穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

過去作

【恐怖・真夜中のミッション?】

 

 

レインボー部隊の女性陣の間で流行っているのは少し変わったデザインのヘッドギアだ。

「見て見て、これとか怖くない?!」

ヴァルキリー、ミュート、カベイラは任務帰り、ロッカールームでダンボールの中に入っていたヘッドギアを見つけてそれを手に取り眺めていた。

「…悪趣味だな」

「もう!ミュートったら少しくらい興味持ちなさいよ!ね、カベイラも付けてみなよ?」

「…どう?」

「ぶっ…!ふふ、カベイラ似合い過ぎるんだけど?!夜中に出たら怖いよ〜〜!」

「あら、そう?ヴァルキリーも夜中にそれ被って宿舎の中歩いたらみんな怖がるんじゃない?」

「えー?そうかなー?ミュート、どう思う?」

ヴァルキリーに話を振られたミュートは興味無さげというように二人を見てため息をついた。

「怖いわけ無いだろう、俺たちは特殊部隊だからな。疲れたから部屋に戻る、ちゃんと片付けておけよ?」

「もう!ミュートつまんなーい!」

「もう少し子どもらしい所も見せればいいのに」

「「ねー!」」

ミュートはヴァルキリーとカベイラをロッカールームに残して自身の部屋に戻っていった。

…この時まだ、ミュートは自身の身に起きる恐怖に気づくことが出来なかった。

 

 

***

 

 

冷え込みが酷くなった12月下旬の夜、ミュートは頻繁にお手洗いで目が覚めるようになった。

「はぁ…、寒い」

上着を取り、用を足すために宿舎の共同トイレへと向かうために部屋を出る。

宿舎の廊下は簡易照明だけで照らされていて歩く先までは明るく照らされてはいなかった。

「…さっさと済ますか」

自身の部屋からさほど遠くない共同トイレを目指してミュートは歩を進めていく。

暗い廊下、
静か過ぎる宿舎の中、ミュートは額から冷や汗が流れ出てくるのを感じた。

「…俺は特殊部隊の人間だ、お化けなんて信じない。怖くなんてない、大丈夫、大丈夫…」

ミュートは昨日のヴァルキリーとカベイラが付けていたヘッドギアを思い出して嫌なことを想像してしまう。

後ろから追いかけて来たらどうしよう、俺は逃げ切れるのだろうか??

…ミュートは怖いものが大の苦手なのだ。

ホラー映画も、
怖い漫画やドラマも、
まったく見る事が出来ないくらいホラーに耐性がない。

「お化けなんて居るわけない、俺は強い。よし、さっさと済まして帰るぞ。もうやだ…」

気がつけば、宿舎の共同トイレに着いたミュートはさっさと用事を済ませるためにお手洗いに駆け込んだ。

 

 

***

 

 

(はぁ、もう少し明るい廊下にしろよな…)

用を足したミュートは手を洗いながらふと考えた。

宿舎の共同トイレは男女別れてはいるが、同じ場所に作られているので怖がりであろう女性陣が文句を言うのも時間の問題であろう。

「…いや、ここの女性陣に怖がりはいないか」

屈強な人間ばかりだとミュートは女性隊員たちの面々を思い出して小さく呟いた。

手を洗い終わったミュートはさっさと自室に戻ろうとお手洗いから出たその時だった。

…どんっ…!

何かとぶつかったミュートは尻餅を着いた相手に手を差し出して立たせようとした。

「悪い、大丈夫か?」

「……………」

「怪我は無いか?」

「……………」

なかなか言葉を返さない相手を不審に思ったミュートは相手に怪訝そうな視線を向けた。

「何か言わないと分からないだろう?…ほら立てって!」

差し出した手を握って立ち上がった人物の顔を見た瞬間、ミュートは言葉を失って絶句する。

「ひっ…!!」

ミュートが立たせた人物は顔が真っ白く、目の色は真っ赤で不気味な笑みを口元に浮かべているではないか。

まるで般若のような不気味な人物を目の前にして、ミュートは手を振り払い声にならない恐怖を感じながら自室へと走っていく。

 

 

(う、嘘だろっ…?!なんだあれ?!YOUKAI?お化け?幽霊?!勘弁してくれよ…!)

身に迫る恐怖にミュートの思考がパニックになり普段の冷静な判断が出来ずにいた。

部屋まではそんなに遠くないから兎に角全速力でミュートは走って逃げた。

逃げて逃げて逃げまくる!!!

「ミュートく〜〜ん、待ってよ〜〜」

しかし、お化け(?)も全速力でミュートを追いかけてくるではないか。

「ひっ、お、俺が何をしたって言うんだ?!や、来るなっ…!!!成仏してくれっ…」

夜中に全速力で走るミュートと追いかけてくる謎のお化け(?)の追いかけっこは、ミュートの自室の前まで続いていた。

 

 

***

「はぁっ、はぁっ…!流石にもう来ないだろっ、なんなんだ、まったく…!!」

部屋の前で息を整えながらミュートは部屋のドアノブに手をかけた。

何とか巻くことに成功したミュートが部屋に入ろうとした次の瞬間だった。

「ミュートく〜〜ん、何で逃げるのかな〜〜??」

あの、不気味な笑みを浮かべた人物がミュートの真後ろに立っているではないか!!

赤い目も、真っ白な顔も、歪んだ不気味な笑みも。

全部がミュートの瞳から焼き付いて離れない。

「ひっ、ひぃぃっ…!!☆〒÷!?!々?!」

廊下にはミュートの恐怖の叫びが響き続けていた。

***

 

 

「ミュート、一人でトイレに行けなくなっちゃったんだって。可哀想なことしちゃったかな」

「いいのよ、たまにはあの生意気そうな鼻をへし折ってやりたかったんだから!ヴァルキリーは悪くないわ」

「そう?…なら良いんだけど」

ヴァルキリーとカベイラは食堂の宿舎で昼食を取りながら談話を楽しんでいた。

「でもまさか、あのミュートがあそこまでビビるなんてっ…ふふ、思い出すだけで腹が痛い!」

「カベイラったら、笑い過ぎ!もう、私だってミュートがトイレにスマホ落としていったから届けようと思って追いかけただけなのに」

「ま、まあ、あんな白面に赤目のベッドギアを身に付けた奴が追いかけたら誰だって怖がるわっ、ふふ、面白すぎて涙が止まらない!」

昨夜の出来事はほんの出来心で、ただのイタズラだった。

ミュートを驚かせるためにカベイラとヴァルキリーが仕掛けたドッキリだったのだ。

「ミュートに謝った方が良くないかな?」

「いいのよ、謝る必要なんてないわ」

「どうして?」

「…見て見なさい、ほら」

「どれ?」

カベイラが目線を寄越す方向にヴァルキリーが視線を寄越せば、その先にはミュートとタチャンカ、スモークがいた。

「ミュートは仲間との交流がないでしょ?苦手そうだしね。だけどほら、きっと昨日の出来事があまりにも怖かったから相談したんだと思う。タチャンカとスモークが一緒に連れションするみたいよ?ね、ミュートに謝る必要なんてないわ」

「ショック療法ですか?カベイラ姐さん?」

「どうだろうね?…ほら、さっさとご飯食べて次の任務の準備するわよ」

「はーい」

ヴァルキリーはミュートから目線を外し食事に取り掛かる。

ミュートの心が与えられた恐怖によって開かれていけばいい、小さく詫びながら食事を進めていった。