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それは憧れ以上の恋心

【それは憧れ以上の恋心】


「ほら、頭に埃が付いてるぞ?」

「あっ、ありがとう…!ごめん…」

久しぶりに母国のフランス・GIGNのオフィスに戻ったルークとドクが任されたのは資料室の清掃だった。几帳面なドクが居なくなってから約二年、GIGNのオフィスはかつての清潔さが無くなっており、まるでゴミ屋敷のようになっていた。

ドクと付き合いの長いルークは彼から『資料室の掃除を一緒にして欲しい』と頼まれたので休みを返上してオフィスに足を運んだのだ。

「ルーク、君は一人暮らしが長いと聞いたが掃除は得意なのか?」

ルークの頭に乗った埃を取りながら聞いて来たドクにルークは顔を赤くしながら微笑んで呟いた。

「確かに一人暮らしは長いが、お世辞にも得意とは言えないかな…、最低限の片付けしかしてないからドク、あなたから見たら散らかってると思うけど…」

「そうなんだ、意外だね。私も実は独り身なもんでね…。習慣的に綺麗にする習慣が身についたみたいで。細かいみたいなんだが意識はしてないんだ」

「…ドク、確かあなたにはフィアンセが…」

ルークは掃除の手を止めてドクを見つめてしまう。ドクの瞳はルークをしっかりと捉えており、困ったように微笑んで呟いた。

「あぁ、確かに私には婚約者が居たんだ。製薬会社の令嬢だったんだけど、見事に破綻したよ。…私の性格のせいなのかな、はは、この歳でこんなんじゃ一生結婚出来ない気がする。まあ、する気なんか無いんだけどね…」

ドクの困った微笑みを見たルークの心は複雑だった。歳上だけど優しくて頼りになるドクに対してルークは僅かな恋心に似た感情を抱いていたのだ。

ルークはドクの言葉に対して静かに自身の気持ちを呟いた。

「…ドク、あなたは優しくて穏やかでどんな時も自身よりも周りを優先にする強い人だ。俺にとってあなたが一人なのはかえって好都合なんだが…。俺はあなたをその、憧れ以上に…」

「ルーク…、それはどういう意味だ?」

ドクはルークの手首を掴んで真っ直ぐと彼の顔を見つめる。ドクの穏やかで優しいブラウンの瞳とルークの透き通る輝きを持つブルーの瞳の視線がぶつかり合う。

「あ、あなたに恋をしてるんだっ…!ごめん、ずっと言うつもりなんてなかった。あなたに俺が相応しいか分からなくて。黙ってこの思いが憧れで終わるのを待っていたが我慢できなかった。やっぱりドク、俺はあなたが好きだ、相棒なんかじゃもう我慢できない、一歩先に進ませて欲しい…」

ルークのひた向きで凛と響き渡る声はドクの心に優しく流れ込んで行く。いつだってドク自分を信じてくれるルークの思いにドクはゆっくりと頷きながら呟いた。

「…私が婚約者と破綻したのは君が好きだったから。ルーク、私もずっと君と同じことを思っていたよ?君に背中を守って貰うたびに『あぁ、私は君の特別になりたいんだ』ってね。いつだって真っ直ぐに太陽みたいな君が大好きだ。私は臆病で弱いし強くはない、だけど好きな人を守る為なら強くなりたいとは思える。レインボー部隊で私が頑張れたのは君が居たからだ」

ドクの言葉にルークは様々な思いを巡らせて行く。いつも穏やかな笑みで優しく包み込んでくれたドクも自分自身と同じ思いを抱いて居たんだと。こんなにも近くていつだって隣に居た彼が同じ気持ちだったとは。

ルークはドクの腕を掴んで愛しげに彼を自身の腕の中に強く強く閉じ込めながらぎゅうっと抱き締めた。

「…そこまで言ってくれるなんて思わなかった」

「私の思いは君にしか向いて居ないからね。ルーク、私は君が大切だ。何よりも、自分自身なんかよりもな…。だから、ね?」

ルークの唇に自身の唇を重ねてドクは瞳を閉じて行く。ルークは驚きに目を見開きながらも愛しげに唇を受け入れて行く。

(…ドク、俺もあなたが何よりも大切で愛しい。もし仮に、自分自身の命が尽きてしまっても。あなただけは絶対に守るから…)

二人きりの資料室、重なる唇と二人の思いを邪魔するものは何一つなかったのだった。