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穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

送りつけたお話(3)

「…何なんだよ、畜生っ…!!」


誰も居ない、資料室でミュートは怒りに任せてデスクに八つ当たりする。


(なんで俺があんな馬鹿に振り回されなくちゃ行けないんだ、ムカつくっ……)


***
事の発端は、
今から約3時間前。
演習場での実戦訓練をしていたときである。

ミュートはいつものように、自身の開発したデバイスを使った訓練を行っていたのだ。

(…よし、今日も範囲良し、ドローンもきちんと止まってるな)
自身の開発した、
「モニ」をその場から取り外そうと、ミュートが屈んだ時だ。

『よぉ、ミュートくん。今日も一人で訓練か、可哀想な奴だぜ』

ミュートの頭上から降りかかるのは、『一番嫌いなタイプ』の人間の声………。

『…ス、スモーク…。なんであんたがここにいる』

非番のはずのあんたが、なんでここにいる?

そんな声が、喉から漏れるのを必死に抑える。

ミュートは立ち上がりスモークを睨む。

『独りぼっちのミュートくんをからかいたくて、遊びに来ちゃった』

口許には嫌みを含んだ含み笑いを浮かべているではないか。

そんな表情をみたミュートは怒りに身を任せてスモークに言い放つ。

『あんたは、どこまで俺を馬鹿にすれば済むんだ?やっている事が子ども以下だぞ。…仕方ないか……』

 


『あんた、低脳で馬鹿だもんな?』

嫌みたっぷりに言い返すと、
スモークは無言でミュートの顎を持ち上げ、顔を近づける。

『…………?!』

気がついた時には遅かった。

…スモークに、唇を奪われる…。
重ねられた唇からは、熱い吐息だけが出てしまう。

やがて、
唇が離れてスモークはミュートに一言呟いた。

『やっぱりお前、可愛いな』

そう言って満足そうな笑顔を向けると、その場から颯爽と立ち去って行くではないか。

(…は…?あいつ、俺にキス…………)

……してきたよな……?!

演習場は運が良く、ミュート一人だけだった。

心の中は怒りと羞恥でいっぱいになってしまう。


***

そんな出来事があったのが、約3時間前の話である。

普段冷静な自分なら、
何があったかなんて直ぐに分析出来るのに。

(俺を馬鹿にしてるのか、畜生……)

冷静になるために、ミュートは一人資料室へと足を運んだのだ。

八つ当たりしたときにミュートは思いきりデスクを殴ったので、手が少し腫れていた。

(…何なんだ、まったく。医務室に行くか…)

ミュートは取り敢えず腫れてしまった手を冷やすため、基地の医務室へと向かう。

 


***


「失礼しま………、なんであんたが居るんだ…」

医務室へ向かい、
中に入るとそこに居たのは…………。

「よっ!怪我なら見てやるよ?」

先程、
無理矢理自分の唇を奪った張本人である。

「…あんたになんか、触れられたくない」

「…良いから見せろって。どうせ、俺のせいなんだろうし」

「…分かってるなら、どうしてあんなことしたんだ?!」

「お前が可愛いから」

ミュートを無理矢理椅子に座らせ、スモークは氷の入ったビニールをミュートの手にあてる。

「…手、腫れちまってるな」

「ムカついたから、デスクを殴ったんだ。あんたがあんなことしなければ俺は痛い思いしなくて済んだんだ」

ミュートは半ば、やけくそ気味にスモークへ文句を言う。

スモークは少しだけ、自嘲気味に微笑んだ。

「俺はお前が好きなんだよ、独りで頑張ってるミュートが。…可愛くて、仕方ないんだよ。…勝手に手を出したのは悪かった」

(なんでそんな悲しそうな顔を向けるんだ……)

ミュートの心は少しだけ揺れ動いてしまう。

「…だ、だったらなんであんな俺のプライドをズタズタにするようなことばかり言うんだ、言ってることと気持ちが反比例してるだろ!?」

するとスモークはじっと、
ミュートの瞳を見つめる。

ミュートの気持ちはざわつくことを覚える。

目の前の男は自分よりも10歳は離れている。

しかし
顔立ちは怖いほど端正で、
見れば見るほど男らしい。

「可愛いやつに意地悪したくなっちまう。自分の悪い癖だってのは充分分かってんだ。…ミュート」

手に当てていた氷は水へと姿を変える。

「お前に対しての気持ちは本物だ、天に誓う。二度とお前が嫌がることなんて言わない。…だからお願いだよ、俺のこと見てくれないか」

(…もう、知らない。こんな気持ちなんて知らない………)

ミュートは溶けきった氷水を机の上に置き、スモークの顔を思いきり自分の顔へ近付ける。

 


重ねられた唇は、やがてお互いの舌を追いかけるように絡み合う。

 


「…ん、ふぁ…………」

仕掛けたのは自分からだ。

しかし、
気がついたら攻め立てるのはスモークの方で。

唇が離されたあと、
スモークはニヤっと笑みを浮かべる。

「もう戻れないぜ?いいのか……」

「…もういい。こうなったら乗り込んだ船だ…」

 


ミュートはスモークに
不敵な笑みを向ける。

「俺を名一杯可愛がれ、スモーク。…可愛くて仕方ないんだったら余裕だろ?」

「言うじゃねーか、まあいい。…ミュート…」

 


スモークはミュートを自分の腕の中に閉じ込める。

「覚悟しろよ、俺はやすやすと好きになった奴を手放したりなんかはしてやれねぇ性格だからよ?」

「…うるさい、あんたは黙って俺を可愛がればいいんだ」

「了解だぜ、ミュート…」

二人はもう一度、
深く深く唇を重ねる。

溶けきった氷水はまるでミュートの心のようである。

…不自然な感情のはずなのに。

この気持ちはやがて、昇華されて行くだろう。

二人は始まったばかりなのだから。