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beginning×lover×night 《前》

貴方が好き。

貴方が恋しい。

誰よりも何よりも。

…苦しいくらいに恋をしている。

貴方を想って超えた夜は何度目だろうか。

これは俺の、臆病な恋の物語。


【beginning×lover×night】

 

1.ジュリアン・ニザンの想い人

 

朝、宿舎の食堂で顔を合わせる時間に俺の鼓動も時計の秒針と同じように刻まれていく。

レインボー部隊に配属されて早くも数ヶ月。様々な国から集まった隊員とも親交を深めていく中、俺が唯一色んな意味で親交を深められていない人物がいた。

「おはよう、ルーク」

「…おはようございます、ドク」

「ふふ、朝から沢山ご飯を食べてるなんてさすがは若さ溢れる隊員だ。私も君みたいにしっかり食べたいよ」

「貴方はいつも少ないですよね、軍医である貴方がしっかり健康管理出来てないと、貴方の背中を守る相棒として毎日心配してしまうじゃないですか」

「本当に君はお人好しなんだね、ルーク、今日は非番なのか?」

そう、俺が唯一色んな意味で親交を深められていないのは片想い中のこのお方…。

ギュスターヴ・カテブさんご本人なのです。

目の前に座って来たギュスターヴはサラダとコーヒーだけ。それに対して俺はパンにサラダにスクランブルエッグに色々なおかずを盛り付けて食事をしていた。

あぁ、恥ずかしい。

「…俺は非番ですけど。ドク、貴方は?」

「私も丁度非番でね。息抜きに付き合ってくれる人を探していたんだ。ルーク、君は甘いお菓子は好きか?」

目の前でギュスターヴはコーヒーを飲みながら俺の顔を見つめてくる。ブラウンの瞳はどんな人間をも魅了する色だとあらためて俺は思ってしまった。

「甘いお菓子は好きです、訓練が終わった後に食べるケーキは最高かと。しかし何故そんな質問を?」

「実は街に新しいカフェが出来てね。何せ女性ばかりが列をなしているものだから行きにくくて。そこのショートケーキは絶品らしい。ルーク、私の息抜きに付き合ってはくれないか?」

貴方の可愛いお願いを俺が拒否する訳ないじゃないか。寧ろ、万々歳…!

「俺で良ければご一緒させてください。ドク、朝食を済ませたら宿舎の入り口で待ち合わせでいいですか?」

「ありがとう…!良かった、君が嫌な顔したら行くつもりはなかったんだが…。この基地に来てから初めてだね、君とのお出かけは」

「そ、そうですね…」

残りのおかずに手をつけながら俺は思う。

俺は目の前の可愛い軍医に恋をしてます。歳上だけど、穏やかで優しい人。

…大好きで堪らない、俺の好きな人。


2.ロイヤルミルクティ


朝食を終えて私服に着替えれば、すでにギュスターヴは待ち合わせ場所に来ており、俺に気が付けばニコニコと笑みを浮かべた。

「ルーク!ありがとう、来てくれて」

「いいえ、俺も非番で暇だったから丁度良かった。ドク、行きましょう。貴方の目的の場所まで。…車、出しましょうか?」

「大丈夫、街までたまには歩いて行って見ようよ。気分転換になると思うから」

「…分かりました」

ギュスターヴは小さな子どものように楽しそうな笑みを浮かべて足を一歩踏み出した。

 

 


宿舎から歩いて約15分、目的のカフェがある街に俺とギュスターヴはやってきた。開店したばかりなのか、普段は行列が出来ているというカフェにはまだあまり人は居なかった。

「ようやく入れる〜…、ふぅ、私一人だと心配でね。ルーク、君が一緒に来てくれて良かった」

「…そりゃあどうも」

「さて、目的のケーキと飲み物を頼んでゆっくり味わおうじゃないか。メニューはこれとこれで…」

,…あぁ、可愛いなぁ。

なんで貴方はそんなにも可愛いんですか?

俺と貴方は同僚と相棒ってだけの関係なのに。

可愛い貴方に想いを伝えられない不器用な俺を…。

…許してください。

 

 

ギュスターヴと俺が頼んだケーキは苺のショートケーキ、飲み物はロイヤルミルクティーだ。ギュスターヴは甘い物が好きなのか、ロイヤルミルクティーに砂糖をたっぷりと加えてかき混ぜていた。

「甘いケーキに甘い飲み物、何だか背徳感を覚える組み合わせだけれど、私にとっては最高の組み合わせなんだ」

ふわふわのスポンジと、真っ赤な苺、そして真っ白な生クリームにギュスターヴはキラキラと瞳を輝かせていた。

まるで宝物を見つけたかのような彼の笑顔に俺の心はぎゅうっと締め付けられる感覚に陥った。

「…食べようか、いただきます」
「うん!いただきます」

俺とギュスターヴは絶品らしいショートケーキを口に含んだ。苺の酸味と、生クリームの甘さが口の中でマッチして美味である。

ギュスターヴは味わうかのようにケーキを切り分けて口にゆっくりと入れていく。あ、ギュスターヴ…。

「生クリーム、ついてますよ?」

「へ…?」

「口の横に生クリーム、ついてます」

「あ、あぁ…、ごめん」

俺は無意識にギュスターヴの唇に付いた生クリームを指で拭って舐めとってしまった。

…そう、全ては無意識に。

ギュスターヴは俺の顔をまじまじと見つめて来て顔を真っ赤にして呟いた。

「な、何を…」

「え、あぁ、貴方の唇の横に生クリームが付いていたから取っただけだけど。何か問題がありました?」

「は、恥ずかしいじゃないか…!まったく君って人は…」

ギュスターヴは砂糖がたっぷり入ったロイヤルミルクティーを口に含みながら俺を睨んでくる。

「唇に生クリームを付けている貴方も十分に悪いんですよ?ドク、貴方は甘い物が好きなんですよね、だったら俺も甘い物が好き。…つまりは貴方と同じ物が好き。ま、ロイヤルミルクティーに砂糖をたっぷり入れることはしませんけど」

「…君ってたまに意地の悪い事を言うよね。ルーク、私との息抜きはつまらない?」

「いいえ、俺にとってはとても有意義な時間です」

「なら良いんだ。…あ、ここのミルクレープもオススメだから頼んでも良い?お代わりのロイヤルミルクティーも追加で」

「…お好きなように。貴方の時間なのだから好きなようにしてください。俺も付き合いますから。でも、飲み物はコーヒーで」

ギュスターヴのブラウンの瞳は俺を真っ直ぐ見つめてくる。そう、俺の大好きな人の視線だ。

キラキラと子どものように楽しそうな笑みを浮かべていた貴方の笑顔も、真っ赤になった貴方の顔も。

今はただ、俺だけが独り占めしているんだ。


…あ、思ったよりミルクレープ大きい。


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*1: °ω°