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青で包み込んで

 

ルークとミラさん。

 

【青で包み込んで】

 

「…坊やの瞳は綺麗ね」

ミラはルークの隣に座ってルークの青く輝く双璧を見つめて呟いた。ミラはスペインの特殊部隊からレインボー部隊に配属された防衛作戦のエキスパートだ。


外のベンチでランニングを終わらせて涼んでいたルークをたまたま見かけたミラは作戦を共にすることが多いルークに声をかけたのだ。

「お、俺は坊やと言われるほどの年齢じゃないです…!俺はずっと色素が薄くて気にしていたんですけど」

「綺麗な瞳よ、見たこともない綺麗で穢れのない青ね。故郷の地中海のように広くて綺麗な瞳よ。ふふ、褒めただけで顔を真っ赤にするなんてウブな坊やね」

ミラはルークの顔に手を伸ばしながら微笑んだ。ミラの瞳にルークは吸い込まれるように見惚れてぼーっと彼女を見つめてしまう。

「…あなたは俺をどうしたいんだ?」

「どうもしない、ただ見ているだけ」

「…そうやって俺をからかって楽しいんですか」

「君が綺麗な物を持っているのが悪い、全てはそのせいじゃないのかしら。私に他意はない。坊や、良く見せなさいな。綺麗なその瞳をもっともっと、私にお見せなさい」

ミラの指はルークの彫りの深い顔をなぞり緩々と彼の顔に触れる。女性特有の綺麗な指先で触れられればルークは顔を真っ赤にしてしまう。

そんな姿を見たミラはルークの顔から手を離して真顔になって黙り込んでしまう。不審に思ったルークがミラの顔を見れば、彼女の顔は一気に破綻して大笑いしていた。

「は、ははっ…!ルーク、君すごい真っ赤じゃない。もしかして女性に免疫が無いのかしら?私みたいな年増の女にからかわれただけで真っ赤になっちゃって本当に可愛いんだから」

ミラの顔を見たルークは呆気に取られた表情を浮かべ、やがてミラを少し訝しげな表情で見つめて呟いた。

「…ミラさん」

「何かしら?ははっ、からかったことなら謝るけど…」

ルークはミラの手を取り、青い瞳で彼女を射抜くように見つめる。まるでミラを覆い尽くす深海のような色でルークはミラを見た。

「俺が男ってこと、分かってますか?」

「…分かるわよ、立派な坊や」

「…だから俺は坊やじゃない、あなたはそうやって俺をからかって楽しんでるけれど…ミラさん、あなたは俺の気持ちを知っていて遊んでいるのか?答えて、答えないならこの手を離しはしない」

ルークの声音は本気だ。

ミラはルークの顔を見て彼の肩に額を押し付けながら呟いた。

「…ルーク、私は…」

「…素直になって、俺は絶対に嘘を付かない。それはミラさん、あなたが一番知っているでしょう…??」

スペインから来たばかりで右も左も分からないミラに一番最初に声をかけたのも、分からないことを教えてくれたのも、人を信じる大切さを教えてくれたのも。

…すべてはルークだった。

ミラはルークに対して思っている気持ちを静かに吐露していく。

「…私、私は君が好きだから、だからからかってしまった。瞳が綺麗で、だけどそれ以上にルーク、君の心に私は惹かれていたよ」

「やっとミラさん、あなたの本当の気持ちが聞けました。俺はあなたより歳下だし頼りないかも知れない。だけど俺は絶対にあなたを一人にはしないから。ね?…俺の瞳が嘘を付いているように見えますか…?」

ミラはルークの透き通る青の双璧を見つめてゆっくりと見上げた。瞳に映るのはミラ自身だけだった。ルークの手を握り返し、彼女はマリアのように微笑んだ。

「….私の扱いは難しいよ、それでも君は後悔しない?」

「当たり前です、俺が見ているのはあなただけですよ。誰よりもあなたを大切にしたいと思ってます、この気持ちに嘘偽りはないですから」

「ならルーク、これからも私だけをその深い青で優しく包み込んで。私を一人にしないで、絶対に私を…」

「….大丈夫、約束します」

ルークは穏やかに笑いかけてより強くミラの手を握っていく。何よりも綺麗な青の瞳はミラだけを映し出し、そしてその視線は海のように深くて温かいものだった。