読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

光の中で

【光の中で】

*『狂気の雨』の続き。

 

雨が止んだ。

俺は空を見上げて手に力を込めて傘を強く握り締める。あいつは闇に落ちてしまったのだろうか。

空の隙間から見える月明かりのように、暗闇に包まれたお前を俺は照らしてやりたい。

どんなに冷たくても、
どんなに残酷でも、
どんなに極悪でも。

「俺はお前の体温を忘れたりはしねぇよ、馬鹿野郎…」

水たまりに足を浸せば自身の影と同じようにゆらりと揺れ、そして月明かりに包まれて輝いていった。


***


最後に会った日から約半年。

バンディットは未だに姿を見せない。

生きているか、死んでいるか。

それすらもう、誰にも分からない。

俺にすらもう、分からない。

「会いたいよ、お前の唇の体温をもう一回だけ…、神様、叶うならどうかもう一度あいつに会わせてください」

これが俺の最初で最期の願いだ。

どんなに身を粉にしてあいつを探しても近くには居ない、いつだって側に居てくれた優しいお前はもう何処にも居ないんだ。

バンディット、俺はお前を愛してるよ。お前だけを愛してる、だからお前が暗い闇の中に居るのなら。お前が狂気に雁字搦めになっているのなら。

…俺はお前を照らす光になりたいんだ。

「…もう一度だけ、唇の体温を…」

俺は薄暗い教会の中で一人神に祈りを捧げていた。ステンドグラスは妙に神々しくて、太陽の光が透き通って薄暗い聖堂を照らす。

分かっている。

どんなに願ってもお前がもう二度と戻らない事くらい分かっていたはずなんだ…。

 

 

 

 

 

 


「そんな所で神に願い事か、お前らしくないぜ」

 

 

 

 

 


…あぁ、分かってるさ。

これが幻聴だってことも、
懐かしいと感じたことも、
頬を伝って落ちていく涙も。

全部が儚い幻想だってことも、俺は分かっていたのに。

「…今更、今更お前が何の用だ…」

「半年前、俺はお前の前から姿を消した」

「そう、だな…」

「狂気に身を沈めてお前の隣で歩く未来を捨てようと何度足掻いた事か。だけど俺には出来なかった」

俺は背後から近づいて来る足音の持ち主を知っている。神に願うのは最初で最期だと誓ったのに。

どうして、どうしてだよ…。

声にならない想いは呆気なく口に吸い込まれて、大好きだったあいつの体温と共に包まれて行く。

「んっ、んんっ…」

もう何だっていいんだ。

お前がもう一度、俺の側に来てくてたことが幸せで堪らないのだから…。

 

 

 


「…ずっとお前の事を思って半年間合法的な殺人を繰り返して来た。血で汚れた世界はもう見たくはない、これが俺の選んだ答えだよ。イェーガー、ただいま」

「あぁ…おかえり。…もう雨は止んだのか?」

瞳を細めてお前は穏やかに微笑んで呟いた。

「…ああ、雲は無くなって綺麗な光が俺を照らして見つけてくれたんだ。もう迷わないよ、イェーガー…」

『お前が俺を此処に連れ戻してくれたのだからな』

バンディット、もう離れるな。

ずっと側に居て。

瞳から一筋の涙が頰を伝って落ちていく。