穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

桜日和は恋愛前線

【桜日和は恋愛前線】


桜が満開の夜、田波と江夏は二人きりで夜桜が綺麗に見れる場所にブルーシートを引いて盃を酌み交わす。酒に弱い江夏を気遣った田波は度数の低い缶チューハイを江夏に手渡した。

「た、田波先輩…??」

「お前、酒弱いからって黙ってることはない。ほら、缶チューハイくらいなら飲めるだろ?」

「ありがとうございます、折角貴重なお休みを俺なんかに声をかけてくれてありがとうございます、嬉しいです」

「…そうか?俺は江夏、お前だから花見に誘ったんだ。お前以外に声なんてかけないよ」

田波は日本酒を一口飲んで空を仰ぐ。今宵は満月、月明かりに照らされた桜の木からはヒラリと花びらが一枚、江夏の頭に乗っかった。田波は江夏の頭に触れて花びらを摘んで微笑んだ。

「江夏の頭に花びらが」

「た、田波先輩っ…!いきなり触れないで下さい、もう!…びっくりしました」

顔を少し赤らめた江夏は怒り気味に田波の顔を見上げた。月明かりに晒された江夏の顔は幼さの中に可愛さ、そして艶やかな印象を受けた。

田波は無意識に江夏の顔を手の平で包み込み、まじまじと彼の顔を見つめる。田波に顔を見つめられている江夏は顔を赤くしながら呟いた。

「あ、あの…」

「ん?」

「俺の顔なんて見ても面白くないでしょう?離してくれませんか?」

「…離せるもんなら、簡単に目を離せるならとっくに目を離してる。江夏、お前は綺麗だな」

月明かりの下、桜は満開で。

そんな穏やかな時の中、田波は江夏の顔から手を離そうとはしなかった。江夏はどうしようもない気持ちでいっぱいになり、顔を俯かせながら呟いた。

「田波…先輩は…お、俺をどうしたいんですか」

「別に今のままで構わないさ、江夏の綺麗な顔が見られるなら何だって。いや、綺麗なのは顔だけじゃない。瞳も、唇も、心も…。全部綺麗だ」

柔らかな夜風が二人の頬を優しく掠めて行く。その風に桜の花びらがヒラリヒラリと散って地面に落ちていくのを江夏は見つめていた。

「….田波先輩…」

真っ直ぐと江夏は田波の瞳を見つめた。田波の言葉に頬を赤く染める江夏を、田波は我慢できなかったのか優しく頭を撫でながら小さく言葉を漏らす。


「…嫌なら突き飛ばせ、まだ間に合う」

「嫌なら、嫌だったら田波先輩、俺はあなたを望んだりはしないですー・・・」

江夏の行動は肯定を意味していた。田波は小さく口元に笑みを浮かべながら唇を奪っていく。

目を見開いた江夏はゆっくりと田波の唇の体温を受け入れていった。満月の光は眩しくて、桜はヒラリと頬を掠めて落ちて行く。

目を瞑りながら江夏は田波の唇の体温に酔いしれてしまう。お酒なんかよりも酔ってしまうくらいにクラクラしてしまうのはきっとこの熱のせいだ。

田波の唇が離れた頃、江夏は今までにないくらいに頬を桜色に染めて濃紺の空を見つめた。

「…田波先輩」

「何だよ…」

「俺、あなたに恋をしてもいいですか?」

「…俺は江夏、初めからお前に恋をしてお前に惚れていたよ」

「は、初耳ですよっ…!」

「嫌か?」

「…嫌じゃないです」

「じゃあ良いじゃないか。江夏、俺もお前に恋をしてる。だからこれからも二人で紡いで行こう。俺とお前の関係を、ずっとずっと」

「はい…、田波先輩、好きです…」

「俺もだ、江夏…」

夜桜が咲き誇る空の下、恋に落ちる二人が居た。唇の温もりも、交わした言葉も、二人しか知らない。

そう、誰も知らない恋愛前線。