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レインボーシックス小話③

 

エコー×グラズ

【好きだから怒るんです】

 

「もうエコーなんて知らない。二度と戦場であんたを守ってなんかやらないからな」

いつもなら穏やかなグラズが声音を冷たくしながら呟いた言葉はエコーに対して向けられていた。

エコーはグラズの水色の透き通る瞳を見つめて黙ってしまう。任務が終わったら満面の笑みで甘えてくるグラズが酷く怒っているのだ。

理由は簡単である。

グラズが狙撃しようとした時にエコーが彼の射線に出てしまったからだ。グラズの銃弾はエコーの頬を掠めて敵に貫通した。血が頬を伝って落ちる中、エコーはグラズに酷い言葉を浴びせたのだ。

『お前の狙撃が下手なせいで怪我をした』

その言葉を聞いたグラズは感情を失った人形のように無表情になり、エコーの顔すら見なくなった。彼の冷たい声音はエコーの心にぐさりと突き刺さる。

「…グラズ」

「…何だよ」

「…謝る、悪かった」

「…あんたの顔なんて見たくない」

「…俺が悪かった、だから…」

エコーがグラズの腕を掴んで彼の顔を見た時だった。グラズの水色の瞳からは大粒の涙がポロポロと零れ落ちていく。手に持っているドラグノフが濡れて行くのをエコーは見つめて彼の頭を優しく撫でた。

「何でそんな大泣きしてるんだよ、グラズ」

エコーが聞くと、グラズは泣きながらエコーの顔をただただ見つめて声を震わせる。

「………が…」

「…え…?」

「優くんが、優くんが死んじゃうと思ったから俺は…!俺は君を助けたくてて引き金を引いたんだ、なのに君が…冷たいことを言うから」

グラズはドラグノフを地面に置いてエコーにぎゅっと抱き着いた。エコーはグラズの言葉に己が吐いた言葉を酷く後悔して彼を抱き締め返す。

「…ごめん」

「優、くん…、俺、君が居ないと生きて行けないんだよ?!君を守りたい、君に死んで欲しくないから…だから怒ってるんだ!あの時、下手したら優くんは…」

「…あぁ、分かってるよ、ティムール」

『死んでいたかもしれない』

グラズの言いたいことは充分分かっていた。だけど本当は、エコーだってグラズに言いたいことがあったのだ。

「俺がお前の射線に出たのはな、お前が狙われていたから。ティムール、俺だってお前を失いたくないんだ!…好きな奴を守りたいって思うのはそんなに悪いことか?」

エコーの想いにグラズは首を横に振ってありったけの涙を流してぎゅっとエコーをより一層抱き締めた。温かなグラズの体温と、泣きじゃくる彼の姿が可愛くて。愛しくて。

グラズの顔を見つめたエコーは涙を指で拭って優しく微笑んだ。

「…ティムール」

「な、なに…?」

「俺が好きか?」

「…な、んで…、そんなのっ…!」

「俺は自分よりもお前が生きていて幸せでいてくれればそれ以上に何も望みはしない。なぁ、キスさせろ」

「…優くん…」

エコーはそっとグラズの顔に触れて唇をゆっくりと重ねていく。グラズはエコーの唇の体温と彼の言葉で感じていく幸せを噛み締めながら瞳を細めていく。

ほろりと一筋の涙が頬を伝って落ちていく。それは何よりも綺麗で、何よりも幸せな涙だった。