穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

清々しいほどの嘘

ルークとドクのお話。

【清々しいほどの嘘】


貴方は俺を『好き』だと言ってくれた。

穏やかな笑みを浮かべて、ダークブラウンの瞳を優しく細めながら貴方は俺を『愛してる』と言ってくれた。

…だけどそれが偽りで清々しいくらいに嘘だと分かった今日を俺は一生忘れないだろう。


***


「別れて欲しい」

諸用でドクがいる医務室に足を運べば開口一番、彼が俺に伝えて来たのは別れの言葉だった。

いきなり過ぎる言葉に俺は声を洩らす事が出来ず、ただただ彼の瞳を見つめて黙ることしか出来なかったのだ。

ドクと俺は戦場では相棒、
プライベートでは恋人同士であり、仲睦まじくかけがえのない日々を共に過ごして来た筈だった。

「…いきなり、どうして…」

俺がドクに問い質せば、ドクは瞳を細めて弧を描きながらニコリと微笑んで口を開いた。

「君に飽きたんだよルーク。ごめんね、私は飽き性でね。セックスもデートも全部マンネリ化して来ちゃったから。だから別れて欲しい」

「…本当にそれだけが理由?」

「それ以外に何があるんだ?」

「…昨日まで俺たちは普通に愛を育んで来たじゃないか…っ!ドク、貴方の愛の言葉は嘘だったのか?」

ドクは表情をぴくりとも変えず、ただただ俺を真っ直ぐと見ていた。ドクの言葉に俺の心は沈んで行く。

 

 

 

 


「…あぁ、嘘だよ?ごめんね、ルーク。優しさ君の隙間に漬け込んでしまったようだ。本当はずっと、君と付き合う前から恋人が居てね。本当は君なんて愛して居ないし好きじゃなかった。長年二股してたよ、ごめんね。君を傷付けたくて、君の泣きそうな顔が見たくて騙してた。…本当にごめんね?…と言うか別に私は悪くないよな、気付かない君が悪い。私は何も悪くないよね?ルーク、君はもう少し人を疑わないとこれから先を生きていけないよ。…ま、君の未来がどうなろうが私には関係ないけど」

声音は平坦で、まるで感情なんか其処にないかのように。ただただ冷たい彼の声音が俺の心を引き裂いて行く。

長年培ってきた信頼、想い、愛情。

全てが消えて崩れて行くような感覚に俺は陥ってしまった。

「…貴方は俺と別れられれば満足なのか?」

「そうだね、さっきからそう言っているだろう?聞き分けがなっていないなあ本当に。さすがは馬鹿だね、ルーク、君はGIGNを辞めた方がいいよ。視界に入るなよ?君の顔なんて見たくないんだから」

「…其処まで言うのか?」

「だから私は君が嫌いなんだよ、好きなんて所詮は偽りの言葉さ。利他主義なんて仮面だよ、君が見てきたギュスターヴ・カテブは利他主義者なんかじゃない。清々しいくらいに嘘つきなただの男だ。ルーク、もう二度私には近づくな。そしてもう、君と私は二度と同じ道を歩む事はないだろうな」

その言葉に俺は唇を噛みしめる事しか出来ず、一回だけドクの顔を見た。あぁ、もう駄目なのか。

…もう二度と、貴方と俺は同じ道を歩む事は無いのだろう。

諦めた俺は医務室を後にして、オフィスへと戻って行く。貴方は白衣を翻して追いかけはくれない。清々しいくらいに嘘を付いた貴方はもう二度と俺には微笑んではくれないのだろう。

「…バイバイ、ドク…」

 

 

一筋の涙が頬を伝って落ちて行く。

 

***

 

視界が涙で歪んだのは彼が医務室から居なくなって数分後の話だった。

「…ジュリアン、ごめんな…」

二股なんて本当はしてないし、
君が大好きで愛しいことには変わりはないんだ。

だけど私は臆病で弱いから。

君からの愛を受け止める自信がいつの間にか無くなってしまっていたんだ。私はもう二度と、君の隣に立つ事は許されないだろう。

 


「…愛していたよ、ジュリアン」

君の愛も、
君の青い瞳も、
君の温もりも。

永遠に忘れないだろう。

大好きでした、
愛していました、


どうか、私以外の人と幸せに。

幸せになって下さい。

溢れる涙は止まることを知らず、そして雨のように瞳から落ちていったのだった。