穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

狡くて×可愛い

フューズとグラズのお話。


【狡くて×可愛い】


無意識な可愛さほど罪深いものはないと思う。戦場で静かに獲物を狙う孤高の狙撃手である彼奴が良い例だ。

「フューズ、終わったぞ」

静かにドラグノフのスコープから目を離し、俺を見つめてくる水色の双璧は充血で赤くなっていた。

「…相変わらず躊躇いがないな」

「そうか?…終わったことだから」

「まあ、お前は優しいから辛かっただろう?年も幼い少年兵を狙撃するのは…」

「国家に仇なす者は全員敵だ、もう終わったから基地へ戻ろう。フューズ、帰ったら甘い物が食べたい。付き合ってくれるか?」

「…あぁ、好きな物を買ってやるから。お疲れ、ドラグノフのケースくらい持たせろ」

「ありがと」

戦場で相棒としてグラズの背中を守るのが俺の役目であり、グラズを褒めて労うのも自身の役目で特権なんだと今更ながらしみじみと感じていた。


***

「はい、好きなだけ食べろ。大好きなんだろう?」

「ありがとうっ…!わー、任務頑張って良かった。フューズ、お金良いのか?何かいつも甘い物買ってくれるから」

「いや、気にするな。お前の為に何かするのが最近好きなんだよ」

「…無意識に甘やかすよな、あんたは」

「良いじゃないか、俺の癒しの時間なんだから」

基地へと戻り、グラズを食堂へ連れて行けば彼が大好きなドーナッツをトレイに10個ほど乗っけて甘いカフェオレと共に差し出した。

もぐもぐと美味しそうに食べるグラズの顔を見て俺は自然と口元が緩むのを感じた。

戦場でドラグノフを構えているグラズと、今目の前でドーナッツを食しているグラズは同一人物である。

まったくもって顔つきが違うのだ。

戦場で躊躇いも無く引き金を引くグラズは精悍であるが、目の前で胃もたれしそうなくらいに甘ったるいドーナッツを食しているグラズは幼い子どものようだった。

「…美味いのか?」

「最高だ。やっぱり任務で神経すり減らしてるから甘い物が美味く感じるよ。だけどあんたが買ってくれて、褒めてくれたからかな。フューズ、ありがとう」

…おい、おいおいおい…。

その無邪気な笑みは反則だろう?

そんな笑顔を俺に向けるな、
そんな可愛い声で名前を呼ぶな、
色々と無意識は罪深いんだから、な?

「…フューズ?顔が固まっていつもより仏頂面じゃないか。あんたも食うか?まだドーナッツ有るよ?」

「いや、甘い物は苦手だから遠慮するよ」

ブラックコーヒーを口に含みながら俺はグラズを見つめる。口にドーナッツを頬張りながら砂糖たっぷりのカフェオレを飲み干すグラズは本当にあどけなく、そして可愛かった。

あ、クリーム付いてる。

「…グラズ」

「ん?…あ、あんた不意打ちとか酷いだろ!」

周りに誰も居ないのを確認し、一瞬で口の横に付いていたクリームを舐めとってやった。

…やっぱり甘い物は苦手だ。

「…仕返しだよ、色々とな」

「…っ!悪趣味だ!」

「己の可愛さを自覚しないお前が悪い。ほら、早く食べないとまた訓練に遅刻するぞ?グラズ、ほら…」

「シュフラット」

…あぁ、お前は本当に可愛くて狡い奴だよ。

俺を黙らせる為にわざわざ甘い物を食べた唇でキスをするなんて、悪趣味だけど可愛いよな。

…くそ、甘ったるい。

「…フューズ、ふふ、柄にもなく顔が赤いぜ?あんたのそう言う所、俺大好き」

「グラズ、夜は暇か?」

「…いや、ちょっと…」

「明日は非番だよな?俺を黙らせたお礼に少しばかり部屋に来い。もっと甘い物を食わせてやる」

「………あんた、意外に子どもっぽいよな」

「そんな俺の隣にいるお前はもっと可愛くて幼いけどな。ほら、グラズ、急いで食べろよ」

「…ん…」

戦場では躊躇いもなければ、非情な彼の瞳は少しばかり羞恥で揺れていた。グラズ、今夜はゆっくり味わえよ?

まあ、少しばかりは加減してやるが。

 

 

口に残る僅かな甘みより、今夜は甘やかしてやろう。無意識な可愛さが罪ってこと、はっきりさせてやるよ。

可愛いグラズ。