穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

日常の話❼

【いじけるジュリちゃん】

むすっとした顔をするのは、普段はお人好し・明るい・理想家のジュリアン・ニザン。彼は目の前に座る軍医・ギュスターヴ・カテブの恋人だ。

ジュリアンがむすっとしているのには理由があった。二人が暮らすマンションはペットOKなのだが、最近冬の公園で一匹の仔犬をギュスターヴが拾って来たのだ。

「あんなに寒い中、良く生きていてくれた。君は強いね、ふふっ…くすぐったいってば」

真冬の公園で、小さな箱に捨てられていたのは産まれたばかりの小さな犬。ギュスターヴは救える命を見捨てる事なんて出来ず、二人の自宅で面倒を見ることにした。

ジュリアンも仔犬の面倒を見ること自体に特に文句を言うわけでも無く、ただ一緒に仔犬の成長を大好きな恋人と共に見れることは、単純に嬉かったのだ。

しかし、ジュリアンがいじけているのはもっと別の理由だった。

「最近、あなたは仔犬ばかりに構いすぎ。俺だってあなたの恋人なのにさ」
「こんなに小さな動物に嫉妬なんてしないでよ、ジュリアン…。この子は私たちが面倒を見てあげないと…」

ブラウンの瞳は困った色を浮かべている。ジュリアンはギュスターヴが仔犬ばかりの面倒を見て自分に目線すら向けてくれないことに怒っていたのだ。

「…分かってるけど、分かってるけど俺だって寂しい。あなたは違うの?ギュスターヴ、俺のこと嫌いになっちゃった?」

嫌いになる訳なんて無いのに。
まったく、ジュリアンってば本当に困った子だよ。

「私が君を嫌いになるわけないじゃないか。良いか?私はジュリアンが大好きだよ、それに嫌いだったら仔犬に君の名前なんて…」
「…え…??」

ジュリアンの青い瞳は少し驚きで大きく開かれた。ギュスターヴは顔を赤くしながら困った表情を浮かべてしまう。

「〜〜…っだから、君のこと嫌いだったらこの仔犬に『ルーク』なんて名前付けないからな!!」

ギュスターヴは拾って来た仔犬になんと、ジュリアンのコードネームを名前としてつけていた。それは初耳だと言わんばかりの表情を、ジュリアンはギュスターヴに向ける。

「…いじけてごめん。ギュスターヴ」

目の前に座るギュスターヴの手を握って、ジュリアンは彼を真っ直ぐと見つめる。

「いいよ、私こそ君の為にあまり時間を割いてあげられなかった。そうだ、ジュリアン…」

握られたジュリアンの手を持ち上げて、ギュスターヴは手の甲に口付けを施した。

「今日1日を君の為に時間を使いたい。ちょうど今、この子は眠っているから、その…」
「あなたからのお誘いか、それ程嬉しいものはないな。…ギュスターブ、好きだ」

唇に熱いキス、そして二人の近くで仔犬の『ルーク』があくびをして背筋をうーんと伸ばす。

温かな昼下がり、
穏やかな陽射しが入り込む部屋で二人の久方ぶりの交わりを邪魔するものなどなかった。

 


*おまけ*

交わりあった後の余韻を身体に感じながら、ギュスターブはふと夜中に目を覚ます。

フワフワとした柔らかなものが、自身とジュリアンの間に潜り込んでくる。

「『ルーク』?ふふ、柔らかい」

家族になったこの仔犬には愛しい彼のコードネームを名前として名付けたのだ。

拾ったばかりの頃よりもすくすくと成長していくルークを見て、ギュスターブもジュリアンも安心していた。

「君が家に来てから、仕事をもっともっと頑張ろうと思えたし、ジュリアンと君を幸せにしたい。そんな事ばかり最近考えてる。生きていてくれて、ありがとう」

頭を優しく撫でてあげれば、『ルーク』はきゅうんと嬉しそうに鳴き声を漏らす。

「…ギュスターブ…?あれ、温かい…?」

「ジュリアン、今『ルーク』が布団に潜り込んでるから…」

「…ん…うん…」

まだ寝惚けているジュリアンはギュスターヴ、そして『ルーク』を抱き寄せた。

「ジュリアン?」
「…zzz…」

彼の広い腕の中にまとめて抱きしめられてしまう。温もりが心地よくて、ギュスターヴは再び微睡みに身を委ねていく。

この幸せがずっとずっと続いていきますように。

小さく祈りながら瞳を閉じていった。