穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

切なくも最期まで

【切なくも最期まで】


「カプカン」

「…何だ」

「俺、お前に黙っていたことが有るんだ」

宿舎に設けられている二人部屋で罠の作成をしていたカプカンにタチャンカがいつもより神妙そうな顔で話しかけた。

「隠し事が下手なあんたが俺に?なんだ、言って見ろよ」

カプカンは手元から目線を動かさず、タチャンカの声にのみ耳を傾けていた。タチャンカは少しだけ口元に笑みを浮かべながら呟いた。

「…俺、余命一年しか無いんだってよ」

「…変な事を言うなよ、縁起でもない。あんたは本当に冗談が好きだよな」

「カプカン、俺の頭の中に弾丸が残ったままで手術しても助からないのは知っているだろう?毎日薬を服用して頭痛を押さえるので精一杯で、立って生活するのが精一杯なの、分かってるだろう?」

タチャンカは泣きそうな声でカプカンに言葉を向けて行く。カプカンは手元からタチャンカの瞳に視線を合わせた。

誰よりも明るくて強くて豪快だったタチャンカの頭の中には過去の戦闘で被弾した銃弾が残ったままである。取り出す為の手術をしてしまえば脳内で出血が広がり死に至るため、取り出すことが出来ずにいた。

いつ命を落とすか分からない状態でタチャンカは毎日を過ごしていた。先の検診で下された診断は余命一年。持って三年だろうと軍医に言われてしまったのだ。

「確かにあんたが爆弾を抱えて毎日を過ごして居るのは知ってるさ」

「…あぁ、お前を庇ったから俺の頭の中に銃弾が残ってるんだからな。カプカン、お前を敵から庇ったから俺は…!」

「あんたが守ってくれたから俺が今生きている。それには感謝してもしきれないさ。だけどな、俺を庇ったせいで自身の余命が一年しかない?俺のせいにするな、何故抗おうとしない?!俺があんたに死んで欲しいと思ってるわけないだろうがっ…!」

カプカンは声を荒げながら泣きそうな顔をして思いを吐き出した。カプカンを過去の戦闘で庇ったためにタチャンカは己の身体に爆弾を抱えて毎日を過ごして居る。

カプカンにとってタチャンカは絶対的な恩人であり相棒であり、それ以上に愛しくて堪らない存在だ。

「…いつ死ぬか分からない状態で不安にならない方が可笑しいとお前は思わないのか」

「そんなの分かってるさ、タチャンカ、俺はあんたが愛しくて堪らない。抗って抗ってどうにもならない最期になった時、俺もあんたの後を追って逝ってやる。一人にはしない、これなら安心か?」

カプカンの言葉にタチャンカは顔をくしゃりとしながら彼を抱き寄せる。大きな身体なのに今は弱くて脆く、そして崩れそうなタチャンカをカプカンは抱き締め返した。

「お前が死んじまったら俺が庇った意味が無くなっちまう。カプカン、お前は絶対に…」

「じゃあ生きるという選択肢をきちんと望んでくれよ…、タチャンカ、俺だってあんたに死んで欲しいなんて思ってない!叶うなら最期まで、年老いて一緒に笑いたいんだ…、俺はあんたが居ない未来なんて望んで無いんだよ…!」

カプカンの悲痛な思いにタチャンカはついに瞳から涙を流した。感情の糸が切れたかのようにタチャンカはカプカンを抱き締めながら涙を静かに流して行く。

「俺だってお前とずっと一緒に居たいんだ、年老いてもずっと馬鹿やってお前の笑顔を見て暮らしたいよ…!当たり前だと思っていた未来が暗くなるなんて俺だって予想すらしてなかった、なあ、カプカン、俺はお前と生きられるならどんな事だってするよ…。だから今はただ、お前に触れていたい。駄目か…?」

タチャンカは涙で濡れた瞳でカプカンを見つめて小さく言葉を漏らす。カプカンはタチャンカの瞳に浮かぶ涙を指で拭いながら瞳の横に小さく口づけを施した。

「…タチャンカ、俺はあんただけのものだ。誰にも触れさせはしない、あんたと生きる未来を俺も望んでいるからな。だからこそ、最期まで俺はあんたを思う。愛してる、あんたが隣に居ない未来を俺は望みはしない」

「マクシム…」

タチャンカはカプカンの名前を呟きながらそっと乾いた唇をカプカンに重ねていく。

未来なんて誰にも分からない。

結末がどうなるかなんて誰にも分からない。

ただ今言える唯一のこと。

それは最期までお互いを想い合うこと、そして笑い合うことだ。タチャンカからの口づけを受け入れながらカプカンは密かに思う。

願わくば、最期まで切なくとも悔いが無いように過ごしたいと。そして最期のその時は笑っていたいんだと。

今以上に幸せだと思って逝きたい、出来るなら二人で。

カプカンはタチャンカをより強く抱き締めながら一筋の涙を零して一瞬よりも儚い瞬間に想いを馳せていったのだった。