穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

日常の話❺

【日常の話】❺

江夏優視点。

 

『一輪の贈り物』

 

今月の給料も機械の部材やメンテナンス代に消えてしまい、大切な人に贈る誕生日プレゼントも買えるかどうか分からない江夏は家の近くの花屋にいた。

「…困ったな」

花屋の外で店員に声をかけるか迷っていた江夏はお店の中の様子をチラチラと見る。

色とりどりの花々と甘い匂いが外にいても分かるくらいには香っていた。江夏には長年付き合っている大切な人がいる。

そんな恋人の誕生日当日まで彼は誕生日プレゼントを用意出来て居らず、当日に用意する羽目になったのだ。

贈ろうと思っているのは一輪の花だった。給料をほぼ使い切ってしまった江夏が考えに考えた贈り物だった。

「…とりあえず店に入るか」

江夏は勇気を振り絞り、色鮮やかな花屋の中に足を踏み入れていった。

***


「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」

花屋に入り、店内で江夏が色とりどりの花々に目を奪われて居れば、店内にいる店員が声をかけてくる。

機械などに強い江夏に花の知識があるわけもなく、どんな花を贈ればいいか分からない江夏は店員に意を決して相談することにしたのだ。

「…こ、恋人に花を…」

「贈り物ですか?そしたら花束とか、ブリザードフラワーとか、色々有りますが…」

「…一輪の花を贈りたいんです」

「お客様はロマンチストなんですね!では私からそんな貴方におすすめのお花を…」

店員はそういうとガラスケースから一輪の花を取り出して江夏の前にそれを差し出した。

「…これは…」

「マーガレットですよ、お客様」

「…シンプルで可愛らしい花ですね」

花言葉はご存知ですか?」

「…花言葉ですか?」

「はい、このマーガレットの花言葉は『真実の愛』なんですよ。お客様が贈りたい相手の方にお客様の気持ちが伝わるといいですね」

ニコリと微笑んだ店員を見つめながら江夏は恋人の顔を思い浮かべる。いつも自分より江夏を優先し、大切にしてくれる恋人の顔を思い浮かべた。

(…あぁ、あの人にはこの花が相応しいかもしれない)

「その花を…一輪、包んでいただけますか?」

「かしこまりました!…メッセージカードも添えてみてはいかがでしょうか?」

「…お願いします」

「はい!…喜んでいただけるように綺麗に包みますね!」

江夏は店員に感謝の視線を送りながら一輪の花が包み終わるのを花の香りがする店内でゆっくりと待っていた。


***


「ありがとうございました、本当にお世話になりました」

「いえいえ!これからも是非ご贔屓にして下さい!」

「…またお願いします」

「はい!ありがとうございました!」


綺麗に包まれたマーガレットの花とメッセージカードを手に持ちながら恋人が待っている自宅へと江夏は急ぐ。

大したものではないから正直喜んで貰えるか不安だった江夏の不安はもう取り除かれていた。

 

 

 

 

「おかえり、優」

「田波さん、ただいま」

職場の先輩であり、江夏の大切な人 である田波は珍しく江夏と休みが重なっており、自宅に居たのだった。

「急いで出掛けて行ったから心配したよ。何買いに行ったんだ?機械のパーツか??」

「…今日はあなたの誕生日だから、これを…」

江夏は花屋で買った一輪のマーガレットを田波に差し出した。田波はそれを受け取って江夏の頭をくしゃりと撫でる。

「…わざわざ用意してくれたのか?」

「ごめんなさい、本当はもっと豪勢にしたかったんです。…だけど給料をほぼ機械やメンテナンス代に使ってしまいまして…」

「優、お前の気持ちが嬉しいよ…」

田波は江夏の顔を見ながら優しい笑みを浮かべていた。田波の優しい笑みに弱い江夏は顔を赤らめながら呟いた。

「メッセージカードも読んでください!!!」

田波は微笑んだまま江夏から受け取っったメッセージカードを開いて見つめていた。すると田波はテーブルにそっと花を置いて江夏を抱き寄せた。

「…優、ありがとう」

「喜んで…貰えたんですか??」

「…こんなこと書かれて喜ばない男は居ないだろう?優、ありがとう。俺もお前が好きだ。…愛してる」

「…田波さん…」

田波は江夏の唇にそっとキスを施していく。そして江夏もそれに答えるかのようにキスを堪能していった。

 


メッセージカードに書かれていた言葉、それは…。

 

 

『true love』


真実の愛だった。