穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

限界線

【限界線】

*『境界線』の後日談。バンディットがイェーガーに伝えたいこととは。CP要素が強めです。

 

***


「コーヒーで良いか?」

「あぁ、気を遣ってもらって済まないな」

ドミニクはマリウスの自宅であるアパートに来ていた。仕事帰り、嫌な顔をせずにマリウスはドミニクが部屋に来ることを歓迎した。

数ヶ月前、ドミニクはマリウスの叔父を自らの手で死に追いやった。上からの指示とはいえマリウスの唯一の肉親の命を奪い去ったドミニクは命を自ら絶とうとしていた。

しかしマリウスはドミニクが死ぬことを許さず、再び隣に並び立つことを許したのだ。

マリウスはコーヒーの入ったマグカップをドミニクの前に差し出して微笑んだ。

「どうした?冷めないうちに飲めよ」

「ありがとう、いただくよ」

ドミニクはマリウスからマグカップを受け取って淹れたてのコーヒーを口に含む。

久しぶりに来た相棒の部屋は変わってなかった。辺りは程よく散らかっており、賑やかだった。

部屋を見渡すドミニクに、マリウスは彼の隣にどさっと腰を下ろして呟いた。

「…話があんだろう?聞いてやるから言えよ」

その言葉にドミニクは身体をぴくりと揺らし、マリウスの顔をマジマジと見つめてしまう。

自身よりも歳下でありながらベテラン隊員のマリウスは誰よりもプライドが高く、そして誰よりも傷を背負って来た。

マグカップをテーブルに置いて、ドミニクはそっとマリウスの背中に腕を回して彼の肩に額を押し当てた。

「ど、どうした…?」

「…お前を守る為に手を汚すことなんて朝飯前だった」

「…蒸し返すつもりかよ?」

「…だけど俺は知らないうちにお前を傷つけて、お前の気持ちなんて丸無視で数ヶ月前に命を奪い去った。なあマリウス、俺はお前が自分の命よりも何よりも大切なんだ…!だから…!」

「…分かってるぜ、相棒」

マリウスはドミニクの背中に腕を回して優しく彼を抱きしめ返す。何よりも傷ついたのは俺じゃなくて、お前の方なのに。ドミニク、お前は優しい奴だよ。

「分かってる、お前のことは全部分かってるぜ。何年の付き合いだと思ってんだよ。だからもう、この話は…」

「俺が言いたいことはまだ終わってない、マリウス、俺は…」

ドミニクはマリウスからゆっくりと身体を離して彼の顔に手を伸ばす。そしてゆっくりと己の唇を重ねていき…。

漂うのは沈黙、そして吐息だけだった。

マリウスはドミニクの唇をゆっくりと受け入れて彼が割り込ませて来た舌に吸い付いては絡ませて行く。

部屋には互いの舌を絡ませる水音とドミニク、そしてマリウスの口から漏れる甘い吐息だけが響き渡る。

 

「…これがお前の答えかよっ…」

「…ずっとずっと、我慢してた。マリウス、俺はお前の隣に居たいんだ。出来ればずっと。一生をかけて」

唇を離したドミニクはマリウスの身体を強く強く掻き抱いた。マリウスは少し黙り、そしてゆっくりと抱き締め返す。

「…責任感とか、そんなつもりなら俺は…」

「それだったら俺だってまだ我慢出来たよ。だけど残念ながらそれ以上に俺はお前が大事で一生側に居たいと思ってしまったんだ。マリウス、だから一生のお願いだ」

彼の手を取り、薬指に恭しく口付けた。


「俺と人生を歩んで欲しい、絶対に独りにしないから。な?マリウス、お前が大好きだ」

その言葉にマリウスは涙を流して頷いた。数ヶ月前、海の見渡せる丘で流した涙なんかよりも儚くて、そして優しい涙だった。

二人が出した答えは何よりも幸福で、何よりも傷ついた二人にとっては最高の結末だった。