穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

恋の黙秘権を行使する

ミュートとエコーのお話。

【恋の黙秘権を行使する】

 

「あんたは僕のこと見てくるよね、監視でもしてるのか?」

「…………」

「口が付いているなら何か言えるだろう?僕の手を煩わせないでくれないか」

「…………」

ずっとこんなやりとりをして早くも三時間。新たに就く任務でバディを組むエコーとミュートは作戦会議の為に二人で会議室にて話し合いをすることにした。

しかしエコーが話を振ってもミュートは無言で首を動かすだけだった。エコーは自分より優れているミュートとバディを組むのはいささか不服だったが彼の『シグナルディスラプター』とミュート自身の知能の高さを評価していたため、今回の話を受けることにしたのだ。

エコーは小さく溜息を吐きながらミュートの顔を見つめた。眉毛一つ動かさず、整った顔は嫌味なほどミュートの男らしさをより引き立てて行く。

(…僕より年下で頭も良くて顔も良いとか何なんだ。しかもさっきから僕の顔を見つめてくるし。息苦しい…)

ミュートと同じ部屋にいることが苦痛なミュートは会議資料に目線を落とし、ぺらぺらとめくり始める。

遂には誰も話さなくなった二人きりの空間で話し合いが成立するとは思えなくなったエコーは一度資料からミュートに目線を戻す。

まただ。

またミュートはエコーの顔を見つめている。

言いたいことがあるのなら、言えばいいだろう…!!

沸点の低いエコーはついにミュートを睨みつけて声を荒げながら言葉をぶつけた。

「…さっきから何なんだよ、僕に文句があるなら直接言えばいいじゃないか!あんたは僕の顔を見てくるだけで何も言わないし、次の作戦であんたに命を任せられない。僕の背中を任せられないよ、今のままじゃ」

その言葉を聞いたミュートは無表情だった顔を幾分か悲しげにしてようやく小さく言葉を洩らした。

「……悪かったな」

(…あれ、謝って来た…?)

初めて聞いたミュートの声にエコーは驚いた表情を浮かべ、そしてミュートの顔を見つめた。

「…分かればいいよ、僕も声を荒げて悪かった」

「…俺は話すことがあまり好きじゃない。しかもあんたは俺の『憧れ』だから余計に、な…」

「僕が…あんたの…憧れ…?」

「…俺が機械や無線、そういった工学の世界に入ったきっかけはエコー、あんたが作ったロボットがテレビの中で表彰されていたのを見たからだ。ロボットで『人の命を救う』なんて、小学生だった俺にとってはすごい衝撃だったのを今でも覚えてる」

エコーは十年前ほど初めて作ったロボットがテレビで表彰されたことを思い出した。世界のメディアが初めて自身の作ったロボットに注目した瞬間を忘れるわけがない。

「あんたがまさかレインボー部隊に配属されるなんて夢にも思わなかった。無口だったのは、その、なんだ…。緊張していたからだ。俺がここまで話すことも普段は無いから」

(…何だ、可愛い所も有るんじゃないか)

ミュートがずっと無口だったのは憧れだったエコーが近くに居たからで。エコーは自分自身がミュートに嫌われているわけではないと安堵した。

「…ははっ、可愛いじゃないか。たまには子どもらしい所を周りに見せてやればあんたが話しやすい人間だって周りの仲間も…」

「俺はエコー、あんただけにしかこんな自分は見せたくない」

気が付けばミュートはエコーの顔に手を伸ばし、そのまま自分自身の顔を近づけて唇を重ねる。

エコーの頭の中は真っ白になる。

(…何が…起きてるんだ?)

目の前にはミュートの端正な顔があり、そしてそのミュートはエコーの唇に自身の唇を重ねて…。

キスされていることに今気がついたのだ。酷く遅れて気がついたのはミュートの唇の体温が心地よいと感じている自身が居たからだ。


「っ、はっ…、離せっ…」

「…エコー、これが俺のあんたに対する『想い』だよ。突き放さなかったあんたは俺を受け入れた、そう判断するがいいのか?」

唇をようやく離したミュートはエコーの瞳を真っ直ぐと見つめてくる。エコーはそんなミュートの瞳に吸い込まれるように口を開いて呟いた。

「順序ってのが有るだろ?!いきなりキ、キスする奴がいるか?!しかも僕はあんたより一回りは歳上だし、男だ!」

「…人を想うのに性別や年齢は関係ないと俺は思う。エコー、俺はあんたに憧れてこの世界に入った。この道に立たせた責任を取って貰わないと行けない気がするんだが違うのか?」

ミュートの表情は生意気なくらい余裕な色を浮かべており、エコーは気が付けばそんな彼の表情に魅入られたのだ。

「ミュート、あんたとは出会ったばかりだし僕はまだあまりあんたの気持ちには答えられないかもしれない。だけど…」

だけど。

「あんたが僕を想うと言うのならその気持ちに答えられるように努力をしてみる。ミュート、それが今の僕が出せる答えだ」

エコーの言葉にミュートはすっと目を細め穏やかな声音で言葉を返した。

「…今はそれで十分だ、これからあんたを落とすために色々とさせて貰うから覚悟しろ」

「…黙秘権を行使する」

顔を赤くしながらエコーはミュートを見た。これから先、ミュートの懐に堕ちていく自身を想像したエコーはただただ黙ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「あんたは可愛い、俺の憧れの人だよ。好きという言葉では表現できないくらいにあんたを俺は想ってる」

ミュートは穏やかに笑いながらただただ顔を赤くするエコーに囁いて彼の頭を優しく撫でていた。