穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

操り人形

【操り人形】

 

田波は湯船の中で江夏を抱き締めながら彼に辛辣な言葉を吐き捨てるように呟いた。

「お前、男の癖に俺が好きなの?気持ち悪いんだけど。俺が江夏、お前を抱いたのは女より締まりが良いからであって、それ以外の理由なんて無いからな」

江夏は田波の言葉を聞きながら身体をびくりと震わせる。浴槽に溜まったお湯が揺れて波を立てていく。

田波と江夏は先輩と後輩という関係であり、身体の関係を結んでいた。言わば『愛人契約』を結んだ関係だった。

妻のいる田波に、男しか好きになれない江夏。この二人の関係はギブアンドテイクな関係であると言えるのだ。

セックスで快楽を得たい田波と好きな人に抱かれたい江夏の爛れた陳腐な逢瀬は一週間に一回行われていた。

しかしそれも間も無く終焉を迎えようとしていたのである。

「…俺に飽きたんですか」

辛辣な言葉を吐き捨てた田波に対して江夏は声を震わせながら呟いた。

「は?飽きるも何もないだろう、所詮は身体だけの関係だ。江夏、俺はもう少しで昇進するんだ。妻も喜んでくれたよ。もうお前の相手をする時間もないし、これからは妻と子作りしないと行けないからな」

「俺が、俺がどんな思いであんたに抱かれてきたと思ってるんですか?!田波さん、あんたと俺の関係を周りにバラしたって良い。勝手に離れるなんて…!」

「…江夏、世の中はお前の味方じゃないんだ。男が男を好きになるのは普通じゃない、お前は異常なんだ。抱き締めるのもこれが最後だよ。最後のセックスは首絞めしながら中に出したけど気持ち良かったか?首の周り、跡がくっきり残ってるな」

湯船の中で田波は歪んだ笑みを浮かべながら江夏を見つめる。首に残る跡は田波が江夏の中で達する時に首を絞めた際にできた跡だった。

「俺はあんたを一生許さないと思います」

「は、お前が俺を?許さない?馬鹿を言うな。世間から見たらお前が異常で俺は普通なんだ」

江夏は田波の身体から離れて湯船の中で田波を哀れむように見つめて笑みを作る。

「異常なのはあんたですよ、男相手に首絞め中出しセックスに愛人契約?はっ、証拠は全て俺が持ってます。あんたが俺から離れようとするならこれを世間にリークしてもいいんだ。もちろん、あんたの奥さんにもな。地位も名誉も築いてきた信頼も全てが崩れて終焉を迎えますよ?それでも良ければどうぞ、俺から離れてください。あぁ、そうだ。あんたから振り込まれていた金は使ってませんからお返しします。こんな俺と短い間でしたがセックスしてくれてありがとうございました。それではご機嫌よう」

「ま、待て江夏っ…!!!」

「…誰が待つかよ、チンカス野郎」

江夏は吐き捨てるように呟きながら浴室を後にして行く。田波は真っ青な顔色のまま江夏の背中を見つめていた。

 

 

 

 

翌朝、江夏は新聞を見ながら歪んだ笑みを浮かべいた。

 

『某県警副署長・既婚者でありながら部下と愛人契約か』


「あんたは馬鹿だね、田波さん。俺との関係を終わらせようとしたからこんな事になったんだ。俺の尻穴の処女と人生の僅かな時間を奪ったからこんな事になったんだ。ふふ、ははははははっ……!!!!せいぜい残りの人生、誰かの操り人形にならない事を祈ってるよ」

朝刊をくしゃりと丸めて江夏はゴミ箱にそれを投げ入れる。首回りに残る跡を撫でながら江夏は自室のカーテンを開けて空を見上げた。


田波は自主退職をし、江夏の前から姿を消したのだ。田波は江夏に『悪かった』と言葉を残して音信不通となった。

太陽の光を眩しそうに見つめながら江夏はぽつりと言葉を漏らす。

「…あんたとの思い出だけは忘れないでいてあげる」

過去を振り返りはしない、そんな戒めを込めながら江夏はゆっくりと瞳を閉じていった。