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穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

機械音痴なドク


ルークとドクのお話。


【機械音痴なドク】

 

「なぁルーク」

「どうしましたか?」

オフィスではアサルトスーツを脱ぎ、ワイシャツにスラックス姿のルークは休憩室で軍医・ドクに声をかけられた。

コーヒーブレイクに洒落込もうとした昼時に相棒である歳上のドクに声をかけられてしまえばルークが逆らえる訳もなく、煙草臭い喫煙ルームに足を運ぶ。

ドクは白衣にワイシャツ、そして首元を少しだけ緩めたネクタイ姿だった。煙草を吸いながらドクはルークに困った表情を向けながら呟いた。

「…君は若いから機械とか得意か?」

「…機械と言いますと…?」

「最近、スマートフォンに携帯を変えたんだがすっかり使い方が分からなくてね。モンターニュやトゥイッチに聞けばいいんだろうが、さすがに恥ずかしくてね。ルーク、確か君と同じ機種の筈なんだが…」

口から漏れ出る煙は換気扇に吸い込まれて消えて行く。ドクは煙草の吸殻を捨ててドサっと腰を下ろした。

ルークもつられるようにドクの隣に腰を下ろす。ドクの手には真新しいスマートフォン。ルークが使っているスマートフォンと同色、同一機種だ。

「あ、あの…。何で俺と同じ機種なんですか?!」

「んー?あぁ、分からなければ君に気軽に聞けるだろう?私が君と話したい口実にするには充分だ。それに職場だとあまり仲良く出来ないだろう?…私たちにプライベートは皆無だ。だからせめて、な?」

ブラウンの瞳は弧を描いてルークを見つめてくる。ドクの瞳に吸い込まれるようにルークは彼を真っ直ぐと見つめた。

「あなたって人は本当に可愛い人ですね、ドク。俺の休憩時間を割いてまでお話したかったんですよね。良いですよ、お望み通りあなたの為に時間を使いましょう。何が分からないんですか?」

ルークが尋ねると、ドクはスマートフォンをルークに手渡して恥ずかしそうに呟いた。

「写真の撮り方が…分からないんだ…」

「写真ですか?…初歩的な事が分からないなんて、あなたらしくない」

「し、仕方ないだろう?!私は機械が苦手なんだからな!それに写真撮れるようになったらルーク、君の寝顔や笑顔をこっそり撮れる。良いじゃないか…」

少しだけ拗ねた口調で話すドクをルークは愛しげに見つめて彼の手を握る。スマートフォンを一緒に手に取りながら画面の電源を付けた。

「…俺が待ち受けだ…」

「ま、前の携帯の写真だけは何とか自力で移したぞ!?…まぁ、トゥイッチに少しだけ助けてもらったけど…」

「しかもかなり前の、あなたの家に初めてお泊まりした時の奴じゃないですか?俺とあなたが『相棒』以上の関係になって初めて身体を重ねて時の…寝顔…」

「君が…私を激しく求めて来て、何度も行為に身を沈めた夜だったな。ルークの寝顔を初めて見た記念に撮った写真だ…。ってまだ勤務時間中なのに、私の馬鹿!」

「慌てふためかなくても、今は俺とあなたしか居ないですから。折角だ、一緒に写真を撮りましょう?写真の撮り方を教えて上げますから」

「あ、あぁ…って、ちょっ…!んっ…?!」

ルークはドクの肩を抱き寄せてスマートフォンのカメラアプリを起動してパシャりと撮影をする。一瞬の出来事だった。ドクの唇を奪うのも、二人きりの撮影も一瞬だった。

離された唇を指でなぞりながらドクはルークを少しだけ怪訝そうな表情で見つめて呟いた。

「もう、いきなり過ぎるっ…」

「そうですか?…ほら、良い写真が撮れましたよ」

ルークは手に持っていたドクのスマートフォンを彼に返して撮影したツーショットを見せながら囁いた。

ばっちりと唇を奪われたドクと、満足げにキスを堪能しているルークがそこには写っていた。

「待ち受けにして下さい」

「恥ずかしいから嫌だ…」

「…俺の貴重な昼休みを潰した罰です、というより俺たち恋人同士で同棲もしてるんだから良いんじゃないですか?」

「それもそうだが…しかしだな…!」

「何をそこまで嫌がるんですか?」

「…画面を見るたびに君を、大好きな君を思い出す。仕事に私情を挟むのは私の理に反するんだ!…もう、続きは家で教えてくれ」

顔を赤らめながら言葉を漏らすドクにルークはふっと笑みをこぼしながら彼の隣から立ち上がり、喫煙ルームのドアに手をかける。

「機械音痴なあなたも堪らなく可愛いですよ、俺にも後でその写真、メッセージで送って下さい。あと、煙草の本数は減らして下さいよ?」

「….メッセージの送り方が分かったら送るさ。煙草は善処しよう…」

「宜しくお願いしますね、俺はこの後訓練何でもう戻らないと。夜は覚悟してください」

ルークはそう言うとヒラリと手を振って喫煙ルームを後にする。ドクは懐から煙草の箱を取り出して一本口にして火を灯す。

「…まったく、私の身体が持つかな。色んな意味で心臓に悪いよ、まったく君って人は…」

一人で煙草を吸いながらドクは頭をくしゃりと撫で回す。ほんのりと頬が熱いのが分かるくらいには顔が赤かった。

スマートフォンを覚束ない指先で操作しながらドクは待ち受けを変えていく。

先ほど撮影したルークがドクの唇を奪いキスをしている写真だ。やっぱり恥ずかしさが勝ってしまうが少しでも大好きな人の顔を見ていたいドクはそっと待ち受けを変えてスマートフォンの電源を落とす。

「…今日くらいは素直に君の言うことを聞いてあげるよ、ジュリアン」

煙草の火を消してドクは医務室に戻る為に立ち上がる。終業まで後数時間、恋人同士に戻れるまでの数時間は待ち受けを見て頑張ろう、ドクはそんな風に思いながら喫煙ルームを後にした。