穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

相棒以上と自覚した朝

バンディットとイェーガー


【相棒以上と自覚した朝】

 

朝、いつものようにオフィスに顔を出して始業の準備をすれば戦場では相棒でありプライベートでは親友であるイェーガーの表情に覇気が無いことに気がついた俺はイェーガーに声をかける。

「よっ!おはよ、イェーガー」
「ん?…あぁ、バンディットか…」


いつもなら突っかかって来て爽やかに嫌味や冗談を洩らすイェーガーが俺の顔を見るなり小さく溜め息をついてくるではないか。

「暗いじゃん、何か有ったのか?」
「…別れた」
「は?…もう一回良いか?」
「…だから、ずっと付き合って来た彼女に今朝別れを告げられたんだ!結婚だって決まって指輪だって用意していたのに」

あぁ、なるほどなるほど。
そういう事ねぇ…。

俺にとってはある意味『好都合』ではあるけれど。だけど俺はイェーガーに自身の気持ちなんて一度足りとも伝えた事なんてなかったのだ。

イェーガーの肩をポンと叩いて俺はこいつの頭をくしゃりと撫でてやる。『優しい親友』ポジションはまだ崩したくはないから、俺は敢えて同情する事にしたのだ。

「イェーガー、お前は優しいし面白いのに。高学歴で地位も名誉も有って、俺がお前の彼女だったら結婚万々歳なのに。勿体無い事をしたな、お前の彼女」
「…そうか?」
「そうそう、いつもの快活なお前が見れないと俺の一日がつまんねぇだろう?イェーガー、今朝何て言われたんだ?」

俺はイェーガーに揺さぶりをかけ、こいつの本質を暴いてやることにしたのだ。

「今朝?元彼女に言われたことか?」
「そうそう。…まだオフィスには俺しか居ないから吐き出せよ?そんな暗い面したお前を一日中見たいと思うか?俺はいつものお前じゃないと嫌なんだが」

吐き出せよ、本質を。
暴いてやるから。
お前を俺のモノにする為に。

「…『貴方は私を見てない』って言われたんだ。意味分からないよな」
「あぁ、意味が分からないな…」
「最近家に帰っても、一緒の布団に入って眠っても浮かぶのはある奴の顔なんだ」
「…ある奴?」
「知りたいなら教えてやろうか、バンディット」

気が付けばイェーガーの透き通った瞳は俺を射抜くように真っ直ぐと此方を見つめていた。

痛々しいくらいに、イェーガーは俺を見つめていた。

 

 

 


「お前の顔が目を閉じて眠ってもチラついてしまうんだ。親友であり相棒であるお前の顔が頭から離れないんだ。…お前に分かるか、俺の気持ち」

そうか、それは好都合だよ。
俺にとっては好都合でしかないし、イェーガー、お前にとっても。

自覚するには丁度良かったんじゃないのか?

「…イェーガー、それは俺を相棒以上に好きだって告白してるのと一緒だぜ?なぁイェーガー、俺の事好きなら好きだって言ってくれよ。頼む、お前の口から聞きたいんだ」
バンディット、お前必死だな…」
「悪いか?」
「…バンディット、俺…」

痛々しいくらいに俺を見つめて射抜くような視線を浮かべていたイェーガーの瞳は緩く弧を描いて細められて行く。

あぁ、俺が望んだ言葉だよ。

イェーガー、俺はお前が好きなんだよ。

だからお前も、俺だけを見て。

…口から紡がれた言葉は、小さな想いの塊だった。

 

***

 

こんな朝を迎えるなんて思っていなかった。

俺にとってお前は優しい親友で相棒だったのに。

気が付けば相棒以上の思いをお前に抱いていたんだ。

寝ても覚めても浮かぶのはバンディット、お前の顔と声だった。

この気持ちを一生自分自身の中に閉じ込めておくつもりだった。

だけどそれは叶わなかった。

報われるとは思っていなかった気持ちをさらけ出して暴いたお前に対して抱いて気持ちを自覚した朝を俺は一生忘れないだろう。

バンディット、俺を好きになってくれてありがとう。

今日という日を俺は永遠に記憶に焼き付けてこれから先の未来をバンディット、お前と歩んで行く。