットを外し、マクシムの前に立った彼の顔はやはりかっこよくて、マクシムは彼の顔が直視出来なかった。

「昨日の夜からバイクの調子がおかしくて見てもらってたんだ。初デートなのに遅刻してごめん。…お前の私服、似合ってるな」

すっと細められたシュフラットの瞳は優しくマクシムを見つめていた。シュフラットに見つめられたマクシムはフードを取り、頬を染めながら大好きな彼を見る。

「…心配した」

「悪かった」

「…お前の為に慣れないお洒落、頑張ってみたんだが…、褒めてくれてありがとう」

「…マ、マクシム…、可愛いこと言わないで。キスしたくなるし、止まらなくなるから」

「ば、馬鹿っ…!帰って来てからいくらでもすればいいだろ?!デート、楽しみにしてたんだ。早く行こう」

「あぁ、悪い悪い!マクシム、俺の後ろに掴まって?バイクで目的地まで飛ばすから」

「あ、あぁ…!お前バイク乗れるんだな!」

「…俺の隠れた趣味の一つさ、よし、飛ばすから!」

シュフラットはマクシムをバイクの後ろに乗っけて今日のデートの目的地である場所までエンジン全開で向かっていった。


***


二人が来た場所は家具屋だ。

マクシムの部屋には必要最低限の家具しか置いて居らず、それを見かねたシュフラットが初デート先に選んだ場所だった。

「さ、何から見たい?お前の部屋には必要最低限の家具しか置いてないから俺が選んで買ってあげる」

シュフラットは遅刻したお詫びも兼ねて、とマクシムに微笑むがマクシムはシュフラットを見て呟いた。

「…自分で買う、お前に出してもらうのはその、申し訳ないというか…」

「くくっ、やっぱりお前は優しいな。俺はそんな所も好きなんだが、『プレゼント』ってことだったら受けとってくれる?」

「…何で?」

「何でって、今日は記念日だからかな。お前が告白してくれて付き合い初めて3ヶ月の記念日だから。…駄目か?」

「わ、分かったよ…!ほんっとお前って一度決めたら頑固なんだから」

「お前のことになると、尚更な。さ、お店の中見ようか。行くよ、マクシム」

シュフラットはマクシムの手をそっと握りながら店内を歩き出す。そしてまた、恥ずかしそうにマクシムもシュフラットの手を握り返していった。

 

二人がまず来た売り場はソファやベッドなどが置いてある寝具コーナーだ。軍人が故に、屈強な身体の持ち主であるマクシムはそろそろ広めのベッドにしようと思っていたようで…。

「…ベッド、そんな大きいのが欲しいのか?」

「悪いか?宿舎のベッドは小さくてストレスになる。…それに…」

「それに?」

マクシムは顔を赤くしながらシュフラットの顔を見つめて呟いた。

「…シュフラットが泊まりに来た時に一緒に寝るのに広い方がいいかなぁって。…わ、悪いか?!俺だってお前がその、大好きだからっ…」

可愛い過ぎませんか。

シュフラットは顔を赤くしながら一生懸命話すマクシムを愛しげに見つめて呟いた。

「本当に可愛い、良し。じゃあこれは買って後で届けて貰おう。マクシム、これは俺からのプレゼントだから受け取れよ?」

「…分かった!分かったから、その、そんなかっこいい顔で俺を見るなよ、恥ずかしい」

「悪かった、だけどマクシムが可愛いのが原因だから」

二人の間には和やかで、何処か甘い空気が漂っていた。

***

一通り家具を買い揃え、店を後にした二人は近くの公園を散歩していた。季節は春、公園には沢山の花々が植えられている。

「暖かいな」

「…うん」

二人は公園のベンチに座って眩しそうに空を見上げた。母国であるロシアより、レインボー部隊の拠点であるイギリスの方が綺麗で過ごしやすい。

シュフラットはマクシムの手を握りながら彼の顔を覗き込む。シュフラットの顔は何処かマクシムを愛しげに、そして優しげに見るような穏やかな表情だった。

「…マクシム、俺は素っ気なくはないか?」

「い、いきなり唐突過ぎないか??」

「こんなにも好きになって、大切にしたいと思える奴に出会えたのはその、お前が初めてなんだ。正直、この歳にもなってまともに恋愛なんかしたことなかったから」

シュフラットは静かに呟いた。レインボー部隊に入る前からマクシムとシュフラットは同じスペツナズの同僚、そして友人として親交があった。

…シュフラットが女性から人気があったことも、覚えている。

マクシムの心がちくりと傷む。かつてスペツナズにいた時にシュフラットが毎回違う女性と歩いていたのを目撃したことがあったから。

「…シュフラットは女性に人気あったし、モテていたのは覚えてるぞ。毎回違う女性と歩いていたのも見ていたし、まともに恋愛して来なかったって嘘だろう?まったく、冗談は…」

あれ、胸が痛い。

ズキズキと痛み、そして疼く『これ』は何だろうか。

気がつけばシュフラットからマクシムは目線を反らし、手を離して唇を噛み締めた。

今、彼の目の前に居るのは自分だけなのに…。

「…マクシム、お前、もしかして…」

様子のおかしいマクシムを心配したシュフラットはマクシムの顔に手を伸ばして彼の顔を覗き込む。

すると色素の薄いアイスブルーの瞳が僅かに揺れているのをシュフラットは見てしまう。

「…その、間違っていたら悪いんだが…、妬いてるのか?マクシム、ちゃんと言って欲しい。お前の口から聞かせてくれないか?」

シュフラットの真剣な表情と、優しい声音にマクシムは観念したかのように口を開いていく。

「…俺はスペツナズにいた時からお前が人気で色んな女性と付き合ってはすぐ別れていたのを知っていたから…そのなんだ、まともに恋愛してこなかったて嘘なんじゃないかって思ったんだ。…シュフラット、俺はお前が大好きだから過去のことにとやかく言うつもりはない。だけど…」

苦しげに想いを吐露していくマクシムを、シュフラットは我慢できず己の腕の中に引き寄せた。

「…だけど今は俺がお前の一番だから、他の人の所に行かないで欲しい、俺だけを見て欲しい、過去に妬いてる俺を許しっ…、んっ…?!」

あまりにも妬いてるマクシムが可愛いから。

シュフラットは抱き寄せたままマクシムの唇をそっと塞いで顔を優しく撫でていく。

 

「…そんなに可愛いことを言うお前が悪いんだ。マクシム、確かに昔は誰かを真剣に好きになりたくて色んな人と付き合っては別れての繰り返しをしてきた。だけどお前が俺を好きになってくれて、俺もお前に夢中になって分かったことがある。一人の人を真剣に好きになり、愛することの大切さを日々学んでいるんだ。だからマクシム、妬いても泣いても構わない。俺が好きで夢中なのはお前だけなんだから」

いつもは寡黙なシュフラットも、マクシムの前では饒舌になる。口を塞がれ、まるで告白のような言葉を言われたマクシムはシュフラットの肩に額を押し当てた。

「…俺だってシュフラットが好きで好きで堪らないんだ。あの日、お前が俺の思いに答えてくれて本当に嬉しかった。俺にとっての初恋はシュフラット、お前だけなんだよ。だから俺はお前と恋人同士になれて毎日が幸せなんだ、初めて妬いたし、それにデートだって楽しいし…。幸せだ」

シュフラットはマクシムの言葉を聞き、額を押し当ててくる彼の身体をしっかりと抱き締めて愛しげに頭を撫でた。

「お前の笑顔や拗ねた顔、そして泣いた顔、喜怒哀楽を全部俺だけに見せて。この先も俺の恋人はマクシム、お前だけだから。お前しか見ない、これは一生をかけて誓おう」

「…シュフラット、俺もお前が大好きだ…、ありがとう、俺を好きになってくれて本当にありがとう…」

温かな春の陽気に包まれた恋人同士は愛しい気持ちを互いに抱きながら穏やかな視線を交わして微笑みを浮かべていった。

 

 

 

11.【Alternative


「カプカン」

手を伸ばせばいつだってお前は俺の近くに居てくれたのに、ふとしたことがきっかけでお前は離れていってしまった。

「フューズ、俺とお前の関係はまともじゃない。潮時だよ、お前は俺なんかの側には居ない方がいいんだ」

『一夜限りの関係』と割り切って抱いてしまったのを皮切りに、のめり込んで行ってしまった末路が今なワケだ。

俺には婚約者がいて、実家を継ぐという将来があった。家族からの期待、そして圧力に俺は耐え忍ぶことに限界を感じていた。

そんな時に黙って側に居てくれたのがカプカン、お前だったんだ。一夜限りの交わりだったとしても俺の心の中にはお前の存在が在ったんだ・・・ー。

「まともじゃなくても構わないんだ。…カプカン、一夜限りの交わりで分かったよ。俺はお前に惚れてしまったようだ。…俺を嘲笑っても構わない、俺はお前の側に居たいんだ。隣に居ることを赦してはくれないか?お前の為に全てを捨てる覚悟ならとうに出来ている」

フューズはカプカンの瞳を見つめながら乞うように呟いた。どんな重圧に耐えたとしても、フューズにとって一番辛いことはカプカンの側に居れなくなることなのだ。

カプカンはそんなフューズの顔を見つめ、やがて瞳を細めながら呟いていく。

「…この先、俺との関係を周りが知っていったらお前は更に傷ついていくだろう。それでもお前は俺の側に居たいのか」

「全てを捨てて犠牲にしても構わないと、心に決めて来た。カプカン、人を好きになり想うのがそう簡単なことじゃないくらい俺も分かってるさ。だけどな、それくらいの覚悟をして選択した道なんだ。二者択一なら、俺はお前を選ぶ。何が有っても、絶対に」

フューズの言葉にカプカンは細めていた瞳を見開きながら彼の顔をまじまじと見つめていく。やがてカプカンは口を開き言葉を紡いでいく。

「俺はお前と違って地位も名誉も無いし、家柄だって良くはない。俺の側に居るせいでお前が悪く言われるのが正直耐えられないんだ。…俺にとってお前は…」

言葉に詰まったカプカンは唇を噛み締めながら一筋の涙を流した。苦しげに呟くカプカンを、フューズは己の腕の中にきつく抱き寄せる。

「…世界が例え俺たちに味方をしてくれなかったとしても、人を好きになることはそんなに悪いことなのか?俺はお前が好きなんだ。だから泣かないで。俺はお前が何よりも大切なんだから」

フューズの抱擁に答えるかのようにカプカンは彼の広い背中に腕を回してしっかりと抱き締め返す。

「お前は俺を選んだことを後悔する。…一夜限りの気まぐれなら…」

「後悔なんてしないさ、こんなにも大切にしたいと思ったのはお前が初めてなんだから。カプカン、どうか赦して。お願いだ…」

「…俺が一番辛いのはお前が世間から冷たい目で見られることだ。俺だって一夜限りの交わりでお前の優しさを知ったんだ。だからお前が俺を好きと言ってくれて本当は嬉しいのに…」

「…だったら『答え』なんて一つじゃないか。カプカン、お前は俺の側にいてくれ。お前が赦してくれるのなら、俺はそれだけで充分幸せなんだから」

カプカンはその言葉を聞いて静かに頷いた。

「…赦すよ、お前の覚悟も気持ちも全部受け止めたから。だからもう、俺も覚悟を決める。フューズ、どうか俺の側にいて。二者択一なら、俺だってお前の側に居たいんだ…」

「…ありがとう、カプカン…」

一夜限りの交わりだったとしても。

フューズにとってカプカンは大切な存在には変わりは無いのだから…。

二者択一で選んだ道は二人にとって未来への道しるべへとなっていったのだ。