穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

本当は、ずっと

【本当は、ずっと】

「なあなあ!カプカン〜!こっち向いてよ!」

「五月蝿いぞ、タチャンカ」

「そんなこと言うなって、ほら、可愛いだろう?俺の娘」

「はいはい分かった」

何気ない日常的なやり取りなはずなのに、カプカンは長年の親友であるタチャンカに素直になることが出来ずにいた。

「もう、そんな堅物じゃ結婚出来ないぞ?俺みたいに可愛い子どもに恵まれたかったらもう少し素直になれば…」

「五月蝿いな、あんたに何が分かるんだ?!…タチャンカ、あんたなんかに俺の気持ちなんか分からないだろう?!放っておいてくれ!」

「え?ちょっ…、おい!どこ行くんだよ?!」

カプカンはタチャンカの前から逃げるように走り去る。

タチャンカは呆気にとられながらも泣きそうだった親友を追いかけていくのだった。

***

「はぁっ…、くそ、最悪だ」

親友に叶わない恋心を抱いてしまった自分にも、素直になれない自分にも嫌気が差したカプカンは涙を浮かべながら屋上で俯いていた。

昔から好きだった親友は結婚して家庭もあり、愛すべき愛娘だっているのに…。

「俺は最低だな」

「何が最低だって?!…ったく、おっさんの体力舐めるんじゃないよ」

「な、なんであんたがっ…!」

「お前が泣きそうだったから追いかけて来たんだ!馬鹿野郎、何で泣きそうなのか教えないとこの手は離さないから」

「…離せよっ…!」

「だったら泣きそうだった理由をちゃんと俺に話せよ?!俺たち親友だろ、隠し事は無しだ」

「っ…俺は、俺はあんたを親友なんて思ってない。ずっとずっと好きだった、あんたにだけはバレたくなかったのに…」

カプカンは掴まれた手をそっと離しながら無表情となるタチャンカを見つめた。

(…あぁ、もう。最悪だ。こんな形で知られたくなかったのに…)

瞳から溢れて止まらない涙、
大好きな親友への思いが全て溶けてなくなりそうな状態だった。

「…カプカン」

「何だ」

「…お前の思いに気がついてやれなくて、済まなかった」

「別にいい、お前が謝る必要はないだろう?」

「…軽率だったと思ったんだ。俺は自分の家族をお前に見て欲しかったんだ。…幸せには色んな形がある、カプカン、俺はお前に幸せになって欲しかったんだ。だけど俺、お前を傷つけただけの最低な奴だな」

親友にこんな顔をして欲しい訳じゃなかったのに。

…俺は…。

「…俺はあんたを好きになったことを後悔なんてしてないし、あんたの家庭を壊すつもりはないさ。ただな、あんたにそんな悲しそうな顔をして欲しくは無いんだ。…タチャンカ、家族を幸せにしてやれよ」

「カプカン、俺はっ…!」

「…これ以上、俺に惨めな思いをさせたいのか?」

「俺だって、本当はお前が…!!」

…それ以上、言わないで。

俺がその言葉を聞く権利なんて無いのだから。

「タチャンカ、好きだったよ…」

タチャンカの口から放たれる言葉を遮るようにカプカンは彼の唇を塞いで黙らせる。

「んっ、ふっ、カプカン…」

漏れる吐息は餞別で。

心に溜まる情欲は抑えつけるので精一杯だった。

 


唇を離したカプカンはタチャンカを見つめて少しだけ寂しそうに微笑んだ。

「あんたは真っ当な道を外しちゃ駄目だ。…娘さん、可愛いな。幸せになれよ」

カプカンの瞳からは一筋の涙、タチャンカの前から姿を消そうとするカプカンをタチャンカは背後から抱き締めた。

「…ずっと俺だってお前が好きだった、だけど俺は自分の気持ちを押し殺してまで結婚して子どもまで作った。もちろん、家族は大切だよ。だけど俺が一番大切で愛してるのは他ならぬお前だよ、カプカン」

その言葉にカプカンはびくりと身体を揺らして嗚咽を漏らす。

「あんたはっ…、本当に馬鹿なんじゃないのか?!真っ当な道を…!」

「…幸せには色んな形があるだろう?俺はお前のためなら全てを捨てる覚悟を昔からしていたよ。カプカン、俺の為に俺と幸せになって欲しいんだ。全てをお前に捧げるよ」

背後から抱き締めて来るタチャンカの力は強くなっていき、カプカンは震えながらそっと彼の手を握りしめる。

枯れ果てるまで涙を流し、やがて出した答えは二人にしか分からないものだった。

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