穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

壊レタ世界ノ歯グルマ

エコーとドクのお話。

 

【壊レタ世界ノ歯グルマ】


「なぁ先生、俺たちは随分遠回りをしたな」

暗い部屋の中でエコーはドクの綺麗な白衣を汚いものを見るかのような視線で見ていた。

「君は狂ってる、私の大切な相棒を傷つけてまで何がしたいんだ…!ルークは君を助けようとして生死を彷徨う大怪我を負ったんだ。だけどその場にあった監視カメラの映像を見たら…」

「くくっ、バレちまったか。あぁ、俺はあんたの大切な片割れにわざと弾が当たるように射線に出た。どうだ?あんたの大切な奴が傷ついて倒れて行く様子は?実に愉快だ」

「君はおかしい…!私だけを苦しめるならいい、だからって関係のないルークを巻き込むなんて…!」

「あんたが俺と一夜限りの関係を望んだから悪いんだろうっ…!俺はねあんたが望んだから抱いて泣かした。先生、あんたが俺を求めて喘いだ夜を忘れたとは言わせない」

エコーはドクの顔を見つめた。エコーの黒い瞳に浮かぶのは怒り、焦り、そして哀しげな色だった。

「…君は愚かな男だよ」

ドクはエコーの顔を見つめて憐れみを込めた視線を彼に向けた。慈愛に満ち溢れた彼は其処にはおらず、ただただエコーを憐れむようにドクはエコーは見つめた。

その視線にエコーは怒りで声を震わせながらドクの白衣を掴んでありったけの怒りを彼に向ける。

「あんたはそうやって逃げるんだな!ふん、あんたは偽善者で自分が傷つくのが怖いんだろう?!俺に抱かれた夜を忘れられなくていつかあんたの相棒にバレてしまうんじゃないかって恐れているんだろう?…いい気味だ。あんたは真の利他主義者なんかじゃない。ただの愚かな偽善者だ、偽善の仮面を被った憐れで愚かな男だ…!」

エコーの怒りを一身に浴びせられたドクはブラウンの瞳を僅かに揺らし、やがて瞳を細めて小さく声を漏らした。

「…あぁ、そうだな」

ドクの声は冷静を通り越し、冷淡とも言えるほどに冷たかった。エコーを見つめたドクは口許に笑みを浮かべた。

「確かに私を評価する者たちは私を利他主義だと言う。だけどそれはあくまでも周りの評価だ。私が一番自身が愚かで偽善者だって理解している。自分自身のことなんて、私自身が一番分かってるよ。…エコー、君に抱かれたあの夜は最高に気持ち良かったよ。ルークにバレる?ふん、彼は私を信頼してるからね。絶対に私を疑わないよ、それに…」

ドクはエコーの手を振り払いエコーを強く睨みながら吐き捨てるように呟いた。

「一度私を抱いたからと言ってあたかも所有者のような顔をしないで欲しいものだ。白衣が汚れるから手を離して欲しいんだが。はは、可哀想な男だよ。狂ってしまったら元に戻すのは大変だよ。エコー、君はもう一度自身の立場を考えなさい。私は誰の物でもない。歯車を壊したのは君自身なのだから」

ドクは白衣を整えながら暗い部屋を後にした。エコーはドクの背中を見つめ鬱血するまで薄い唇を噛み締めていた。

 

 

 

 

「…そうやって壊したのは他ならぬあんただろう?後戻り出来ないように植えつけたのはあんたじゃないか、先生…」

もう届かない声が暗い部屋に小さく響き渡って消えていった。壊れた歯車は歪な音を立てながら徐々に崩壊への一歩を辿っていった。