穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

冷えた指先を温めるなら

カプカンとグラズのお話。


【冷えた指先を温めるなら】


「グラズ」

カプカンはグラズの肩に積もった雪を払いながら狙撃手である彼に話かける。

数分前まで獲物に狙いを定めていた青の双璧はカプカンの顔を見つめて小さく息を漏らす。

「…寒いな」

山の中で雪が散らつく中、カプカンとグラズはシックスからの指示でテロリストが潜伏している山小屋の近くで待機していた。

グラズの狙撃は静かに敵の頭を撃ち抜き、カプカンの罠は的確に相手の命を奪っていった。

殺伐とした空気から解放されたグラズはドラグノフを仕舞いながら雪が降る空を黙って見上げた。

「雪が降る山の中って、何だかロマンチックだよな」

「そうか?俺はただ寒いだけにしか思えないが。それよりもグラズ、早く下山しよう。雪が積もらないうちに」

「…せっかく雪が散らついて銀世界が生まれようとしているのに…?勿体無い、少しくらい絵を描いても良いか?」

「お、お前…、テロリストを始末した後に良く何かをする気力が湧くよな。指が冷えて鉛筆が動かないんじゃないのか?」

「…だったらカプカン、あんたが冷えた指先を温めてくれ。そうすれば俺は鉛筆を持てる」

グラズは空に向けていた瞳をカプカンに向ける。その瞳は何かを見通しているかのように酷く純粋な色をしていた。カプカンはグラズを見つめ返して小さく溜息をついた後に彼の手を取った。

「俺の手だって冷たい」

カプカンの手も冷え込みのせいでかなり指先が冷えて赤くなっていた。カプカンはグラズの指を見つめながらふと思ったのだ。

「…お前の指先は綺麗だな」

冷たい指先をグラズの指先に絡めながらカプカンは呟いた。グラズはカプカンの指先に絡め返しながらぎゅっと手を握り締めた。

「筆以外、俺は手にしたことがなかったから…。あんたの指はそうだな、貫禄があると言うか…安心するよ」

「…さすがは坊っちゃんだ。まったく綺麗な指をしているよ。グラズ、お前は引き金を弾く時と絵を描いている時、どちらが楽しい?」

カプカンの言葉にグラズは青の双璧をふっと細めて呟いた。

「…愚問だな」

グラズはカプカンを己の腕の中に引き寄せて耳許で小さく囁いた。

「…あんたとこうして居る時が一番楽しい」

「悪趣味な子どもだよ、まったく…」

「そんなこと言わないでくれ、ほら、こうして身体を抱きしめ合った方が寒くないし。俺はあんたの温もりを感じて安心するんだが…、あんたは違うのか?」

グラズの問いにカプカンは敢えて口を閉ざした。しかしグラズは口を閉ざした理由を分かっていたようで黙ってカプカンを抱き締めていた。

雪は少しずつ粒を大きくして降り積もっていく。カプカンの身体は少しずつ速くなる鼓動ともに温まっていき、やがてグラズの首筋に顔を埋めていった。

グラズは満足げに微笑んで冷えた唇を彼の薄くて赤い唇に重ねて瞳を閉じていったのだった。