穴龍の里

穴龍がr6sのSSをupする欲望の吐き捨て場。

泣いている理由

【泣いている理由】

 

「どうして泣いているんだい?」

ギュスターヴ・カテブこと、ドクは任務を共にして戻ってきたタイナ・ペレイラ…。カヴェイラが泣いていることに気がつき、彼女に優しく声をかける。

カヴェイラはドクの顔を見つめて「別に泣いてなんか居ない」と強く自分自身を否定した。ドクはそんな彼女の頭を優しく撫でながらダークブラウンの瞳を細めて呟いた。

「泣いていないのなら、どうして瞳が潤んでいるんだ?カヴェイラ、何かあったのなら私に相談してって言ったよね?君が弱気でいると隣にいる私の調子も狂いそうだ。…泣いている理由を、教えてはくれないのか?」

「…あんたには言いたくない」

「どうして?」

「私は弱くなんて…無いんだから!」

「…カヴェイラ、強気なのは良いことだけど君が泣くときは本当に辛いときだろう?あまり私の観察眼を舐めない方が良い。何があったか白状しなさい」

ドクの顔には高圧的な笑顔が張り付いていた。ドクのそんな表情を見てしまえば、自身が泣いていた理由を彼に言わなければならないようだ。

「…笑わない?」

カヴェイラはドクを真っ直ぐと見つめながら彼のダークブラウンの瞳を食い入るように見ていた。ドクはカヴェイラの頭を撫でて「笑うわけないさ」と穏やかな口調で言い放つ。

観念したかのようにカヴェイラはそっと口を開いて泣いていた理由を吐露し始める。

 


「あんたが…ドク、あんたがくれた髪留めを任務に就いた建物内で失くしたの。初めてあんたが私にくれた物だった。宝物を失くしてしまったのよ」

カヴェイラが泣いていた理由。

それはドクが彼女に贈った髪留めを失くしてしまったからだという。

ドクがカヴェイラの髪型を今一度見てみれば、彼女の鮮やかな黒髪は結ばれて居らず、下ろされて入る状態だった。

そんな彼女の黒髪にドクは指を伸ばして触れながら口を開いて呟いた。


「…私が贈った物を、大切にしてくれていたんだね」

「…っ!あんたが、あんたが『カヴェイラにならこれが似合うから』ってわざわざ母国から買って来たんじゃない…。それに…」

「それに…?」

 

 

 

 

 

 

 

「…好きな人から贈られた物だったら誰だって大切にするでしょ?!もう、こんなこと私に言わせるな!まるで私が尋問されてる気分だわ…!」

カヴェイラは顔を真っ赤にしながらドクを睨みつけて言葉を漏らしていく。無慈悲な尋問者である彼女もドクという一人の人間の前ではただの女性だった。

「…カヴェイラ」

「な、何よっ…」

「…無性に君を抱き締めたい。駄目かな?」

「…好きに…好きにすればいいじゃない」

「うん、では遠慮なく」

ドクはカヴェイラの身体を自身の腕の中に引き寄せて強く抱き締めた。抱き締めてくるドクの背中にカヴェイラも自分自身の腕を回して抱き締め返す。

 

「君から『好きな人』なんて言われるとは思わなかった。私はもちろんカヴェイラ、君が好きだから髪留めを贈ったし普段から任務に出る際も出来るだけ君の側に居るようにはしていたんだが…」

「…私は無慈悲な尋問者よ…」

「だけど君は一人の女性だ。私は君が本当は優しい子だってことも知ってる。私が贈った髪留めを大切にしてくれていたのも知っていた。カヴェイラ、失くした物は戻らないかも知れないけど…。その、もし良かったら…」

「…な、によ…」

「また君に似合う髪飾りを贈っても良いかな。そうだ、今度は君と一緒に選びたい。だから次の休み、私とデートしてくれないか?」

その言葉にカヴェイラは顔を真っ赤にしながら「…分かったわよ」と返事をしてコクリと頷いた。

ドクは嬉しかったのか、尚更強くカヴェイラを抱き締めて彼女の頭を優しく撫でていた。

気がつけばカヴェイラの瞳から涙は消えていた。失くした宝物が戻ることはない。だけどそれを超える人が隣に居てくれるだけでカヴェイラは幸せだった。

身体を離し、互いの瞳を見つめ合えば自然と顔に浮かぶのは笑顔だけだった。

 

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